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哀しい嘘。近くて遠い月2

「客?こんな時間に?」 「はい。お約束もなく、非常識だと断りましたが、立ち去ろうとしません。セキュリティを呼びますか?」 瀧田は首を傾げ、 「私の名前を言って訪ねてきたの?どんなヤツ?名前は?」 「はい。早瀬暁と名乗る長身の男です」 瀧田は、目を見張り、すぐに面白そうに頬をゆるめ 「へえ……早瀬暁。そう、彼が乗り込んできたのですか。それは素敵だ……。君、セキュリティはいいから、梶たちを呼んで。それと、早瀬暁は裏口から1階の客間に通しておきなさい」 「はい。かしこまりました」 使用人が一礼して部屋を出て行くと、瀧田はうきうきした足取りで、コレクションルームに向かった。 雅紀は椅子の上で、だらしなく足を開かされたまま、放心している。瀧田はほくそ笑みながら雅紀に近寄り 「雅紀。君の大好きな早瀬暁が来てくれましたよ」 「……あ……きら……さん…?」 「そう。あきらくんです」 ぐったりしている雅紀の足枷を外し、後ろ手にしていた腕輪の鎖も外すと 「ふふ。向こうからわざわざ飛び込んできてくれたんです。歓迎してあげなくてはね」 瀧田の言葉がようやく理解出来たのか、雅紀の顔が強ばりだす 「……暁さん?暁さんが……ここに?」 「嬉しいでしょう?夢の中じゃなくて本物に会えるんです」 雅紀は青ざめ、首を横に振り 「や……だめ……っ…暁さん……来ちゃだめだっ」 「下の客間で待っていますよ」 雅紀はがくがくと力の入らない身体を必死に動かし、瀧田にすがりついた。 「待って。暁さんは、帰してくださいっ。……あぁ……お願い……暁さんにはひどいこと……っしないって…」 「向こうから勝手に来たのですよ。君に会いたいと言っているそうです」 雅紀は泣きながら首を激しく横に振った。 「会わないっ……会えない……っ俺、会いたくないっ。ぁ……お願いです、瀧田さん、彼を追い返してくださいっ」 「おやおや。冷たい恋人だ。さて。どうしましょう?私としてはせっかくの余興を、楽しみたいのですけど」 「お願いしますっ。何でもしますっ。暁さんをここから出してあげてっ。俺ちゃんと言うことききますからっ」

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