674 / 678

特別番外編「君が消える日」2

「暁さん…‍…?」 ドアが開いて、雅紀がひょこっと顔を出した。暁は鏡の中の自分をぎゅっと睨みつけてから、笑顔を作って振り返り 「お。雅紀~」 「お、雅紀~……っじゃないから。もう準備、出来たんですか?」 へらっと笑って抱きついて来ようとするのをかわして、雅紀は暁の全身を素早くチェックした。 「うん、大丈夫。完璧ですね」 そう言いながら、暁のネクタイの曲がりを少し直して 「暁さん、スーツ姿もよく似合ってます」 満足そうに微笑む雅紀に、暁はへらっと笑い返した。 「ふふん…惚れ直しただろ? つか、おまえのスーツ姿も久しぶりに見たけどさ、やっぱめっちゃ可愛いわ」 そう言って雅紀をぐいっと引き寄せた。 「かっ可愛いって何‍? 大人っぽいとか、他にもっと言いようが……っちょっ、どこ触ってんですかっ」 どさくさに紛れてお尻をさわさわと撫でられ、雅紀は慌てて逃げようとする。暁はじたばたしている雅紀をがっちりと捕まえて、ぎゅうっと抱き締めると 「ん~マジで可愛い、おまえ。離したくなくなるぜ……」 耳元で囁く暁の声音に、ちょっと切羽詰まった色を感じて、雅紀はもがもがしながら、腕の中から顔を出した。 「……暁さん…‍…?」 暁は雅紀の首筋ですーはーすると、ほっぺにちゅっとして 「んーーーやべっ。このまんま押し倒したいけどさ。もう時間ねえよなぁ?」 ニヤけたいつもの口調に、雅紀はぼんっと顔を赤くして 「っ当たり前ですっ。んもう~暁さんのお馬鹿っ。電車、乗り遅れちゃいますからねっ」 ぷりぷりしながら、暁の腕を引き剥がした。 「冗談、冗談。んな怒んなよ。さてと。んじゃ、行くか」 暁は雅紀の頭を、セットを崩さないようにそっと撫でると、一緒に寝室を後にした。 今日は、田澤探偵事務所で共に働いた、古島直哉の結婚式だ。 恋人募集中だ、いや僕の嫁は二次元にいるんだと言いながら、雅紀にちょっかいをかけまくっていた古島にも、ようやくリアルな春が訪れたらしい。 結婚式の招待状を貰うと、雅紀はまるで自分のことのように喜んで、この日が来るのを心待ちにしていたのだ。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!