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特別番外編『ちよこれいと』5

暁の言葉に、雅紀はひょこっと顔をあげた。 「え……どうして暁さん、謝るの‍?」 首を傾げる雅紀の大きな瞳に、暁は罪悪感にかられながら苦笑して 「さっき変な態度取ってたろ‍?おまえは悪くないのにさ。完全に、俺の八つ当たりだよな」 雅紀は暁の髪を優しく撫でて 「全然。八つ当たりなんかじゃないです。今日、ほんとに忙しかったから、疲れちゃったんですよね。俺の方こそごめんなさい。手伝えなくて」 暁は雅紀の顔に頬擦りして 「ちげえよ。俺さ、また悪い病気が出ちまったの」 「え‍?病気‍?」 「そ。焼きもちってやつ」 雅紀は顔を離して暁の顔をまじまじ見つめて 「焼きもちって……誰に?」 「おまえさ、お客さんにモテモテだったじゃん?めっちゃ言い寄られてて、チョコ貰ったり告白されたり、手握られたりさ」 雅紀はようやく意味が分かったのか、びっくりしたように目を丸くして 「あー……でも、あんなのそんな、あの常連さんたち、いつもあんな感じだし。今日はバレンタインデーだったから」 「んー。だよなぁ。そういうの楽しみましょうってイベントなんだもんな。多少ハメ外したって、気にするこっちゃねえよな。分かってんだよ。でも……嫉妬しちまった。ごめん……」 力なく笑ってしょぼくれる暁に、雅紀は少しほっとしたように笑って 「そっか……そうですよね。恋人が他の人とベタベタしてたら、気分良くないですよね」 さわさわと髪を撫でてくれる雅紀の手が優しくて気持ちいい。暁は雅紀をぎゅーっと抱き締めて 「おまえが、女性をそういう対象だと思ってねえの、ちゃんと分かってんだよ、俺だってさ。おまえはお客さんたちがイベントを楽しんでくれるように、一生懸命頑張ってただけだ。だからこれはさ、俺が全部悪いの。自分でも心、狭過ぎだろって自己嫌悪だからさ。だからほんと、ごめんな」 雅紀はふふっと笑って首を振り 「ううん。今ね、もし俺が逆の立場で、暁さんが女性客と仲良くしてたらどうかなー?って想像してみた。やっぱり俺も、気分良くないし、きっと嫉妬とかしちゃうと思う。だから謝んないで。それに……」 「それに‍?」 「暁さんの焼きもち、俺、嬉しいかも。それって俺のこと、一人占めにしたいってこと、なんですよね?」 嬉しそうに微笑む雅紀に、暁は苦笑して 「ばーか。んな甘いこと言ってると、俺の独占欲どんどん酷くなっちまうぜ。だからたまにはさ、怒って叱ってくれよな」 言いながら、雅紀の胸にすりすり甘える暁に、雅紀は擽ったそうにくすくす笑って 「怒んないです。俺は暁さんを甘やかしたいもん。もっともっといっぱい甘えて欲しいから」 暁は顔をあげて、情けない表情になり 「ダメだろ~それは。おまえさ、俺のこと、骨抜きにしちまう気だな?」 雅紀はくすくす笑って、暁の頭をぎゅーっと抱き締めた。 「あのね、暁さん。今日のお客さん、俺にチョコくれてた人ばっかりじゃないんですよ」 「へ‍?」

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