660 / 665

番外編『愛すべき贈り物』209

青ざめ強ばった表情の橘に、貴弘は微笑んで 「ええ。まだお付き合いを始めたばかりですが、私も歳が歳ですし、浮ついた気持ちではなく、出来れば結婚を前提に……と思っているのですよ。先日、うちの父にも会って貰ったのですが、いいお嬢さんだと喜んで貰えました」 穏やかだが、自信と余裕たっぷりに答える貴弘に、橘は何も言えなくなって口を噤んだ。 「な……智也」 2人のやり取りを見守っていた祥悟が、そっと智也の耳元に囁く。 「なに‍……?」 「ここ、任せてさ、そろそろとんずらしよーぜ?」 悪戯っぽい目でにやりとする祥悟に、智也は目を見張って、祥悟と貴弘をそっと見比べて 「あれ、予定のシナリオだった‍んだね?」 「ん。協力してもらってんの。暁くんの知り合いだって、紹介してもらってさ」 智也はふふっと笑って頷き 「そうか。じゃあ、お任せして逃げよう」 智也は祥悟の手をぎゅっと握ると 「それじゃあ、橘社長。私たちはこれで失礼しますね」 にっこりと笑って優雅に一礼すると、祥悟も貴弘にもう1度お辞儀して、くるっと2人に背を向けた。 橘がショックから我に返って、呼び止めようとした時には、智也と祥悟は仲睦まじく寄り添い抱き合って、教会脇の園路の方へと遠ざかって行った。 「はは……。さすが貴弘。橘のおっさんとは格が違うつーの。すっげー余裕じゃん」 教会の2階の準備室のバルコニーから、そっと4人のやり取りを見守っていた暁が、ため息をつきながら苦笑した。 「つーか、祥悟に白馬の王子さま登場かよ。俺の出番、なくなっちまったぜ」 智也と祥悟が颯爽と立ち去り、やがて貴弘に促され、橘は肩を落として立ち去って行った。 「ふふ。真名瀬さん。格好よかったですよね」 後ろから近づく雅紀の声に、暁は手すりに頬杖をついたまま 「王子さまに応援要請したの、おまえだな~? 雅紀」 「うん。だってあの2人、お似合いです」 「まあな。でもそのおかげでさ、俺のこのタキシード姿は無駄になっちまったけどなぁ」 とほほと笑う暁の横に、雅紀はそっと歩み寄ると 「む……。暁さん、祥悟さん助ける王子さま役、そんなにやりたかったんだ……。そうですよね、祥悟さん、綺麗だったもん」 雅紀のむっとした暗い声に、暁ははたっとして 「は‍? おま、何言ってんだよ‍? んなわけあるかーっての。だいたいさ、……っ‍?おわっ」 振り返った暁が素っ頓狂な声をあげた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!