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番外編『愛すべき贈り物』195
寝間着がわりの大きな柔らかい白いシャツ一枚で、雅紀がシーツに横たわる。秋音は上から覆い被さって、その白い額にそっと口付けた。
風呂に入って後は寝るだけだった雅紀は、こざっぱりとしていて、うっすら上気した肌も、つるつるのつやつやだ。
……相変わらず、歳よりだいぶ若く見えるな。睫毛、やっぱり長いな……。カールしてるんじゃないか?これ。
キスに応えて目を閉じている雅紀の、長い睫毛がふるふると震えている。秋音は思わず微笑んで
「エステ効果は凄いな。おまえの肌、前よりつやつやだ」
柔らかそうなほっぺを指先でぷにぷにすると、雅紀はぱちっと音を立てそうな勢いで、目を見開いた。
「う……ん。明日も里沙さんのお付き合いで行きますよ。でも、やだなぁ……」
「どうしてだ。お姉さんたちにいじられるからか?」
含み笑いの秋音の言葉に、雅紀はぷくんっと頬をふくらませ
「んもぉ……面白がってるでしょ。秋音さんのバカ……。脱毛とか、結構大変なんですからね!里沙さんに協力する為じゃなきゃ、俺あんなの絶対にやりたくないし」
秋音は笑いながら柔らかい髪をくしゃっと撫でて
「そんなに怒るな。なかなか経験出来ないことなんだぞ。俺も当日を楽しみにしてるんだからな」
「むー……。他人事だし」
ぷすぷす怒る雅紀の唇に、そっとキスを落とす。ちゅっちゅっちゅっと続けざまに啄むと、雅紀の表情がふんわりと解けていく。
目を閉じて、口づけに応える雅紀の穏やかな表情を確かめながら、秋音は口付けを深くした。
「……ん……んふ……ぅ……ん……」
先日、暁が雅紀と交わした会話を思い出す。
「好きになりすぎて怖い。おまえに執着し過ぎて、逃げようとしたら殺しちまうかも」と怯える暁に、雅紀は「執着してくれて嬉しい。逃げないで」と、怖いくらい幸せそうに微笑んでいた。暁の気持ちはそのまま、自分の気持ちでもある。この愛らしくて優しい天使を、自分も絶対に手放せそうにない。
幸せの絶頂で妻子をこの腕からもぎ取られた後、詩織と一緒に温かい家庭を夢見ながら買ったマンションの一室で、深い絶望の時を過ごした。
産まれてくるはずだった子どもの産着やベビーベッド。幸せの象徴のようなそれらに囲まれながら、2度と人を愛したりはいないと、1度は誓ったのだ。
自分にそんな資格はないと。
あの時の絶望を、嘆きを、心が凍るような喪失感を、自分は決して忘れることはないだろう。幸せにしてやることが出来なかった詩織とお腹の子に対する悔いと想いは、きっと生涯消えることはない。
けれど……。
己の未来を犠牲にしてまで、命懸けで自分を助けようとしてくれた、この愛おしい恋人。
自分の中で枯れ果ててしまった、人を愛するという気持ちを、もう1度呼び起こしてくれた希望の光。
雅紀に出逢えて、無償の愛情を捧げられて、もう1度恋をしたことで、自分はどこまでも堕ちていきそうな絶望の闇から、這い上がることが出来たのだ。
……愛してる、なんて言葉じゃ、俺のこの想いは伝えられないな。
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