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番外編『愛すべき贈り物』192
更衣室のドアが開き、スタイリストに伴われて里沙が姿を現した。
……ああ……すごい……綺麗だ……
窓際で待っていた祥悟がゆっくりと歩み寄る。里沙はちょっと照れ臭そうに微笑んで
「ふふ……おかしくない?祥」
祥悟は込み上げてくる複雑な思いを噛み締めながら、にっこり微笑んだ。
「おかしくないよ、里沙……いや……姉さん。すっげー……綺麗だ」
テラス側の大きな窓から射し込む柔らかい陽の光を受けて、里沙の姿は神々しいほどに美しかった。どんな衣装もあつらえたように着こなしてみせる里沙だが、今日のこの衣装はこれまで見たどの姿よりも輝いて見える。
「なんか……緊張しちゃうわね。歳の割に子どもっぽいデザインじゃなかったかな?」
大きな姿見の前で、全身をチェックしながらはにかむ里沙の少し少女っぽい表情に、目の奥がじわじわと熱くなる。
祥悟は慌てて瞬きをして誤魔化して、首を竦めた。
「全然。ほんと、よく似合ってるって。な。撮影で使うのってその一着だけ?」
「ううん。これがメインでね、他に淡い色のものや、デザイン違いを3着の予定よ。でも……これが私、一番好きかも」
「OK。じゃあさ、俺も衣装合わせ、行ってくる。また、後でな」
にこっと笑って手を振って、さっさと更衣室に向かう祥悟に
「あ。祥……」
「ん~?」
振り返ると里沙は花のように微笑んだ。
「ありがとう。祥。いろいろ心配かけて……嫌な思いさせて……ごめんね」
「ばーか。改めて何言っちゃってんだよ。2人だけの……姉弟じゃん。じゃ」
祥悟はくるりと里沙に背を向け、もう1度手を振ると、更衣室に入った。
後ろ手に閉めたドアにそのままもたれかかり、ふぅ……っとため息をつく。
危ないところだった。
堪えていた涙がつーっと頬を伝う。
「綺麗だよ。里沙。世界中で一番。おまえは俺が愛した……たった1人の女性だもんな」
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