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番外編『愛すべき贈り物』171
「ごめん、里沙。嫌な思いさせて」
暁と雅紀、そして祥悟と里沙、4人揃って部屋に入ると、祥悟がすかさず里沙に頭をさげた。
「祥……貴方が謝ることじゃないわよ。それより、ね、お義父さまとどんな話したのか、詳しく教えて?」
「……うん」
「祥悟さん、里沙さん、まずはこっちに座って落ち着きましょう。俺、何か飲み物頼むから」
雅紀に穏やかに促されて、2人は頷き、ソファーに腰をおろした。
ルームサービスを頼もうとする雅紀に暁が歩み寄る。
「ありがとな、雅紀」
にかっと笑う暁に、雅紀はまだ少し強ばっていた頬を緩め、ほわんと微笑んだ。
「よかった。暁さんたち、来てくれて」
暁は頷くと、雅紀の髪をくしゃっと撫でた。
「……そう……。やっぱりその話だったのね。あのね、お義父さまが、おかしなこと言い出したのって、多分、お義母さまのせいだと思う」
祥悟の説明に黙って聞き入っていた里沙は、ようやく意を決したように重い口を開いた。
「んーとさ。橘の奥さんが何でそんなこと言い出すわけ? 俺、あの人とはほとんど顔合わせたこともないんだけどな」
首を傾げる祥悟を、里沙はちらっと見て目を伏せた。何か言いかけては躊躇い、膝の上の手をぎゅっと握り締める里沙を、隣に座った雅紀は気遣わしげに見つめていたが
「ね。里沙さん。言った方がいいと思う」
そっと里沙に話し掛けた。里沙は雅紀を見て顔を顰め、まだ躊躇っていた。
「何。何の話だよ? 里沙、なんかあるなら言えよ」
それでもまだ言えずにいる里沙の手に、雅紀はそっと手を置いて
「祥悟さんに余計な心配かけたくないって、里沙さんずっと言えずにいたそうなんです」
祥悟は里沙から雅紀に視線を移し
「……どんなこと?」
「里沙さん、橘さんのとこに引き取られてからずっと……」
「待って、雅紀くん。私が……
話すわ」
里沙はようやく顔をあげると、真っ直ぐに祥悟を見つめた。
「私……お義母さまに、ずっと……いじめられてたの」
里沙の言葉に祥悟は、目を見開いた。
「最初は、あの人の仕業だって、分からなかったわ。物がなくなったり、私の服が汚されたり破られたり、動物の死骸が、私の寝室にあったり……」
祥悟は息を飲み
「なに、それ。なんだよ、それ……」
里沙はきゅっと眉を寄せて
「ごめんね。こんな話、祥は聞きたくないと思うけど」
「……っ聞きたくないとかじゃなくてさっ」
「そんなに頻繁ってわけじゃなくて、最初は気のせいかな、って思ってたんだけど……。何回かそんなことがあって……。そのうちお義母さまの部屋に呼び出されて……。どうやってお義父さまに取り入ったんだって言われたわ。お義父さまを誘惑するのは止めなさいって。私、そんなことしてないって言ったけど。あの人、両親のこと、調べたみたいで……」
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