626 / 646
番外編『愛すべき贈り物』175
祥悟はごくりと唾を飲み込むと、意を決して口を開いた。
「あいつ……おまえのこと、好きだって言ってた。養女にしたのは失敗だったって。娘としてじゃなく、女として、おまえのこと……好きだってさ」
里沙の目を見ているのが辛い。声が勝手に震えてしまう。
里沙は少し、目を見開いて
「そう……。祥に、そんなこと、言ったの。あの人……」
里沙は小さく呟くと、すっと目を伏せた。
祥悟は目を逸らしたいのを必死に堪えて、里沙の顔をじっと見つめていた。
……里沙。やっぱり……嬉しいよな。ずっとあいつのこと、好きだったんだもんな。でも頼むよ。あいつとだけは……。頼むよ、里沙。あいつとだけは。
里沙が目をあげた。その表情からは、里沙の気持ちはまだ分からない。
「あのね、祥。怒らないで聞いてね」
その前置きは、出来れば聞きたくなかった。だってその先は、嫌な予感しかない。
「養子縁組を解消したい。あの人に、そう言われたの」
「……え?」
「最後の撮影の前に、君との養子縁組を解消したいって」
「あいつが? おまえにそう言ったのか?」
「ええ。1度、親子じゃなくなって、君と新しい関係を築きあげたい。そう言われたわ」
祥悟は息を飲んだ。
「そ……それって……」
里沙は苦笑いして
「養子縁組を解消しても、私たちは結婚は出来ない。でも、一生傍にいてくれ。幸せにするから。……そう言ったのよ。あの人」
「……っ」
……遅かったのかよ。あいつ、里沙にもう……それ、言っちまってたんだ……。
頭の中が真っ白になった。
それを、里沙にあいつから言わせたくなくて、雅紀を半ば脅すようにして、暁と里沙の関係を深めようと画策していたのに。
……そっか……。遅かったのかよ。俺はいったい……なにやってたんだろな……。
祥悟はぼんやりと膝の上の手を見つめた。
橘は里沙に、既に決定的なことを告げていたのだ。里沙はきっと嬉しかったはずだ。どんな形であれ、何年も恋焦がれてた相手からの、実質上はプロポーズなのだから。
「里沙。ちょっといいか?」
俯いて黙り込んでしまった祥悟を怪訝な顔で見つめてから、暁は里沙に目を向けた。里沙も祥悟から暁に視線を移して
「え……ええ、なあに?暁」
「養子縁組解消して親子じゃなくなってもさ、おまえと橘さんは結婚出来ないんだよな?」
「ええ。そうね」
「んじゃ、要するに橘さんは、おまえに娘じゃなくて、愛人になってくれって言ってるわけだな?」
「うん。そういうことに、なると思う」
暁ははぁ~っとため息をついて
「随分また、都合のいい話だな、そりゃあ。あのおっさん、どんだけ自信家だよ」
里沙も苦笑して首を竦め
「そうね。ちょっと……自信過剰だわよね」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!




