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第50章 紡ぐ言の葉。繋ぐ想い1

『恋人だったって聞かされて、驚いたけどほっとした。俺の一方的な気持ちじゃなかったんだってな』 「……う……そ…」 『こんな嘘、つくわけないだろう。まったく……。電話じゃなくて直接、顔見て話したかった。一世一代の告白のつもりだったのにな』 照れたような笑い含みの暁の言葉に、雅紀はのろのろと耳からスマホを外して、画面を見つめた。 今、話している相手は、本当に暁だろうか。 画面には暁の名前がある。間違いない。 じゃあ俺は、知らないうちに眠ってしまって、都合のいい夢でも見ているんだろうか。 少しの間、そのままぽやんとしていたらしい。 気がつくとスマホから、暁の声が聞こえて、雅紀は慌ててスピーカーをオンにした。 『……おいっ。雅紀!聞こえているか?まさ…』 「ごめ……なさい……俺…」 『ああ、びっくりした。おまえ、返事ないから切れたかと思っただろう』 「俺……ぼんやり、しちゃって…」 『なあ、雅紀。おまえに会いたい。会って顔を見て、きちんと話がしたい。こっちへは……戻れないか?』 「……っ。用事が……あって…」 『分かった。じゃあ俺がそちらに行く。おまえ、自分のアパートにいるんだよな?俺は今、仙台駅の近くなんだ。これからすぐ新幹線に乗る』 雅紀は息を飲んだ。暁の怪我はまだ治っていない。そんな身体で無理をさせたら……。 「だめっ。秋音さん、マンションに戻って!まだ安静にしてないと……っ」 『大丈夫だ。ここまでは藤堂さんに車で連れてきてもらったんだ。新幹線では大人しく座って行くから』 「でもっ」 『俺と会うのは嫌か?酷いヤツだって、もう愛想つかしたか?』 「ちがっ違うっそうじゃなくて、怪我が…っ」 『もう動き回っても問題ない。寝てばかりで身体がなまっていたところだ。走り回るわけじゃないんだから、大丈夫だよ。なあ、雅紀。俺はおまえに会いたいんだ。頼む。会ってくれないか?』 「……っ」 会いたいのは自分の方だ。それなのに、暁に会いたいと言われてしまった。お願いされて、しまった。 涙がぼろぼろ零れ落ちて、目の前のものが揺らめいて見える。 「……って…」 『え?』 「……会って、もらえるんですか……?来て……くれる?」 『ああ。今、券売機の前まで来てる。今なら急げば19:30ぐらいの新幹線に乗れる』 「あっ……。あいたい……。会いたいっ。暁さ……秋音さんっ。俺、会いたいっ」 『分かった。ありがとう、雅紀。行くよ、そっちに。おまえ、そこ動くなよ。俺がおまえに会いに行くから。だから待っていてくれ』 暁は切符を買うと、電話をしながら改札へと急いだ。次の新幹線が出発するまで、あと5分しかない。 「電話、切るなよ。今、改札を抜けた。このまま繋いでいろよ」 電話を切ったら、雅紀と会えないような気がして、雅紀に念を押して、暁はそのまま新幹線のホームへと急ぐ。 『秋音さん。急がなくていいから。走っちゃだめだから』 「大丈夫だ。走ってないぞ。早歩きしているだけだ。くそっ。やっぱり身体がなまってるな」 エスカレーターで上へあがると、ちょうど新幹線がホームに入ってきたところだった。 自由席の車両まで急ぎ足で辿り着き、電車に乗り込む。暁はほっと息をついた。 「今、乗った。雅紀、このまま話していようか」 『だめ。ちゃんと座席に行ってください。身体、休めないと』 「分かっているよ。でも電話を切りたくないんだ」 『……っ。あ……じゃあ……ライン。ラインで話を…』 「そうか。そうだな。じゃあ取り敢えず座席に行くぞ。電話切ったらすぐ、メッセージを送ってくれ。内容は…そうだな……会いたい。でいいぞ」 『……っ』 電話口で、雅紀が絶句している。 それはそうだろう。自分でも浮かれたことを言っているという自覚はある。 「じゃあ、一旦切るぞ。すぐにメッセージ送れよ」 暁はちょっと恥ずかしくなってきて、そう言うと電話を切った。一番近くの空いている座席に座り、すぐにスマホを睨み付ける。 5分ほど経って、ラインの通知がきた。すかさず雅紀のページを開く。 ―秋音さん。会いたいです。 この短いメッセージを打つのに、雅紀は5分もかかったわけだ。悩んで悩んでやっと打って送信したのだろうか。その雅紀の顔が浮かんできて、暁は思わず微笑んだ。 ―俺もだ。雅紀、おまえに会いたい。 すぐに返事を打って送信する。既読はすぐついたが、雅紀からの次のメッセージはなかなか来ない。 やっぱりラインでのやり取りはもどかしい。電話でも声だけで顔が見れないのが残念だったのに、文字だけなら尚更だ。 ―雅紀?読んでるか? ―読んでます大丈夫。なんか……まだ夢見てるみたいで ―夢?何が夢だ? ―秋音さんが、俺のこと、好きって ―夢じゃないぞ。自覚した時は、俺もかなり戸惑ったがな ―いつから? ―おまえが夢に出てきた ―夢に? ―俺の横でおまえが、うたた寝していた時だ。

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