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特別番外編「君が消える日」9※
「風呂の湯溜まったぜ。おまえ、先に入るか?」
キッチンで後片付けしていた雅紀は、最後の皿を吹き終えて棚に仕舞うと、エプロンを外して暁の側へ歩み寄る。
「ん……。ね、暁さん。ここのお風呂、すっごく広かったですよね?」
「ん~? さっき一緒に見たじゃん。広いぜ~。うちの風呂場の倍はあるよな」
「うん……じゃあ……一緒に入りましょうか?」
暁は唖然として雅紀の顔をまじまじ見つめた。
いつもどんなに誘っても、恥ずかしいから嫌だと抵抗して、いきなり後から突入するか、拝み倒してじゃないと、絶対に一緒に入らない雅紀が……。
……うわぁ……マジか。そっちからお誘いとか。
雅紀は目元を少し染めて、恥ずかしそうに目を逸らす。暁はごくっと唾を飲み込むと
「い……っいいのかよ? 一緒に入ったら俺、悪戯とかしちまうぞ? 大人しく風呂入るだけじゃ済まねえぞ?」
このアホな念押しは自分でもどうかとは思うが、一緒に風呂に入って雅紀の綺麗な裸を前にしたら、多分……いや絶対に、ちょっかいを出してしまう自信はある。というか、手を出さないでいられる自信がない。
……つくづく情けないが。
「……大丈夫。イタズラ……してもいいから」
微妙に目を逸らしつつ、小さく呟いた雅紀の言葉に、暁の心臓がばこんっと跳ねた。
……ちょっまじ鼻血出そうっ。なになに、雅紀くん。どこでデレスイッチ入った?
もう5年近く一緒にいるのに、雅紀がたまにこうして唐突にデレる時のタイミングが、いまだに分からない。
いや、たしかにさっき、食事して風呂入ったらずっと寝室で……なんて可愛いことを、さらっと言ってくれたりはしたが……。
暁は逸る心と身体を抑え込み、表情を引き締めると、雅紀の両肩に手を置いて、顔を覗き込んだ。
「ふうん……。悪戯しても……いいんだ?」
雅紀はちろっと上目遣いに暁を見上げて、赤い顔でこくんと頷いた。
「……やっ……も……っだめ……っ」
「ほーら、逃げんなって。ちゃんとほぐせねえだろ?」
バスタブのヘリにしがみつくようにして、喘ぎながら腰を揺らす雅紀に、暁はちょっと意地悪な声で囁く。
羞じらい仔猫の可愛いお誘いは、暁のスケベ心に火をつけた。脱衣場で、服を脱ぐ間ももどかしくらい大急ぎで全裸になると、雅紀を小脇に抱える勢いで浴室に飛び込んだ。
屋根裏部屋同様、オーナーのこだわりが随所に見られるここの浴室も、改装したばかりなのか、檜の香りが漂う贅沢な造りだ。
「もう、ダメか? 立ってらんねえ?」
後ろをローションでほぐす前に、暁は雅紀の全身をグズグズになるくらい、丁寧に愛撫していた。雅紀の白い肌はすでにうっすらとピンク色に染まっていて、艶かしいキスマークが桜の花びらのように、あちこちに散っている。
「……っんぁっぁっあん……っんぁ
だっめ……っ」
「やーらしいのな。雅紀。お前の中、もうとろっとろ。俺の指に食いついて離れねえぜ?」
柔らかい耳朶をはみはみしながら囁くと、その言葉に煽られたのか、雅紀の中がびくびくと震えた。
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