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番外編『愛すべき贈り物』175

祥悟はごくりと唾を飲み込むと、意を決して口を開いた。 「あいつ……おまえのこと、好きだって言ってた。養女にしたのは失敗だったって。娘としてじゃなく、女として、おまえのこと……好きだってさ」 里沙の目を見ているのが辛い。声が勝手に震えてしまう。 里沙は少し、目を見開いて 「そう……。祥に、そんなこと、言ったの。あの人……」 里沙は小さく呟くと、すっと目を伏せた。 祥悟は目を逸らしたいのを必死に堪えて、里沙の顔をじっと見つめていた。 ……里沙。やっぱり……嬉しいよな。ずっとあいつのこと、好きだったんだもんな。でも頼むよ。あいつとだけは……。頼むよ、里沙。あいつとだけは。 里沙が目をあげた。その表情からは、里沙の気持ちはまだ分からない。 「あのね、祥。怒らないで聞いてね」 その前置きは、出来れば聞きたくなかった。だってその先は、嫌な予感しかない。 「養子縁組を解消したい。あの人に、そう言われたの」 「……え‍?」 「最後の撮影の前に、君との養子縁組を解消したいって」 「あいつが‍? おまえにそう言ったのか?」 「ええ。1度、親子じゃなくなって、君と新しい関係を築きあげたい。そう言われたわ」 祥悟は息を飲んだ。 「そ……それって……」 里沙は苦笑いして 「養子縁組を解消しても、私たちは結婚は出来ない。でも、一生傍にいてくれ。幸せにするから。……そう言ったのよ。あの人」 「……っ」 ……遅かったのかよ。あいつ、里沙にもう……それ、言っちまってたんだ……。 頭の中が真っ白になった。 それを、里沙にあいつから言わせたくなくて、雅紀を半ば脅すようにして、暁と里沙の関係を深めようと画策していたのに。 ……そっか……。遅かったのかよ。俺はいったい……なにやってたんだろな……。 祥悟はぼんやりと膝の上の手を見つめた。 橘は里沙に、既に決定的なことを告げていたのだ。里沙はきっと嬉しかったはずだ。どんな形であれ、何年も恋焦がれてた相手からの、実質上はプロポーズなのだから。 「里沙。ちょっといいか?」 俯いて黙り込んでしまった祥悟を怪訝な顔で見つめてから、暁は里沙に目を向けた。里沙も祥悟から暁に視線を移して 「え……ええ、なあに‍?暁」 「養子縁組解消して親子じゃなくなってもさ、おまえと橘さんは結婚出来ないんだよな?」 「ええ。そうね」 「んじゃ、要するに橘さんは、おまえに娘じゃなくて、愛人になってくれって言ってるわけだな‍?」 「うん。そういうことに、なると思う」 暁ははぁ~っとため息をついて 「随分また、都合のいい話だな、そりゃあ。あのおっさん、どんだけ自信家だよ」 里沙も苦笑して首を竦め 「そうね。ちょっと……自信過剰だわよね」

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