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番外編『愛すべき贈り物』210
暁が振り返った先には、さっきの新郎役のタキシードを着た雅紀……ではなく……
「ま……っ。雅紀~~~っ」
暁は情けないほど締まりのないデレ顔になって、雅紀にわふんっと飛びついて行った。
「わっ、暁さっ」
「おまっ、なになになんだよぉ~。マジで天使かっ?! やべぇ……可愛い過ぎだっつーの」
デカいワンコが大きな尻尾をフリフリしながら、頬擦りしてくる。雅紀は、はしゃぎまくる暁の顔を、両手で掴んでぐいーっと引き剥がし
「んもぉっ暁さん、ダメっ。せっかく綺麗にセットしてもらって、お化粧もちゃんとしたのにっ」
「だってさ。だっておまっ。こっこんなサプライズありかよ~。あーやべえっ可愛いっ。なっなっな、ちゅうするぜ?」
顔をぐにーっと押さえつけても、嬉しそうにキスしようと口を突き出してくる。
……んもぉ……。可愛い過ぎるの、暁さんの方だし。
里沙からこの格好を勧められた時、正直、雅紀としては恥ずかしくて堪らなかった。いい歳の男がこんな格好なんて……ものすごく質の悪いコスプレになってしまいそうで。でも、里沙に撮影協力を依頼されてからエステにも必死で通って、出来る限りおかしくないように努力はしてみたのだ。
……大好きな暁が、喜んでくれる顔を見たいが故に。
「俺……変じゃない?……おかしく……ない? 暁さん」
じわじわと目元を赤くしながら、ちょっと不安そうに上目遣いする雅紀の愛らしさに、暁の胸がどきんっと跳ねる。
「ばっか。変なわけねーじゃんっ。おかしくないっつーより、おまえ美女過ぎんだろっ。すっげー似合ってるぜ」
暁は雅紀から少し離れて、全身をしげしげと眺めた。
教会の塔の間から射し込む柔らかい陽射しを浴びて、淡いアプリコットピンクのドレスを身につけた雅紀は、まるで妖精のような儚げな美しさだった。
細身の上半身をぴったりと包み、首元と腕まで覆う繊細なレースが、整った雅紀の顔を上品に引き立てている。余計な飾りのないシンプルなデザインのドレスは、きゅっと締まったウエストの所からふんわりとボリュームを増して、裾へと流れ落ちている。
柔らかい猫っ毛は緩く毛先をレースの髪飾りで纏められていて、後れ毛がふわんと頬にかかっているのも、雅紀の儚げな美しさを際立たせていた。
そして、色味を抑え、ナチュラルに施された化粧。
衣装もメイクも、プロデュースしたのは、恐らくあの最強の双子姉弟だろう。美しく整った顔立ちだが、決して女には見えない雅紀を、こうまで夢見るようなたおやかな美女に変身させるとは……。
……やっぱマジですげえわ。里沙も祥悟も……そしてこの愛すべき仔猫ちゃんも。
貴弘には、今回かなりの無理を承知で、あの双子と引き合わせた。事務所を放逐された2人の今後と、橘の里沙への邪な思惑を封じさせる為に。
貴弘は即座にOKはせずに、まずは2人とじっくり話し合った上で、今回の一件に全面的に協力を申し出てくれた。どうやら、新規事業参入へのビジネスチャンスだという目論見もあるようだが、双子の才能や人となりにも、好印象を抱いてくれた様子だった。
……里沙……。おまえの白馬の王子様、ひょっとしたらようやく現れたのかもしれねえな。
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