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番外編『愛すべき贈り物』191
「祥」
「……っ。な……なに」
「君を好きになって、よかった」
「……智也……」
……君が泣きそうな顔、してるのは、俺のがうつってしまったのかな。ごめんね、そんな顔させて。でも……大好きだよ。
祥悟が身動ぎして、唇でそっと智也の鼻の頭に触れた。舌を少しだけ出して、智也の目から頬に伝う涙をぺろっと舐める。
きゅっと顔を顰めて、今度はそっと唇で涙を拭う。
「泣く、なって。泣きやめってば」
口付けを止めて、まじまじと自分を見つめる祥悟の言葉に、智也は半分ぼーっとなりながら
「……え……なに?」
「おまえさ。ずっと……待っててくれた?」
「え……?」
祥悟の細い指先が、智也の頬をそっとなぞる。
「俺が来るの、いっつも……待っててくれたんだよな、おまえ」
祥悟は智也の頬を繰り返し撫でながら、しみじみと呟く。
「……待っていたよ。でも、君は負担に思わなくていい。俺が勝手に……」
祥悟は智也の唇を人差し指でそっと押さえた。
「ばか……。そうやってまた、逃げ道作ったりすんなって。俺のこと、好きなんだろ? そうやって甘い顔してっとさ、俺、またふらふらしちまうじゃん」
「祥……」
祥悟の両手が智也の頬を包み込む。いつの間にかさっきと立場が逆転していた。
潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめられて、金縛りに遭ったように、目を逸らせない。
「俺のこと、好き?」
智也は無言で頷いた。
「俺の酷い過去引っ括めてさ、俺のこと、ずっと好きでいてくれる?」
智也はまた頷くと
「ああ。ずっとだ」
思わず声が掠れた。祥悟はちょっと寂しそうに笑って
「俺、おまえが望むようにはおまえのこと、愛せるか分かんねえ。愛とか恋とか……そういう感覚、俺の中にまともにあるのか、やっぱ自信ねえし」
「祥、俺は、君に……」
「でもさ、俺、やっぱ、おまえと別れたくねえの。ここに、俺の居場所なくなっちまうの、嫌なんだ。この場所、他のやつに譲るのは絶対に嫌だ。……我が儘だよな? 分かってる。でも……嫌なんだ。他の奴がここでおまえに甘えてるのとか想像すると、すっげームカつく。イライラする」
「祥」
祥悟の目からぽろんと涙が零れた。まるで翡翠みたいな綺麗な涙だ。
「俺のことだけ、ずっと好きでいてくれる?」
「ああ、もちろん」
「俺だけずっと……抱き締めててくれる? その腕、誰にもやりたくねえの」
「ああ。もちろんだよ」
「俺だけ、見ててくれる? 俺にだけ、キスしてよ。おまえの全て……俺にくれる? なあ、なあ、智也」
ぽろぽろ泣きながら、駄々っ子みたいに次々要求してくる祥悟の言葉が、甘い鎖になって絡みついてくる。
「祥。君の欲しいものは全部あげるよ。俺の目も声も腕も、君が望むものは全部、君だけのものだ」
祥悟は泣き笑いの表情を浮かべ
「おまえさ……。やっぱ、俺に甘すぎだろ」
祥悟はちゅっと智也の唇にキスをすると
「なあ、前に言ってくれたじゃん? 俺だけにしてみないか?ってさ」
「……ああ」
「あれさ、もう1度言ってよ」
「……っ。……いいのかい?」
「ん。言って」
智也はごくっと唾を飲み込むと
「祥。もう、俺だけにしないかい? いや……俺だけのものに……なってよ」
言った途端、胸がきゅーっと痛くなる。これは俺のトラウマだから。
祥悟は満足そうに笑って、智也の首にしがみつくと
「 」
掠れた声で、耳元にそっと囁いてくれた。
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