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特別番外編『にゃんにゃんにゃんの日』5※

「雅紀」 ソファーに戻ると、雅紀はくったりと座面に横たわり、もぞもぞしていた。脱ぎかけのジーンズがずり落ちて、ほぼ下着一枚の姿で、自分の手を脚の間に挟み込んでいる。 むき出しの上半身はすっかり薄桃色に染まって、ふぅふぅ言いながら全身をくねらせている雅紀の様子は、恐ろしいほど色っぽくて艶かしい。 秋音はごくり……と唾を飲み込んだ。 祥悟に確認して、それほど害のない薬だと分かって少しは安心したが、効き目が薄くても1粒で2時間だと言っていた。雅紀の場合は2粒。しかもこういう薬の効き目に関しては、雅紀はものすごく過敏なのだと、過去の事件で学んでいる。 ……これは……俺の手には負えないかもしれないな……。 秋音はため息をつくと、自分の中のもう1人に助けを求めた。 「ほら、動くなよ。もうちょっとでベッドだからな」 秋音の言葉に、雅紀はこくこくこくと頷いた。 さっき暁に交替を頼んだが、何故かあっさり拒否された。こういう事態はおまえの方が適任だと、秋音は尚も必死で食い下がったが 『たまにはさ、雅紀の超エロエロ降臨モード、おまえも相手してみろよ。すっげー強烈だからさ』と突き放された。 ……暁のやつ……。俺に前におしおきされたのを、まだ根に持っているのか? 秋音は内心の怒りと動揺を抑え込み、ソファーの上の雅紀を抱きかかえると、寝室に移動した。 暁の時の記憶は秋音にもある。もう何度も、雅紀とは夜を共にしているし、乱れるこの仔猫の強烈なエロ可愛さは、ちゃんと知っている。けれど、実際のこういう局面は、どちらかと言うと、暁の方が慣れているだろうからと、これまで無意識に避けてきたような気がする。 もちろん、超絶エロモードの雅紀が嫌なわけではない。ただ、なんとなく……こっち方面の自分のやり方に自信がなかったのだ。いや、根本的に暁と自分は同じなのだと、分かってはいるのだが……。 雅紀をそっとベッドに下ろすと、秋音はゆっくりと深呼吸して、覚悟を決めて自分の服を脱ぎ始めた。 「雅紀」 「んぅふ……あきと……さぁん」 とろんとろんに蕩けた雅紀の目が、ぼんやりとこちらを向く。昂ったまま放置されて、焦れに焦れているのだろう。せつなげなその瞳には、うっすらと涙の膜が張っている。 「辛いか‍?今、楽にしてやるからな」 うっとりと微笑む雅紀の上に、覆い被さると、ふっくらとした柔らかそうな唇に優しくキスを落とす。 「んっ……ぅ」 舌を差し入れ、雅紀の舌を絡めとると、待ち望んでいたのか、雅紀はくぅんっと可愛く鳴いて、秋音の舌をちゅくちゅくと吸った。絡み合う舌と舌が焼けるように熱い。秋音は柔らかい髪をかき分けるようにして、雅紀の耳の後ろに手を差し入れ、口付けを更に深くした。 潰さないように柔らかく覆い被さった秋音の素肌と、雅紀の素肌がしっとりと重なり合う。 触れた瞬間は少しひんやりするが、すぐに馴染んで互いの体温が溶け合っていく、この感覚が秋音はすごく好きだった。キスをしながら全身を隙間なくぴったりと合わせると、お互いの境界線が曖昧になっていって、混じり合って溶けて、ひとつになれるような気がする。 雅紀と身体を重ねる度に、自分は決して孤独が好きだったわけではないのだと思い知らされてきた。身体だけでなく心もじんわりと温かく満たしてくれる、雅紀という存在が愛しくて堪らなくなる。

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