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特別番外編『にゃんにゃんにゃんの日』後日談4

「どうした‍? 何かあったのかい?」 部屋に入るなり、リビングのソファーを陣取り、何だかぼんやりしている祥悟に、智也は穏やかに問いかけた。祥悟は片脚を抱え込んだまま、ちろっと顔をあげ 「別に‍? 何でもねーし」 ツンとした受け答えにも、いつもの精彩がない。智也は首を傾げ、祥悟の隣にそっと腰をおろした。テーブルの上のノートパソコンを開いて、さっきまで書いていた小説のページを開く。 構って欲しくないオーラを出している祥悟は、そっとしておいた方がいいだろう。 静まり返った部屋に、智也のキーボードを打つ音だけが響く。 途中まで打った文章を、手を止めて見直していると、いつの間にかぴたっとくっついてきた祥悟が、パソコンの画面を覗いていた。 「それ、前に書いてたやつの続き‍?」 「ああ、そうだよ」 「ふうん」 祥悟は興味なさげに鼻を鳴らすと、智也の肩にこてんと頭を預けてきた。いつもつんけんして懐かない猫が、自分からこうして擦り寄ってくるのは珍しい。よほど落ち込むことでもあったのか。 「何か飲むかい‍?」 「いらない」 とりつくしまもない。智也はそれ以上は何も言わず、また続きを書き始めた。 しばらくの沈黙の後、祥悟が長い長いため息をついた。 「あのさ。俺って魅力ねえ‍?」 何を突然言い出すのかと、智也は内心驚いたが、顔には出さないようにして、そっと祥悟の様子を窺った。祥悟は相変わらずぼんやりと無表情で、何を考えているのか窺い知ることは出来なかった。 「突然どうした‍の? 誰かに何か言われた‍?」 「言われてない。……や、言われたっつーか……ムカついた」 ぼそっと呟き、何故かぷくっと頬を膨らませる祥悟の顔が、ちょっと幼く見えて可愛い。いつもとは明らかに様子の違う祥悟に、智也はドキドキした。 「君にそんなこと言うなんて、その人ある意味、勇者だねえ。誰‍? 仕事関係‍?」 「勇者じゃねーし。バカップルだし」 「バカップル‍?」 ますます意味が分からない。何故バカップルが、祥悟に魅力ないなんて暴言を吐くのだろう。 祥悟は拗ねた顔で、それきり口を噤んだ。分かるように説明してくれる気はないらしい。 「魅力、あるよ。少なくとも俺は、君のことが好きだな、祥」 重たくならないように、パソコンに集中しているフリをしながら、さりげなく想いを告げる。もうこうして何回も、祥悟には告白しているが、いつもかわされて言葉は虚しく流れていってしまう。以前、気持ちが昂った勢いで「自分1人に絞ってちゃんと付き合って欲しい」と言ったら、「そういうの、めんどくさいんだよね」と吐き捨てられ、その後しばらく音信が途絶えた。その苦い経験が智也をちょっと臆病にさせているのだ。 「恋するとさ、人って変わるもん‍?」 脈絡もなく、また祥悟が呟く。今夜の祥悟はいったいどうしたのだろう。発言が意外過ぎて、智也はさっきからドキドキしっぱなしだ。 「どうだろう。人にもよると思うけど」 当たり障りのない答え方をして、智也は横目で祥悟の顔を見た。祥悟は眉間に皺を寄せて 「なんかさ、もう完全な別人って感じなんだよね。瓜二つの双子の兄弟かと思ったし」 「そのバカップル‍がかい?」

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