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番外編『愛すべき贈り物』190

智也はドキドキしながら、祥悟の頬を両手で包んだ。そっぽを向けなくなった祥悟が、恨めしそうに自分を睨みつけてくる。 「……なに、嬉しそーな顔、してんだよ?」 「俺のこと……もしかして、好きでいてくれた?」 「……っ」 「失いたくないって……思ってくれてた‍?」 祥悟の目がうろうろと泳ぐ。 「わ……っかんねえって、そんなの。ただ……」 「ただ‍?」 「里沙、以外で、すっげー会いたくなるのって、おまえだけだったし。好きかっつったら、おまえのこと好きだし‍? や、恋とかそーゆー意味かは、わかんねえけどさ、でも……」 「でも‍?」 祥悟の目元がじわじわと赤くなっていく。 「おまえに、会えなくなるって、考えると……すっげー嫌だった。い、嫌っていうか、胸の奥、ズキズキ痛くなってさ。なんか……イライラした」 拗ねたような顔でそう言って、ぷいっと目を逸らす。 ……ああ……君って……。なんて可愛いんだろう……。 胸の奥がきゅんきゅん痛い。自分の心臓の音がドキドキうるさい。目の奥がじわっと熱くなってきて……また泣きそうだ。 智也は、そっと祥悟の鼻の頭にキスすると 「俺は、君が、好きだよ、祥。君は、俺のこと、好き‍かい?」 祥悟は困ったように眉を八の字にして 「好きじゃなかったら、ここ、来ねえじゃん」 いかにも祥悟らしいひねくれた答えに、智也は泣きながら笑いそうになる。 「そう。俺のこと、好きなんだ」 ダメだ。鼻の奥がつんとする。またみっともなく泣いてしまう。 「だっ、だからぁ、おまえが言ってる好きかどうか、わかんねーっての。なぁ、んな顔すんなよ。おまえ、今日、おかしいだろ。泣くなんてさ。おまえ、泣くなんて、俺どうしたらいいか、分かんねえだろっ」 狼狽える祥悟の顔が、涙でだんだん歪んでいく。ああ、もうダメだ。たしかに今日の俺は涙腺が緩すぎる。 でも。 だって仕方ないだろう? 君が可愛すぎるのがいけないんだ。 愛しくて胸が苦しい。 もう何百回も思ったことを、もう1度、俺は思うよ。 ……君に出逢えて……よかった……。 「祥」 また性懲りも無く、そっぽを向こうとする祥悟の顔を、両手で包んで閉じ込める。掴もうとしても、この手からするする逃げ続けてきたこの気紛れ猫を、そっと優しく閉じ込める。 鼻と鼻が触れ合った。 自分の視界が愛しい君でいっぱいになる。 大好きだったから、君を抱き締めるこの腕には、いつだって隙を作ってきた。 君が苦しくならないように。 伸びやかに輝く君の、自由を奪ってしまわないように。 そうして過ごしてきた甘く苦しい日々を、自分は少しも後悔はしていない。 ……だけど。もし許されるのなら、今は、この腕で、君を力いっぱい抱き締めさせてくれないか。 2人の間にどんな小さな邪魔も入らないように、俺の世界の全てを君で埋め尽くさせてほしい。

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