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特別番外編「君が消える日」14

……ああ……。そうか。なんだよ。そういうこと、か。 暁の心に、秋音の力強い声がしみていく。消えてしまった靄の代わりに、秋音の温かい優しい感情に、包み込まれていく。 ……そうなのか。俺は、消えちまうわけじゃねえんだな。 俺は……ようやく、秋音と同じになれた。そういうこと、なんだな。 これまでも、本来の人格である秋音と、思いを通じ合わせることは出来た。それでも、秋音が表に出ている間、暁は薄い靄に包まれて隔離されていた。届きそうで届かない、もどかしい距離を感じていた。 だから不安だった。ずっと怖かった。いつかこの靄が全てを覆い尽くして、秋音にも雅紀にも完全に届かない場所に、旅立つ日が来るのではないかと。 自分が存在していたことが、遠い過去の記憶に、なってしまう日が来るのではないかと。 秋音の中に同化していくことは、自分の存在の消滅だと思っていた。 ……ははっ。違うじゃん。全っ然、思ってたのと違うし。 秋音が力強く、言ってくれた言葉。 『暁は、消えない。俺が、消させない』 それは繰り返し繰り返し心を揺さぶる、鐘の音のようだった。 自分が生まれて、存在していることを、喜んでくれている彼らの、祝福の鐘の音。 ……ちぇっ。叶わねえよなぁ。なんだよ? その男前なセリフは。気障過ぎるっつーの。んなこと言われちまったらさ、ジタバタしてる俺が、格好悪すぎだろ。 っつーか、んなこと言われちまったらさ、俺が秋音に惚れちまうじゃん。 嬉しいのに、なんだか無性に悔しい。うわーーーっと叫び出して走り回りたいくらい、小っ恥ずかしい。 秋音はふ……っと笑って、雅紀の顔をあげさせキスをした。 「……っん……んふぅ……」 涙でちょっとしょっぱいキスをひとしきり堪能すると、秋音は唇を外して、笑いながら雅紀に片目を瞑ってみせた。 「勝手にパニクって、世話焼かせるおバカを、今、表に放り出すからな。悪いが面倒見て、癒してやってくれ。……おい、出て来いよ」 そう言って秋音は目を閉じた。 次に目を開けると、そこには、ものすごーくバツの悪そうな顔をした暁がいて……。 「暁さん……」 「……悪ぃ……。びっくりさせて、ごめん」 まるで悪戯をして叱られるのが分かっている犬みたいに、頭の上に無いはずの耳がしょぼんと垂れて見える。 「ふふっ」 雅紀は思わず噴き出した。笑いながら涙が零れる。 噴き出されて、文句を言おうとした暁が、雅紀の涙を見て、くしゃっと顔を歪めた。 「笑うなよ~。いや、泣くな」 「……んもぉ……暁さんの、バカ」 暁はしょげた顔で、雅紀の頬にそっと手を当てて 「……だな。俺は大馬鹿もんのアホだよな。まーた独りで暴走しちまった……」 雅紀は暁の手に自分の手を重ねて 「おかえりなさい、暁さん。もう勝手に消えちゃ、ダメですよ」 「……雅紀……」 「これだけは、忘れないで。貴方がもし消えそうになっても、俺は必ず、見つけ出すから」 「……っ」 「もし貴方が、深い闇に引き摺り込まれそうになっても、俺は必ず、貴方を救い出す。絶対に独りになんか、させない。 だって俺たち、運命の恋人、でしょ?」 「……っ……雅紀~」

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