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番外編『愛すべき贈り物』177
「貴方、自分で思ってるほど、狡いこと出来る人じゃないもの。思ったこと、顔に出るし行動にも出るし。あの人と対抗して裏でいろいろ画策してって、出来るタイプじゃないでしょ」
鼻の奥がツンとする。祥悟は誤魔化すように、ぷくーっと不貞腐れた顔になり
「なんか……それ、すっげーフクザツなんだけど」
「まぁ、里沙の言う通りだ。祥は捻てるように見えてさ、実は純粋でいい子だからなぁ」
暁が笑いながら、また祥悟の頭をわしわしすると、祥悟は嫌そうに顔を歪めて、暁の手をパシッと跳ね除け
「はぁ? ばっかじゃねーの?おまえが言うなっての。つか、気安く触んな」
暁は叩かれた手を大袈裟に擦りながら、雅紀の隣に逃げて行って腰をおろした。雅紀は若干呆れた顔で、目の前に差し出された暁の手をすりすりと摩ってやり
「もぉ……茶化さない、暁さん。でも里沙さん、これからどうするか決めてるんですか?」
水を向けられて里沙はにっこり笑って
「あの人が、私のことを盾に、祥を思う通りにしようとしてるなら、私も負けてはいないわ。祥には絶対に手は出させない。私の命より大事な弟、だもの」
雅紀もにっこり微笑んで
「さすが里沙さん。頼もしいな」
2人のやり取りをぼんやりと見つめながら、祥悟はまた滲みそうになる涙を必死に堪えた。
『命より大事な弟』
きっぱり言い切る里沙の言葉が、じわじわと心にしみてくる。自分の里沙に対する恋情は決して叶うことはない。けれどそれ以上の強い絆が、里沙と自分の間にはあるのだ。そしてそれは、どんなことがあっても、断ち切れることはない。
「おーし。んじゃ作戦会議だな。里沙。なんか計画あるんならさ、俺ら協力するぜ」
張り切って身を乗り出す暁の言葉に、里沙はちょっと沈んだ顔になり
「ううん。これは私たちの問題だから。貴方たちを巻き込むわけにはいかないわ」
「ばーか。今さら何、水くせえこと言ってんだよ」
「うん。俺たち全面的に協力しますよ。遠慮なんかしないでください」
即座に切り返した暁と雅紀に、里沙はちょっと泣きそうな顔になり
「……ありがとう……。じゃあ、協力してくれる?」
呼び鈴を鳴らしているのが祥悟だと分かって、智也は慌ててドアを開けた。
「いい? 入っても」
祥悟の言葉に、智也はふっと微笑んで
「もちろん。どうぞ」
祥悟は拗ねたような顔で首を竦めると、よろよろと玄関の中に入ってきた。
「まったく……先に連絡くれって言ってるのに、いつも突然だな、君は」
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