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優しい月灯りの夜だから2※
伸ばされた雅紀の手を、暁の手が受け止めた。大きな手でぎゅっと握りられて、その手の温かさに、雅紀の目から涙が溢れた。
ノンケだった暁が、自分の男の象徴を、何の戸惑いもなく、口に入れてくれている。いくら好きでも、ゲイ同士だって、口での愛撫は苦手とする男がいるぐらいなのに。
暁が自分を好きだと言ってくれる気持ちを、もう疑ったりはしていない。
自分の身体を抱いてくれるその愛情を、もちろん嘘だとは思わない。
それでも、やっぱり自信がなかった。
男であることが。
本来ならば、暁の恋愛対象ではないはずの自分の性が。
自分を抱いたことを、暁がいつか後悔する日が来るんじゃないか。
その不安を、頭では違うと理解していても、心のどこかでは常に怯えていた。
ふいに、ひぃっく……としゃくりあげ始めた雅紀に、暁はぎょっとして動きを止めた。
雅紀が声を出して泣いている。
暁は慌てて、雅紀のものを口から出すと、伸びあがって雅紀の顔をのぞきこんだ。
「おいっ、雅紀?どうした!?いっ痛かったか?俺、もしかして歯、あてちまった?」
焦りまくり青ざめ始めた暁に、雅紀は泣き声を止められず、ぽろぽろ涙を零しながら首をふり
「ちが……っごめなさ…っひっく……ちがっあきっらさ……ひぃっく」
「ちょっ落ち着けっ。なっ雅紀っどこ痛い?なあ?」
暁に両手で顔を包まれて、雅紀は顔を歪めると、暁の身体に手をまわし抱きついた。
ものすごい力でしがみついて離れず、子供のように泣きじゃくる雅紀を、暁はどうすることも出来ずに、半ばパニックになっていた。
雅紀の泣き声がだんだん小さくなり、やがてしゃくりあげる声も聞こえなくなるまで、暁はおろおろしながら抱き締めていた。
何か言いたくても、言えば更に興奮して泣いてしまいそうで、とにかくひたすら黙って抱き締めるしかなかった。
「落ち着いたか?」
ようやく泣き声も止んで、静かになった雅紀に、暁は恐る恐る声をかけた。雅紀はさっきまでの反応が嘘のように、ゆっくりとした動作で、首をこくんと縦にふる。暁は知らず詰めていた息を吐き出し
「どした……?痛かった?」
「ううん」
「んじゃ……嫌だったか……?もしかして……口でされるの嫌いか?」
「違う。……ごめんなさい」
「や、謝んなくていいし。でも、理由教えて?なんで……あんなに……泣いた?」
雅紀の身体を少し離して、顔をのぞきこむと、泣き過ぎて痛々しいほど赤くはれた目で、雅紀は暁をじっと見つめ
「……嫌じゃなかった。嬉しかった、……と思う。でも怖かった。暁さんにあんなことさせるなんて、ダメだと思ってたから」
暁は訳が分からず首を傾げる。
「へ?ダメって……なんで?嫌じゃないん……だよな?」
「だって…」
「おまえだってしてくれたじゃん。あれ、すげえ気持ち良かったからさ、おまえにもしてやろうと…」
雅紀はまたちょっと泣きべそ顔になり
「暁さん、ノンケだから、俺の、そういうことするの、絶対抵抗あるって思ってて」
「うーん……。で?」
「暁さんにそんなことさせるなんて、俺、申し訳なくて、なのにしてくれたから、ショックで。ものすごく……ショックで」
雅紀の言うことはわかるようで分からない。でも、痛かったとか嫌だった訳ではないようで、暁はほっと胸を撫で下ろした。
「要するに、俺がそんなことすると思わなくて、びっくりし過ぎて、ショックで泣いちまった。……そういうことか?」
「………うん……そう……です。」
暁は安堵のため息を吐き出し
「はぁぁぁ。びっくりさせんなよ~。おまえ子供みたいに泣くから、まじでびびった。大事なちんこ、傷つけちまったかと思ったぜ~」
「ごめんなさい……」
「ばーか。謝んなって。まったく……おまえってさ、びっくり箱みたいだな。反応がいちいち想像を超えてて、次、何が飛び出すか予測不能。俺にしてくれた時はすげー上手くて超エロかったくせに、自分がされるとショックで泣くとか……。もう……どんだけだよ」
暁はくすくす笑いながら、雅紀の顔中にキスを落とした。まだ濡れている睫毛も、腫れた瞼も、赤い頬も、赤い鼻も、そして唇も。可愛くて仕方がない。どこか危うげでちぐはぐでアンバランスな、この存在そのものが愛おしくってどうしようもない。
「んっふ…ん……ん…っ」
柔らかい唇をこじ開けて、舌を絡めた。雅紀もそれに応えて舌を絡ませてくる。キスしながら手を伸ばし、雅紀の少し萎えてしまったペニスを優しく握ると、鼻からもれる声が甘さを増した。そのねだるような声に、暁は唇を放して
「もういっかい、口でして、いいか?」
濡れて揺らめく雅紀の瞳を、じっと見つめた。雅紀は一瞬目を見開いてから、恥じらうように逸らし、こくん……っと頷いた。
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