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番外編『愛すべき贈り物』216
「偽物の女、なぁ……」
雅紀の言葉に、暁は表情を曇らせた。そこに雅紀がこだわる気持ちは、分からないでもない。
「でもね、里沙さん、言ってくれたんです」
「うん?」
「貴方がどんな格好してたって、暁は貴方が好きよ。貴方が男だろうが女だろうが、暁はきっと貴方に恋するわ。だって暁が好きなのは、貴方の魂なんだもの。男か女かなんて、関係ないの。貴方が暁の為にドレスを着るのは、女の偽物になるってことじゃないのよ。貴方の真っ白で真っ直ぐな想いを、暁に贈るだけなの」
雅紀はその時の里沙の言葉を、もう1度噛み締めるように微笑んで
「だから別にドレスじゃなくても、もちろんいいと思う。ただ、貴方があえて、自分から堂々とドレスを着てみせたら、暁はきっと安心すると思うわ。暁にちゃんと愛されてるって、貴方が自信を持ってくれてるんだ……ってね。
……里沙さん……そう言ってくれたんです」
ちょっと照れくさそうに話す雅紀の顔を、暁はじっと見つめた。
「俺、正直、自信なくて、ぐるぐるしてたでしょ? あの時。だから……里沙さんの言葉、すごく力強くて……嬉しかった」
「うん。そうか。そうだな。そっか……里沙のやつ」
雅紀はふふ……っと笑って
「暁さんが俺に、フリフリエプロンとか……ウェディングドレスとか、着せてみたいって言うのも、俺に女になってくれって、思ってるわけじゃないですもんね」
暁は苦笑して首を竦め
「あったり前じゃん。おまえはどっから見ても女じゃねーし」
「うん。要するに暁さん、ちょっと変態なだけですよね」
にこにこ笑いながら、予想外のことを言い出す雅紀に、暁はなぬ?っと白目を剥いた。
「はぁ? ちょっ、ちょっと待て。誰が変態だっつーのっ」
「えー……だって暁さん、やっぱちょっと変態さんだし。彼シャツとか、俺に着せて喜んでるでしょ?」
「うー……。や、そりゃ、そうだけどさぁ。でもそれはさ、なんつーの? おまえ可愛いし、色っぽいしさ、嫌がってちょっと恥ずかしがるのも、すげーきゅんきゅんするしさ。
いや……うーん……。俺、やっぱちょっと変態なの……か?」
悩み顔になって、だんだん自信なさげになっていく暁に、雅紀はくすくす笑って
「ふふ。暁さん、しょぼくれてる。可愛いなぁ。もちろん冗談ですよ。変態だなんて、俺、思ってないし」
ちょっと悪戯っぽい顔でくすくす笑う雅紀に、暁ははぁ~っと脱力して
「おまっ、そーか、揶揄ってんだな? 俺のこと。くっそ~。悩んで損したぜ」
「暁さん、可愛いです。
……大好き」
「っ」
上目遣いの雅紀の目が幸せそうに蕩けていて、暁は思わずドキッとした。
……うおっ。なにそのつぶらな瞳っ。つーか、なにその不意打ち。もう、おまえってやつは~。
まったくもって、里沙の言う通りなのだ。雅紀の性別が男だろうと女だろうと関係ない。
こいつの心を映し出す、この綺麗な瞳。
暁として初めて出逢って、もじ丸で、この瞳から大粒の綺麗な涙が零れ落ちたのを見た時から、どうしようもなく心が震えた。心を鷲掴みにされた。
運命の悪戯が、偶然与えてくれた、この愛すべき贈り物。
初めて愛おしいと心から思えた雅紀が、自分と同じ同性だったのは、たまたまなのだ。
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