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番外編『愛すべき贈り物』170
暁の言葉に雅紀が頷いて、祥悟の方に行こうとする里沙の腕を掴んで促した。
「里沙さん、とりあえず部屋に行きましょう?」
「里沙。待ちなさい!」
橘が鋭く叫ぶと、里沙がびくっと振り返って橘を見つめた。
「私と一緒に来なさい。里沙。さあ、早く!」
「里沙!そいつと一緒に行くな!」
里沙は戸惑いの表情を浮かべ、手を差し出す橘と、暁に腕を掴まれている祥悟を見比べた。
「私……」
「おいで、里沙。祥悟くんとは後で話をすればいい。今は時間がないんだ」
微笑んで近づく橘に、雅紀が庇うように里沙の前に出た。
「そいつの言うこと、聞く必要ねえぞ!里沙。ちょっ、離せってば」
祥悟は暁の手を振りほどこうともがく。
「里沙。ここは俺らに任せて、とりあえず部屋ん中行ってろ、な?」
暁の言葉に、里沙はもう1度、橘と祥悟の顔を見比べて
「でも仕事なら……私、行かないと」
「そんなの嘘だっての! おまえ連れてく口実だ。騙されんな!」
「黙りなさい!祥悟。どうして私が嘘をつく必要があるのだ」
「はっ。あることないこと里沙に吹き込んで、俺らを引き離そうとする為じゃん! 里沙、そいつの言うことなんか聞くなよ」
里沙は泣きそうな顔になり、雅紀の手を振りほどくと
「私、行くわ。私もお義父さまに話したいことがあるし。大丈夫よ、祥。貴方のこと、お義父さまは誤解してるだけ。私がちゃんと説明するから、ね?」
言いながら橘の方に行こうとする里沙に、祥悟は首を振った。
「違うって!そうじゃないっての」
「里沙。今は橘さんと一緒に行くなよ。祥の話、聞いてやってくれ。橘さん、里沙はすぐに連れて帰るから、ここはとりあえず先に帰ってくれませんかね?」
橘は暁を睨みつけると、苦々しい顔で首を横に振った。
「まったく……。さっきから貴様らは何をごちゃごちゃ言ってるのだ。私が里沙を連れて帰るのに、いったい何の問題がある? 訳の分からんことを言って、邪魔をするのは止めなさい」
「とにかく。ここは一旦引いてくれませんか? さっきの貴方の話、祥悟は納得してないんだ。それに、これ以上騒ぐと警察を呼ばれちまいますよ」
橘は祥悟を睨みつけ、里沙の方をもう1度見てから首を竦め
「渡会。私は先に帰るから、おまえは予定通り、2人についてここに残れ。里沙。今日の衣装合わせは明日に延期させるから、祥悟くんと一緒に、明日事務所に来なさい。いいね?」
橘はそう言ってため息をつくと、踵を返してエレベーターに乗り込んだ。
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