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特別番外編「君が消える日」7
「……っ暁……さん……っ」
雅紀の顔がくしゃっと歪んだ。暁は手を伸ばして雅紀の身体を抱き寄せ
「ほーれ。また泣くなよ~。おまえさ、秋音が自分のせいで、建築デザインの夢諦めたんじゃないかって、ずーっと気にしてただろ? だからあいつがあの仕事で残したもの、おまえに見せてやりてえって思ったんだ。他にも地方の美術館とかあったんだけどな。偶然古島さんの故郷だっつーのもあってさ、ここにしたんだぜ」
くすんくすんと鼻を啜り始めた雅紀の頭をわしわしして、ぎゅっと抱き締めた。
「諦めたんじゃねーよ。んな後ろ向きな発想じゃねえ。秋音が前の仕事で培ったもんは、今の店にもちゃーんと活かされてんだろ? 1人で思い描いてた夢を、今度はおまえと一緒に育むことにしただけだ。雅紀。おまえが一緒だからこそ、見れる夢っつーのがあるんだよ。分かるか?」
「……っ……うん……うん……」
暁の穏やかな声に、雅紀はくすんくすん泣きながら頷いた。
……そうだ。おまえと一緒だからこそ、見れる夢が……さ。
ずっと側に居たいと思う。この純粋で一途な可愛い恋人の側に。2人の夢はまだ始まったばかりじゃないか。このまま消えてしまうなんて……辛すぎる。
暁は雅紀の身体をぎゅっと抱き締めた。
「……なんか、妙にしんみりしちまったよなぁ。雅紀。顔見して?」
腕をゆるめてそう言うと、雅紀はそろそろと顔をあげた。泣いたせいで、目も鼻も真っ赤だ。
暁はくすっと笑って、雅紀の鼻の頭にちゅっとキスすると
「っつーことで。お次はおまえと愛を育みたいんですけど?」
「……へ……?」
「へ?じゃねーよ。ここは俺がデザインした恋人たちのスイートルームだぜ? ムード満点。準備万端。っつったら、次やることは決まってんだろ~」
暁はにやり……と悪い顔して笑うと、そのまま雅紀をベッドに押し倒した。
不意をつかれて、雅紀は目を丸くしたまま、ベッドに仰向けになっていた。暁はすかさず雅紀の両手をシーツに縫い付けると、
「飯の前に、おまえが食いたい。食べさせて?」
雅紀は丸い目を更に大きくして
「え……っちょ、ちょっと、待っ」
「待てねえよ。俺、腹ペコだもん」
「……や、暁さん、嘘つきっ。ここ、見るだけって……」
焦って今更じたばたし始めた雅紀の、綺麗な首筋に吸い付いた。
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