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番外編『愛すべき贈り物』211
「……暁さん……」
惚けたように自分を見つめたまま、満足そうに微笑む暁に、雅紀はもじもじと両手を握って話しかけた。暁はにかっと笑って
「最高だぜ、雅紀。おまえってマジで天使なのかもな」
「へ……?急に……改まって何言って……」
暁は、握り合わせている雅紀の手をぐいっと掴んで抱き寄せ
「おまえの周りにはさ、きっと優しいオーラが出てんだな。関わった人間に幸せを運んでくる、すげえあったかいオーラがさ」
きょとんと首を傾げている雅紀に、暁は化粧を崩さないようにそーっと口付けると
「さーて。んじゃ、そろそろ行こうぜ、お姫さま」
「え。行くって……何処に?」
「決まってんだろ~。新婚の俺たちが次にいくとこなんてさ。……早く2人きりになろうぜ」
急に声を潜めて低音で囁かれ、雅紀は赤い顔でこくこく頷いて
「うん。あ、えっと。じゃあ、俺、これ着替えて来ないと」
言いながら、後ずさりしようとする雅紀の華奢な身体を、暁はひょいっと抱きかかえた。
「ばーか。んなすぐに着替えんなよ。せっかく俺の為に着てくれたんだろ? もうちょっと楽しませて? な?」
お姫さま抱っこされて、甘い声でおねだりされて、雅紀は耳まで赤くなってじたばたしながら
「でもっだだめですっ。これ、借り物だし、返さないと」
「だーいじょうぶだよ。いいから俺に任せとけって」
暁は蕩けるような甘い顔で、腕の中の雅紀に片目を瞑ってみせて、ゆっくり歩き出した。
「橘さんは帰ったよ」
案内されてドアを開けると、窓際で外を見つめていた里沙が、くるっと振り返った。
「桐島さん」
事の顛末が気になって、まだドレス姿のまま、気を揉んでいたのだろう。
「大丈夫。ミッションは無事終了だ。納得はいってないだろうが、君と祥悟くんには、私や父の後ろ盾がついていると、しっかり分からせてあげたからね。滅多なことは仕掛けて来ないだろう」
貴弘の頼もしい言葉に、里沙はほっとしたように顔を綻ばせて
「いろいろと……ご尽力頂いてありがとうございました。本当に……なんてお礼を言っていいか……」
貴弘は軽く首を竦めてみせて
「礼には及ばないよ。私としてもこれは先行投資だからね。祥悟くんにはまだ色良い返事は貰えてないが、君は私の仕事を手伝ってくれる、そう思っていていいんだよね?」
里沙は少し表情を曇らせて
「手伝う、だなんて……。むしろ今後のことにまでご尽力頂いて……いいんですか? 私には勿体ないお話なのに……」
「それはご心配なく。君のこれまでの仕事のことは、いろいろ調べさせて貰ったよ。いけると踏まなければ、こんな申し出はしない。……それに……」
貴弘はゆっくりと里沙に歩み寄ると
「ここ数ヶ月、仕事仕事で追いまくられていたからね。今ちょうど、プライベートを充実したいと思い始めていたところなんだ。君のような魅力的な人とね。……私のような男は嫌いかい?」
里沙はふふ……っと悪戯そうに微笑んで
「それは……お仕事のお話と絡めて、ですか?」
貴弘もつられたように笑って
「まさか。私は橘さんじゃないよ。素敵な女性を口説くのに、そんな無粋な手は使わない」
里沙はそっと目を伏せて
「私……ずっと大好きだった方への想いを……ようやく吹っ切れたばかりなんです。だから今はまだ、そんなに早く、気持ちは切り替えられないかもしれません」
里沙の素直な告白に、貴弘はちょっと目を見張り、穏やかに微笑んだ。
「偶然だな。私も……いろいろあってね。それにしても、君は正直でとても誠実な人なんだな。それでは、まずは良き友人としてお付き合い願いたい。君のことを……もっと知りたくなってきたよ」
里沙も一瞬目を見張り、くすっと笑って
「そうですね。私たち、まだお互いをよく知らないもの。それではまずはお友だちとして。私も桐島さんのこと、少しずつ知っていきたいと思います」
「ありがとう」
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