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ふたりの君4※

驚いてうつ伏せになろうとする雅紀を押さえて、ぺニスをそっと握った。 「あう……っ。ん…っ」 秋音の大きな手で包み込まれて、雅紀は仰け反った。ドライで達した直後の敏感な身体がびくびくと波打つ。 秋音はゆっくりと優しく扱きながら、雅紀の反応をうかがった。手の中の性器は熱く脈打ち、先っぽからだらだらと涙を零している。せつなげに眉を寄せた雅紀は、壮絶な色香を纏い、微かな声をもらしながら、やがてふるっと震えて精を吐き出した。 「旅行前に空っぽにして出たから、ほんと、何にもないですね」 冷蔵庫をのぞきこんだ雅紀は、ため息混じりに部屋の秋音に話しかけた。 「そうか。じゃあ田澤さんのところに行く前に、どこかで朝飯を食おう」 シャワーを終えてすっきりした顔の雅紀が、キッチンから部屋に戻ってくる。 先にシャワーを浴びて、押し入れから適当に引っ張り出した服に着替えていた秋音は、雅紀をちょいちょいと手招きした。 おずおずと寄ってくる雅紀の腕を掴んで引き寄せ 「拭いてやる。かせ」 雅紀が自分で拭いていたタオルを取り上げると、まだ濡れている髪をわしわしと拭き始めた。 タンクトップとトランクス姿の雅紀は、ちょっと恥ずかしそうに俯いて、大人しくされるがままになっている。 「柔らかいな、おまえの髪は。これは癖っ毛だろう?」 「うん。子供の頃はもっとくるくるでしたよ。パーマなんかかけてないのに、いっつも生活指導の先生に目をつけられて、理不尽に怒られてたし」 雅紀はぷくっと頬を膨らまし、自分の髪の毛を指先でつまんで嫌そうな顔をした。秋音を見上げて 「秋音さんのは真っ直ぐですよね。いいなぁ、なんかきりっとして男らしくて」 秋音は意外そうな顔になり 「男らしいとか、そんなこと気にするのか。おまえでも」 「そりゃあ気になりますよ。俺だって男ですから」 秋音は眉をあげ、雅紀を上から下まで眺め見る。雅紀はますます膨れっ面になり 「や、何?その目。どうせ俺は男らしくないですよっ」 ぷりぷり怒っている雅紀の、子供っぽい表情が可愛い。 たしかに、男らしいとは言えないかもしれない。 ふわふわと柔らかいちょっと茶色がかった髪。小さな顔は品よく整っていて、くっきり二重の大きな瞳は、若干垂れ気味で愛嬌がある。小さな唇。ほっそりした首。 身体もしなやかで華奢だ。 「うん、大丈夫だ。どこからどう見てもおまえは男だ。女には見えない」 含み笑いの秋音の言葉に、雅紀は頬を紅潮させ 「それ、なんか全然っ慰めになってないっていうか、絶対バカにしてるからっ」 「してないしてない。おまえは綺麗で可愛いよ」 雅紀はうーっと唸って、秋音からタオルを取り返すと、髪を自分でわしわし拭いて 「俺、生まれ変わったら絶対に、秋音さんみたいになりたい」 「ばかだな。俺みたいになったら、また俺の恋人になれないだろう?おまえは生まれ変わっても、おまえのままでいいんだ」 「……っ」 生まれ変わってもおまえのままでいい。 さらっと秋音が口にした言葉に、雅紀は絶句した。 どうしてこの人はいつも、こんなにも嬉しい言葉をくれるのだろう。 ぽやんと自分を見つめている雅紀に、秋音はちょっと照れたような顔になり 「ちょっと気障だったか?だが本音だ。他人と比べたりしなくていい。おまえはおまえだから、俺は好きなんだ」 「秋音さん……」 秋音は目を潤ませる雅紀の頭をぽんぽんと撫で 「ところで、雅紀。着替えはどうする?いつまでもそんな格好していると、また襲うぞ」 雅紀ははっとして自分の身体を見下ろし 「あっ着替え、俺持ってきてるからっ」 あたふたとアパートから持ってきた袋に飛びつき、シャツとスラックスを取り出し、着替え始めた。 「さっき、藤堂さんに電話した。病院の紹介状は荷物と一緒に送ってくれるそうだ」 「あっそうですか、よかったぁ。じゃあ届いたら早速、こっちの病院に行きましょう」 「そうだな。よし、そろそろ出掛けるぞ。まずは田澤さんの事務所がある○○駅まで出る」 窓ガラスに映る自分を見ながら、髪の毛の跳ね具合をチェックしていた雅紀は、くるっと後ろを振り返り 「ね、秋音さん。田澤さんの所、ほんとに今日行くんですか?こっち戻ってきたばっかりだし、今日1日は部屋でゆっくりしてた方が…」 「その話はさっきもしただろう?疲れていないし体調も何ともない。むしろ鈍っているから、少しぐらい出歩いた方がいい」 「でも」 「雅紀。大丈夫だ。そんなに過保護になるな。俺はこっちに戻ってきたんだ。早くここでの生活に慣れた方がいい。早瀬暁が田澤さんの事務所で働いていたのなら、まずは田澤さんに会って話を聞く。それが一番いいだろう?」 「そう……だけど。怪我、ちゃんと治る前に無理はしないでください。約束ですよ」 秋音は雅紀の頭をくしゃっと撫で 「わかっている。じゃ行くぞ」

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