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特別番外編『にゃんにゃんにゃんの日』2
秋音は険しい表情で雅紀の身体を抱きかかえると、リビングの方に連れて行った。足元も覚束無い様子の雅紀を、取り敢えずソファーに座らせ、救急箱から体温計を取ってきて、
「熱、測るぞ」
ソファーにぽてんとへたりこんでしまった雅紀のシャツのボタンを外し、脇に体温計を挟ませた。
「んぅ……あき、とさ…ん?」
真っ赤な顔をした雅紀が、気だるそうに秋音を見上げる。
「気持ち悪いか?目眩とか吐き気はするか?」
「んーぅ」
雅紀はゆっくりと首を振ると、
「きもちぃわるく、ないれすよぉ。れも、あっついぃ」
気怠そうだが、辛そうというわけでもない。だいたい、昼も夜も、普段少食な雅紀にしては、旺盛な食欲をみせていたのだ。
ピピっと鳴った体温計を外して見てみるが、やはり平熱だった。……どういうことなんだ?訳が分からない。
「どこか痛いとか苦しいとか、ないのか?」
「んう……ぜーんぜん、らいじょうぶぅ」
だったら何故こんなに真っ赤になっている?呂律が回ってないのは何故だ。
「おまえ、もしかして酒を飲んだのか?」
秋音に顔を覗き込まれて、雅紀はきょとんとした顔をした。
「んーん。のんれないし」
雅紀はそう言ってふにゃんと笑っている。秋音は得体の知れない不安が込み上げてきた。
……何かおかしな病気かもしれないな。……救急車を、呼ぶか?いや、このまま車でかかりつけの病院に連れて行った方が早いな。
かがみこんでいた秋音が、焦って身を起こした瞬間、雅紀の腕が伸びてきて、きゅっとしがみつかれた。不意をつかれ、バランスを崩して、雅紀の上にのしかかりそうになって、秋音は慌ててソファーの背もたれに手をついた。
「っ。どうした?!」
雅紀は目をうるうるさせて
「あつーい。あき、とさ、あついぃ」
まるで駄々をこねるようにそう言って、もじもじすると、秋音の手を押しのけるようにして、服を脱ぎ始めた。
「お、おい、雅紀っ」
カーディガンをもどかしげに脱ぎ捨て、シャツのボタンも外し始める。焦って止めようとする秋音の手をじたばたと振りほどき、ジーンズの前も寛げてしまった。上半身裸になって、更に下も脱ごうとする雅紀を、秋音は恐怖にかられてぎゅうっと抱き締めた。
「雅紀。落ち着いてくれ。いったいどうしたんだよ、おまえ」
秋音の上擦った声に、もがいていた雅紀の動きがぴたっと止まった。恐る恐る顔を覗き込んで、秋音ははっと息を飲む。
雅紀はうっとりと蕩けきった表情をしていた。具合が悪いというより、これは……。
「……ぁきとさぁ……んぅ……」
雅紀はせつなげに眉を寄せ、唇を突き出して
「キスぅ……してぇ」
呆然と見下ろしている秋音のシャツの襟を引っ掴み、ぐいっと引き寄せると、悩ましげな顔でキスをおねだりしてきた。
……な……なんだ?いったい何がどうなって……
完全に思考停止している秋音に、雅紀はぐぐっと顔を近づけると、自ら唇を押し当てる。
「んっふ……ぅん……んぅ……」
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