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番外編『愛すべき贈り物』207
ドレスの裾を踏まれて、つんのめりそうになった祥悟の身体を、男が横から駆け寄って、橘から庇うように抱き留めた。
祥悟が驚いて顔を向ける。
「……大丈夫?」
「は?……智也?おまえ……どうして……」
駆けつけてくれたのは、智也だった。白いタキシードに身を包み、祥悟をぐいっと抱き寄せて微笑むと
「君が無茶しそうって、教えてくれた人がいてね」
「智也……」
見つめ合いすっかり2人だけの世界に浸りかけた智也の肩を、橘がぐいっと掴むと
「貴様は誰だ! 邪魔をするな」
智也は振り返って、橘をギリっと睨みつけ
「あなたこそ、俺の大切な人に何をするつもりです?!」
そう叫んで橘の手を振り払い、祥悟の身体をいっそう自分の方に抱き込んだ。
……ちょ……っなに?なんだっての、これ……?
「ふん。大切な人、だと? 貴様、そいつが誰なのか分かってるのか? そんな格好はしているがな、そいつは……男だぞ!」
智也の怖いくらいの剣幕に若干後ずさりながら、橘は皮肉めいた嘲笑を浮かべた。
智也はきつい目で睨んだまま、首を竦め
「そんなこと、言われなくたって分かってますよ。橘祥悟。俺の最愛の恋人です」
「ちょっおまえ、何言って」
きっぱりと言い切る智也に、橘は眉を顰め、まじまじと智也の顔を見つめて
「君は……真名瀬?……真名瀬智也くんか」
「ええ。橘社長。お久しぶりですね」
橘は怪訝そうな顔で、智也と祥悟を交互に見つめて
「何故、君がここに? ……まさか君も……グルなのか?」
「グル……? おっしゃる意味が分かりませんね。俺は祥悟があなたに傷つけられたりしないように、助けに来ただけです」
橘は胡散臭げに智也を睨めつけて
「私が祥悟を? 何を訳のわからん事を……。その男に面目を潰されたのは私の方なんだぞ。里沙の大切な最後の撮影をぶち壊しおって……。
真名瀬くん。いいから君は余計な邪魔をするな。私は祥悟に用があるのだ」
言いながら、またふつふつと怒りがよみがえってきたのだろう。橘は、智也の腕の中で自分を睨みつけている祥悟に目を移し
「祥悟。貴様のやったことは重大な営業妨害だ。今回の企画はな、大手の新しいスポンサーが参入しての大掛かりなものなのだぞ? ここを撮影で貸し切るのだって、かなりの経費がかかっている。貴様にその損害を賠償出来るのか? 悪戯半分で……」
「橘さん。どうなさったのですか? 何かトラブルでも?」
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