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揺らめく記憶8※
気持ち良さそうだと思っていた雅紀の様子が、なんだか辛そうで、中途半端に突き入れたまま、進むことも戻ることも出来なくなった。
きゅっきゅっと収縮を繰り返す中の刺激に、秋音はイきそうになるのを堪えた。ぐっと眉を寄せたまま、しばらくじっと雅紀の表情をうかがう。
雅紀が伸ばした手を掴んで心配そうに見守っていると、はくはくと浅い息をしていた雅紀が、やがて大きく息をついて弱々しく笑った。
「……しん……じゃうか……とおも……った…」
「大丈夫か……?」
「……ぅん……だい、じょぶ。秋音さ……もっと……きて……?」
「いや……。だが……辛そうだぞ……おまえ」
雅紀は首を横にふり
「……気持ち、よすぎて……息、できなかた……だけ。……ね……もっと奥……きて…」
雅紀は恥ずかしそうにはにかんで、秋音の手をきゅっと握ると、ねだるように腰を揺らした。
「……っ。こら、煽るな」
秋音はくっと眉を寄せ、でも少しほっとした顔になって
「すごい、な……。おまえの……中。きゅうきゅうして。絞り取られそうだ…」
「……っ俺の、中……。気持ち、いい……?」
「ああ……すごくいい……。熱くて、溶けそうだ」
秋音の掠れた声に、雅紀は嬉しそうに微笑んだ。秋音は掴んだ両手を雅紀の顔の横でシーツに縫いとめ、涙に濡れた目をじっと見つめた。
「ゆっくり、動くぞ」
そろそろと揺らしながら、ゆっくりと突き入れていく。うねる雅紀の中は、本当に溶けてしまいそうなほど気持ちがいい。気をゆるめるとすぐにもってかれそうで、秋音は時折息を詰めながら、少しずつ奥を目指した。
じわじわと根本まで挿入して、秋音はほお…っと息をついた。繋がった場所から、どくんどくんと互いの鼓動が伝わってくる。
快感とは別の満ち足りた安心感。せつないくらいの愛おしさが込み上げてきて、秋音はそのままの体勢で甘えるように雅紀に頬ずりした。
「好きだ……雅紀。おまえが愛おしくてたまらない」
「……っ嬉しい……。俺も、大好き…」
秋音は雅紀の唇を啄むようにキスして、じりじりと腰を揺らし始めた。
「……ん……ぁ……は……ぁぅ…」
濡れた唇から零れる、雅紀の低い喘ぎ声。感じている時の彼の表情はすごく綺麗だ。ぞくぞくするほど色っぽいのに、不思議な透明感があって、見つめていると、心が吸い込まれていく。
秋音は性急に揺さぶって快感を享受したい衝動を堪えて、じわりじわりと腰を使った。歓びに染まっていく雅紀の表情を、もっとじっくり見ていたい。
中の感触を味わいながらゆっくりと腰をひく。抜け出ていこうとする秋音のものを、逃すまいと熱く絡みついてくる。ぎりぎりまで引いて、今度はゆっくり押し込んでいく。狭いけれど柔軟性のある肉壁は、押し戻そうとする動きと引き込もうとする動きが、同時に働いて複雑なうねりを生み出した。潤みきった中は引き攣ることもなく、滑らかに秋音のものを咥えこむ。
「……あぁ……いいな……すごく……いい…」
ゆったりと抜き差しを繰り返しながら、秋音は思わず吐息混じりに囁いた。その言葉に、感じきってとろんとした雅紀の目が、一瞬大きくなり、やがて幸せそうに柔らかく笑んだ。それに呼応するように、雅紀の中がきゅうっと収縮する。秋音はくっと息を詰め
「……っそんなに、締めるな。もう……もたないぞ」
「……ぁき……とさ……っん……イッて……。俺の、中……で…ぁ……きもち、よく……なって……ぇ」
舌足らずのその言葉に煽られ、いよいよ我慢出来なくなってきた。秋音は熱い吐息をもらすと
「いくぞ……っ」
抜き差しのスピードを速めた。
「んあっ……あっう……んっんーっあ……んっんっあー……っ」
がくがくと揺さぶられ、雅紀は甘い悲鳴を撒き散らす。2人の繋がっている部分が、ぐちゅぐちゅと恥ずかしい水音をたてた。雅紀は生理的な涙を零しながら、虚ろな目を見開き、与えられる強烈な快感に、乱れ悶えた。
雅紀の中が、さざ波のように痙攣している。秋音はぎゅっと眉を寄せた。もう絶頂が近い。
「……っまさきっ。一緒に、いくぞっ」
切羽詰った秋音の声。雅紀は答えようと口を開くが、言葉が意味を成さない。激しく抜き差ししていた秋音の動きが、くぐもった呻きとともに急に止まった。どくんどくんと熱い飛沫が、身体の奥に叩きつけられる。雅紀は声にならない声をあげながら、中だけで絶頂に達した。
「大丈夫か……?」
イッた後の余韻でびくついていた雅紀の身体がくったりすると、秋音はそっと自分のものを抜き取って、細い身体を横抱きにした。
「ぅん…」
雅紀は小さく返事をして、まだ力の入らない腕を秋音の逞しい背中に回し、きゅっと抱きついた。
全身隙間なくぴったりとくっつくと、セックスの快感とは別の、満ち足りた心地よさが込み上げてくる。
秋音はほお…っと吐息をもらすと、雅紀に優しくキスをした。
「なあ、雅紀。おまえに、頼みたいことがあるんだ」
「……ぇ……?」
ぽやんとした目で問い返す雅紀に、秋音は微笑んで
「俺の頼みを、きいてくれるか?」
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