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番外編『愛すべき贈り物』212
「ね、暁さんっ。降ろして」
「いいからじっとしてろって。このまんま、俺の車まで連れてくんだからさ」
雅紀はじたばたと脚を振って
「違うんです。ほら、あれ見て」
「ん~?」
暁は立ち止まり、雅紀の指差す方を振り返った。
そこは教会の祭壇の前で、ステンドグラスの光が、スポットライトのように射し込んで、まるで映画のワンシーンのように見えた。
「お……っ。すげえな」
「うん。あそこで……永遠の愛を……誓うんですよね」
雅紀がうっとりとした声で呟く。暁はその場所と腕の中の雅紀を見比べてから、そっと雅紀の身体を降ろしてやった。
雅紀は、ドレスの裾をぎこちなく摘んで、ゆっくりと祭壇に近づいていく。
「……すごい……綺麗だぁ……」
……や。綺麗なのはお前だろ、雅紀。
「雅紀」
ステンドグラスの描き出す神秘的なスポットライトの下で、夢見るように佇む雅紀に、暁はそっと後ろから歩み寄った。
振り返る雅紀の目が、少し潤んでいる。暁はちょっとせつない顔をして
「ちょっとさ。俺たちの結婚式の、予行練習しとくか」
「え……?」
「あ。もちろん、ちゃんとした式はいずれやるぜ。俺たちのこと、祝福してくれる人たちを呼んでさ。だからこれは……」
ぽやんと自分を見上げる雅紀に、暁は優しく微笑むと
「3人だけの予行練習、な?」
「暁さん……」
暁は表情を引き締め、雅紀の肩に両手を置くと
「愛してるぜ、雅紀。おまえとずっと……共に生きたい」
そう言ってかがみ込み、恭しくキスを落とした。
雅紀は目に涙を滲ませて、擽ったそうに微笑むと
「俺も……愛してます。暁さん……秋音さん。俺、一生ずっと……2人を幸せにしてあげたい、です」
雅紀はちょっと伸び上がって、はにかみながら、暁の唇にちゅっとキスを返す。
暁は、雅紀の身体をぎゅうっと抱き締めた。
重なる唇がぐっと深みを増す。込み上げてくる歓びに我を忘れそうになって、暁は慌てて、雅紀の肩を掴んで唇をほどき
「やべぇ。危うく神聖なキスじゃなくなっちまうとこだったぜ。神様に怒られちまう」
照れておどけたような暁の顔に、雅紀はふふっと噴き出して
「うん……じゃあ続きは……2人きりで、ですよね?」
暁はにやりとすると
「おお? 雅紀くん、えらい積極的じゃん。んじゃ、愛する仔猫ちゃんのご要望にお応えしてさ、めちゃくちゃ濃厚に愛してやるぜ」
途端に調子に乗る暁に、雅紀は顔を顰めて後ずさり
「や。やっぱ俺、着替えて」
暁はすかさず雅紀の身体を捕まえて、ひょいっと抱え上げると
「だーめ。こんな可愛い花嫁、逃がすわけねーだろ」
じたばたする雅紀をしっかり抱きかかえて、暁はバージンロードを出口へと向かった。
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