124 / 356

寄り添うかけら5※

「ああ……いいぜ…っ……すっげ、いい……。その括れんとこさ……舐めて」 暁の欲情に掠れた声に、励まされるように、雅紀はだんだん行為にのめり込み始めた。両手を使えない不自由な体勢で、口だけを使って暁のものを舐め扱く。暁は雅紀の辛そうな体勢を楽にしてやろうと、そのままシーツに腰をおろした。 「んっふう…ぅんっふ…んうんう」 暁に顎を支えてもらいながら、雅紀はひたすら顔ごと動かして、暁のものを愛撫した。 少し遠巻きにして、2人の様子を眺めていた瀧田が、ゆっくりと歩み寄った。ぎしっというスプリングの軋む音と同時にベッドが揺れる。 行為に集中していた雅紀の動きがぴたっと止まった。 瀧田はベッドの端に腰かけると、手を伸ばして、暁の前に蹲っている雅紀の、後ろ手にした腕輪の連結を外した。手が自由になり、雅紀はガバッと身を起こすと、瀧田から逃げて暁の方へすがりつこうとする。その腕を瀧田が掴んだ。 「…っやだっ…」 「雅紀に触んなっ」 暁は鋭い声でそう言って、雅紀の身体を庇うように抱き寄せる。 「両手を使えるようにしてあげただけですよ。」 瀧田は雅紀の腕を掴むと、暁から引きはがし 「四つん這いになりなさい」 また怯えて震え始めた雅紀の身体を、嫌な手つきで撫でまわす。雅紀は瀧田の手から身を捩じって逃げ、両手をシーツについた。 「お尻をちゃんと突き出して」 首輪についたままの鎖を掴んでぐいっと引く。 「おいっやめろっ。乱暴はよせっ」 瀧田と雅紀の間に割って入ろうとする暁を、瀧田は笑いながら手で制し 「君はじっとしていなさい。ほら、雅紀。言うことをきいて」 首輪を引かれ、雅紀は苦しそうに身を捩りながら、お尻を高くあげた。 「いいでしょう。では、ご主人にご奉仕を続けなさい」 雅紀は暁の股関に顔を埋め、再び口にくわえて、たどたどしく舐め始めた。せっかく恐怖心を薄れさせて、2人きりの世界に没頭させていたのに、瀧田の横やりで、雅紀はまた怯えきってしまっている。 ……くっそ……邪魔ばっかしやがって…っ 苛立つ暁を、バカにしたように鼻で笑い、瀧田はそのままベッドに居座った。 「恥ずかしいこですね、雅紀。そんな格好でご主人様のものを舐めて。そろそろ後ろのお口が、疼いてきてるのでしょう?」 手を伸ばして、雅紀の小さな尻を撫でまわし始めた。 「やっ…やだっ」 我慢出来ずに、雅紀は暁のものを口から離して、悲鳴のような声をあげた。 「いい加減にしろよっ。雅紀を抱いてんのは俺だっ。邪魔しないで黙って見てろっ」 「ふん……口のききかたに気をつけるんですね。君こそ黙っていなさい。梶、雅紀の後ろを解す準備を」 「雅紀に触るなよっ。解すのも俺がやるっ」 瀧田はまたナイフをちらつかせ 「逆らえば、雅紀の顔を切り裂きますよ」 「…っ…」 ローションに浸したディルドを、梶が瀧田に手渡した。 雅紀はすくみあがり、暁にすがりつこうとした。 「大人しくして。痛いのは嫌でしょう?」 瀧田は雅紀の腰を掴むと引きずり戻し、押さえつけて、蕾にディルドを押しあてた。 「やっやっだ…あ゛っ…」 もがく雅紀の身体がふいに硬直する。ディルドが入り口から突き入れられたのだ。暁は雅紀の頭を、ぎゅっと抱き締めた。 ぐちゅぐちゅと嫌な音をたてて、雅紀の後ろが拓かされていく。雅紀はくぐもった呻き声をもらしながら、暁の身体にすがりついていた。 「んっく…ぅうっんっ…んあっあっ」 浅いところを何度もぐにぐにされ、強制的に感じさせられる。やがてディルドは奥まで突き入れられ、抜き差しされた。 その間、暁は雅紀に何度もキスをした。優しく労るように何度も何度も。雅紀は泣きながら暁の口づけに応えた。 「そろそろいいでしょう。では早瀬暁。雅紀を抱きなさい。お仕置きですから容赦は要りません」 ようやくディルドから解放されて、ぐったり弛緩した雅紀の身体を、暁は怒りを堪えて抱き締めた。 ……何がお仕置きだ。こんな酷いこと、許されることじゃねえだろ。容赦しないのはお前に対してだ、瀧田。俺は絶対に、お前だけは許さないからなっ。 暁は険しくなる自分の表情を、必死の思いで和らげると、雅紀を抱き上げ、顔をのぞきこんだ。雅紀の顔は青ざめ、涙に濡れている。 暁はその唇にちゅっとキスすると 「悪夢の時間はもう終わりだ、雅紀。俺とまたひとつになろうな。一緒に気持ちよく、なろう」 雅紀の目から、涙がポロポロ零れ落ちる。救われない酷い仕打ちの連続で、雅紀の心はもう限界寸前だ。これ以上傷つけたら、壊れてしまう。 ……社長っ……頼むっ早く来てくれ……っ。何でもいい。この状況をひっくり返す、キッカケだけでも作ってくれ…っ 柱時計の針は11時25分をさしている。田澤との約束は正午。時間が経つのが遅すぎる。 今、雅紀を抱いたら、雅紀にとっては、瀧田に強要されていることと同じだ。 

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!