628 / 646

番外編『愛すべき贈り物』177

「貴方、自分で思ってるほど、狡いこと出来る人じゃないもの。思ったこと、顔に出るし行動にも出るし。あの人と対抗して裏でいろいろ画策してって、出来るタイプじゃないでしょ」 鼻の奥がツンとする。祥悟は誤魔化すように、ぷくーっと不貞腐れた顔になり 「なんか……それ、すっげーフクザツなんだけど」 「まぁ、里沙の言う通りだ。祥は捻てるように見えてさ、実は純粋でいい子だからなぁ」 暁が笑いながら、また祥悟の頭をわしわしすると、祥悟は嫌そうに顔を歪めて、暁の手をパシッと跳ね除け 「はぁ‍? ばっかじゃねーの‍?おまえが言うなっての。つか、気安く触んな」 暁は叩かれた手を大袈裟に擦りながら、雅紀の隣に逃げて行って腰をおろした。雅紀は若干呆れた顔で、目の前に差し出された暁の手をすりすりと摩ってやり 「もぉ……茶化さない、暁さん。でも里沙さん、これからどうするか決めてるんですか?」 水を向けられて里沙はにっこり笑って 「あの人が、私のことを盾に、祥を思う通りにしようとしてるなら、私も負けてはいないわ。祥には絶対に手は出させない。私の命より大事な弟、だもの」 雅紀もにっこり微笑んで 「さすが里沙さん。頼もしいな」 2人のやり取りをぼんやりと見つめながら、祥悟はまた滲みそうになる涙を必死に堪えた。 『命より大事な弟』 きっぱり言い切る里沙の言葉が、じわじわと心にしみてくる。自分の里沙に対する恋情は決して叶うことはない。けれどそれ以上の強い絆が、里沙と自分の間にはあるのだ。そしてそれは、どんなことがあっても、断ち切れることはない。 「おーし。んじゃ作戦会議だな。里沙。なんか計画あるんならさ、俺ら協力するぜ」 張り切って身を乗り出す暁の言葉に、里沙はちょっと沈んだ顔になり 「ううん。これは私たちの問題だから。貴方たちを巻き込むわけにはいかないわ」 「ばーか。今さら何、水くせえこと言ってんだよ」 「うん。俺たち全面的に協力しますよ。遠慮なんかしないでください」 即座に切り返した暁と雅紀に、里沙はちょっと泣きそうな顔になり 「……ありがとう……。じゃあ、協力してくれる‍?」 呼び鈴を鳴らしているのが祥悟だと分かって、智也は慌ててドアを開けた。 「いい‍? 入っても」 祥悟の言葉に、智也はふっと微笑んで 「もちろん。どうぞ」 祥悟は拗ねたような顔で首を竦めると、よろよろと玄関の中に入ってきた。 「まったく……先に連絡くれって言ってるのに、いつも突然だな、君は」

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!