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番外編『愛すべき贈り物』215
微妙に暁から距離を取り、身構えている雅紀に、暁は得意の笑顔で両手を差し出した。
「……ダメです。暁さん、邪なこと、考えてるでしょ」
「はぁ? おいこら待て。誰が邪なんだよ」
「ドレス……借り物です」
「ん~? だから?」
「……汚したら、弁償です」
じと……っと自分を睨みつけながら小声で答える雅紀に、暁は怪訝そうに首を傾げていたが、ふいに、はたっとした顔になり
「おっ。あ~そういうことか。
……ってか、雅紀~」
「な……なんですか?」
急ににやにやし始めた暁に、雅紀は警戒心いっぱいになった。暁は嬉しそうに笑いながら、じりじり後ずさる雅紀に歩み寄り
「おまえ、エロ過ぎっ」
「へ? 俺が? ……っあ……っ」
後ずさりながら、椅子に躓いてバランスを崩した雅紀に、暁はすかさず駆け寄り、腕を掴んで
「おい、ほら、危ねえっての」
暁に抱き締められて、雅紀は恨めしげに上目遣いに睨みつけ
「エロいのは、暁さんでしょ」
暁は細いウエストを両手できゅっと支えて、雅紀の顔をにやにやしながら覗き込み
「や。おまえの方だから。勝手にエロいこと考えてたのはさ。俺、着たままエッチするとか、言ってねえし?」
雅紀の目が見開かれていく。じわじわと頬が赤くなっていく。
「……うそ。……違うの?」
暁は嬉しそうに、にかーっと笑って
「ほらな~? おまえの方がエロいじゃん。俺はちゃんと脱がせてからするつもりだったぜ~。汚したりしねえし?」
雅紀は耳まで真っ赤になって、暁の腕を引き剥がそうとじたばたし始めた。
……く~っ。可愛いっ。何ひとりで想像してたんだっつーの。しかもなに、この反応っ
「ちっ違う、しっ。俺、そんなこと、考えてないからっ」
「こら。暴れんなって。わかったわかった。エロいのは俺の方な?」
暁はもがく雅紀をぐいっと抱き寄せ
「ドレスは汚さねえから安心しろよ。それより、ちゃんと見せて。おまえの可愛い贈り物。俺の為に着てくれたんだよな? エステ通ってたのも、もしかして、それ着る為だった?」
揶揄い口調を止めて、急に穏やかな声になった暁に、雅紀はぴたっともがくのを止めて、顔をあげた。
「最初は、里沙さんに、撮影の協力頼まれて」
「うん。今日の新郎役、な」
雅紀はこくんと頷くと
「でも。通ってるうちに、里沙さんが、どうせならドレスも着てみない?って、言い出して」
「ふーん。それも里沙からの提案だったんだ」
「うん。俺、嫌だって言ったんですよね。暁さんのことは好きだけど、偽物の女になりたいわけじゃないからって」
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