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ひそやかな足音6※
気を取り直した大胡が、もう1通封を開けると、中身は小学校にあがった秋音の写真と近況を綴った手紙だった。多分残りの封書も同じように、子供の成長を父親に伝える内容なのだろう。
「本当に……いいのか?これを私が持ち帰ってしまっても」
「貴方宛の手紙です。迷惑でないなら受け取ってください。天国の母も……きっと喜びます」
大胡はもう1度ハンカチで目元を拭うと、封書の束を丁寧に布で包み直した。
「ありがとう。大切にさせてもらうよ。……ありがとう」
そう言って、包みを愛おしそうに撫でる大胡を、秋音は穏やかな表情で見つめていた。
「秋音さーん。寒くない?」
もじ丸を出て、2人並んでアパートへの道をのんびり歩く。
「ああ、大丈夫だ。おまえこそ寒くないか?」
「うーん。少し酔ってるからかなぁ。顔が火照ってて、風が気持ちいいかもー」
「そんなに酔うほど、おまえは飲んでいないだろうが」
あれから、おばさんの料理を囲んで穏やかな時間を過ごし、何か新しい情報が掴めたらお互い連絡を取り合うと約束をして、大胡と田澤は先に帰って行った。
隣の雅紀に目を向けると、なんだかほわほわと幸せそうな顔をしている。
「いや。おまえ……酔ってるな?顔がふにゃふにゃしているぞ」
雅紀は途端に唇を尖らせ
「ふにゃふにゃって……。ひどいなぁ。俺、酔ってないですー。でもちょっと気分いいかも」
「まったく……。泣いたり笑ったり拗ねたり。忙しいやつだな、おまえは」
秋音は苦笑すると、雅紀の頭をくしゃっと撫でた。雅紀はにこっと笑って上目遣いに秋音を見ると
「俺、秋音さん大好き。だから桐島さんのことも好きですよ」
「そうか」
「うん。いい人です、桐島さん。手紙渡せて良かったですね。お母さんもきっと桐島さんのこと、大好きだったんだなあって思う」
雅紀の目が嬉しそうに輝いている。
こいつのこういう素直な優しさが、いいな…と思う。今日の対面だって、隣ではらはらと見守る雅紀の存在がなかったら、自分はもっと感情的に父親に接してしまっていたかもしれない。
「そうか。……そうだな。離れていても2人はきっと愛し合っていたんだな」
駅を通り過ぎて裏道に出ると、人影もまばらだ。若干ふらついている雅紀の手を、秋音はそっと握った。
少し酔って大胆になっているのか、雅紀は素直にぎゅっと手を握り返してきた。父と母が心ならずも離してしまった愛しい人の手。自分はこの手を離さずにいたい。
母の事故。そして自分を狙ったと思われる3度の事故。大胡は警察にかけあって再捜査してもらえるように、多方面からの協力をあおぐと約束してくれた。自分も田澤の助けを借りて、何としても真犯人を見つけ出す。
「よし。頑張るか」
「え?頑張るって……何を?」
きょとんとする雅紀に、秋音は笑って
「いろいろだ。俺の為にも、おまえの為にもな」
分かったような分からないような顔をして首を傾げている雅紀の手を引いて、秋音はアパートへの道を急いだ。
部屋に入るなり、秋音にぎゅうっと抱きしめられて、雅紀はおずおずと秋音の背中に手を回した。
「どうしたの……?秋音さん…」
秋音は抱き締める腕を少し緩め、顔をのぞきこんだ。
「おまえが欲しいんだ。……抱いてもいいか?」
熱のこもった目で見つめられ、雅紀はぱっと頬に朱を散らすと、恥ずかしそうに目を逸らし
「……ぅん…。俺も欲しい……。抱いて。秋音さん」
秋音は頷いて、雅紀の唇にキスを落とした。
部屋の真ん中に敷いた布団の上で、何度も唇を重ね合いながら、お互いの服を脱がせていく。
ほろ酔いの雅紀は、いつもより大胆で積極的だった。キスを一旦中断して、薬箱にローションを取りに行った秋音が戻ると、瞳を潤ませ、焦れたように秋音に抱きついてきてキスをねだる。普段の仔猫のような幼い愛らしさが嘘のように、煽るような誘うような妖艶さを身にまとっている。
「……ん……っ……ふ…ぅん…っ」
くちゅくちゅと水音をたてて舌を絡めながら、シャツのボタンを外して、白い肌に手を這わせ、胸の尖りを探る。
「んっ……ぁあ」
突起を探しあてて指先で摘むと、雅紀はぴくっと震えて甘えた声を漏らした。指でつまみあげてくにくにすると、敏感な果実はあっという間に膨らみを増した。
秋音は唇を離し、とろんとした雅紀の目を見つめ
「おまえのここ、もうぷっくりしている。気持ちいいか?」
「ぅん……ぁ……気持ち……ぃい」
もどかしげに身をよじる雅紀の胸に顔を埋め、舌先で尖りをつんつんする。
「んあ……っぁ…ん」
雅紀は可愛い声で鳴いて、秋音の頭を両手で抱え、もっと ……というように胸を突き出した。尖りを唇にふくみ、舌で転がしながら強く吸う。
「……ああんっ」
歯をたてて軽く甘噛みすると、雅紀はびくびく震えて仰け反った。
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