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番外編『愛すべき贈り物』185
「何だい? 改まって、話って」
冷静にと言い聞かせながら、ようやく絞り出した声は、でも情けなく掠れていた。胸の奥の冷たい痛みが、全身に広がっていくような気がする。
「うん。俺さ、さっきおまえに、全部話したじゃん? 俺の過去のこと全部」
「ああ。話してくれたね」
「……どう思った? あ、綺麗ごとなんか言わなくていいからな。おまえが感じた正直な気持ち、聞かせてくんねーかな」
「……どう……って。それは」
「俺はガキの頃に、自分の血の秘密知っちまったじゃん? もちろん、世間一般的にはかなりエグいことなんだろうけどさ。俺ん中ではそのこと、割と消化出来てんのな。親は選べねえしさ、生まれる前のこと全部責任おっかぶせられたって、俺にはどうすることも出来ねえじゃん?」
「ああ。そうだね。君の責任なんかじゃ、絶対にないね」
祥悟の話がどういう方向に進んでいくのか分からない。智也は必死に感情を押し殺し、穏やかに相槌を打った。
「たださ。やっぱり……普通の恋愛観とか人生観は、どうしても持てねえって思うんだ。生まれのこともそうだし、両親の……こととかもな。これは望まないけど一生抱えて生きてくしかねえの。
……悔しいけどな」
そうだろうな、と思う。
里沙との関係のことに比べたら、祥悟は自分の出自や両親のことに関しては、恐ろしく淡々としている。でも、まるっきり影響を受けないはずはないのだ。
出逢ってから現在まで、祥悟はかなりの数の人間と、寝るだけの関係を持ってきている。女も……おそらく男もだ。
智也は正直、そんな祥悟の奔放さが苦しくなって、何度、この不毛な関係を断ち切ろうとしたか知れない。嫉妬も不安も全て乗り越えて、現在の2人の関係がある。
祥悟がそんな風に、広く浅くの関係ばかり求めるのは、本命への叶わぬ恋のせいだと思っていた。
でも違ったのだ。そこには自分の想像を遥かに超えた、深い心の闇が存在していた。
もっと早くに、今日の告白を聞いてあげたかった。
それは今でなければ話せなかったことなのだと分かってはいるけど。
自分がそれを知ったところで、根本的には祥悟の苦しさを救ってやることは出来ないのだけれど。
それでも。祥悟が苦しみもがいていた業のほんの一部でもいいから、自分も一緒に背負って生きてやりたかった。
智也は、ふぅっと大きく深呼吸をすると、祥悟を真っ直ぐに見つめた。
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