6 / 12

3.鬼課長、はじめての『ごっくん』②

 男子トイレの個室から出て、手を洗っていると鏡越し、嫌な人物がトイレに入ってきた。来栖である。 「あれ、課長もトイレですか、偶然」 「……失礼する」 「えっ。嘘ウソ、課長がトイレに行ったから、心配になって見に来たんですよ」  ハンカチで手を拭いて、クールにさっさとその場を後にしようとしたら来栖に手首を掴んで止められる。眼鏡の奥の目を細めて、むっと眉をひそめては来栖をにらみ返し『離せ』というも来栖はまた嫌な感じにニヤァと笑う。 「あはっ、っていうかそれも嘘っス。仕事してても俺、昨日の課長のエロい姿思い出して、ムラムラして仕方なかったから抜いてもらいに来たんです」 「はあ?」 「課長、今日は手とお口を貸してください」 「業務時間内だぞ、」 「課長に一発抜いてもらわないと、俺、仕事になりませんよぉ。それとも皆に言いふらして欲しいんですか? 課長が初ちんぽで初イキするような、」  と、そこまでいった来栖の口をばっと塞いで、俺はキョロっとトイレの出入り口を見る。幸い誰も、今の時間にはここには来ていなかった。舌打ちしそうになって、行儀が悪いとそれも飲み込んで、それから俺は、 「わかった。仕方がないから手で……抜いてやる」 「あれ? お口は???」 「……個室に入るぞ」  来栖の悪ノリを無視して個室に二人で入って、来栖を奥にやっては俺は後ろ手で鍵を閉める。成人男性二人が入ると、俺の会社は結構いいトイレを持ってはいるがやはり狭い。眉をひそめて来栖に『おい』と声をかける。 「早くものを出せ」 「ふふ、課長がその手で、俺のチャックを下ろして自ら出してください」 「……調子に乗るなよ、来栖」 「そっちこそ。課長は俺の、もうオナペットなんですよ? いい子にしていないと、お仕置きしますけど」 「お前、上司を何だと思っている」 「課長はもう『鬼課長』じゃなくて、『雌課長』じゃないですか」 「来栖!」 「おっと、大声出したら人がきますよ?」  ぐっと唇を噛む。悔しいが、人が来るという点ではその通りだから黙って俺は来栖のベルトを外して、チャックを下ろして下着の中からまだ勃起していない(でかい)性器を取り出す。乱暴に握って、そのままごしごし粗雑に擦る。 「ちょっ、課長ってば。乱暴すぎ、もっと優しくしてくれないと、いつまでも終わりません」 「知るか、さっさと勃たせろ」 「うーん滑りも悪いなぁ。課長、涎垂らしてくれません?」 「はあ?」 「お口の中でくちゅくちゅして、涎を溜めて俺のちんぽに垂らして下さいよ」 「お前……アダルトビデオの見過ぎじゃないか」 「あはっ。これからは課長がその代わりになるんだから、言うことを聞いてください」  忌々しいが、確かにこのまま乾いたやつの性器を擦っていても仕方がない。俺は言われた通り口内で舌を動かしで唾液を分泌させて、充分に溜まったと思ったら少しかがんで口を開けて、来栖の性器めがけてそれをツウっと垂らしてやった。唾液が来栖の性器に絡むと、来栖がぷるっと身体を悦びに震わせる。 「イイ子、課長v」 「黙れ、下衆が」 「罵りながら手コキとか、ご褒美っスか?」 「……」  ぬる、ぬる。滑りが良くなったそこを黙って俺は擦り上げる。自分でするように、裏筋を指でなぞって全体を擦って、時々先端をぐりぐり弄ると来栖の性器もググっと持ち上がって熱く、固くなってきた。カウパーも噴き出してきて、さらに滑りが良くなるから来栖に寄り添って、俺は『はぁ』と熱い息を吐いて来栖の『それ』を見下ろしたまま、より激しくごしゅごしゅと擦り上げる。 「ふはっ、さすが、男同士は分かってますよね、」 「いいから早く出せ、来栖」 「んっ、ふぅ……ハハ、確かにもうそろそろ、キそうっス。あっ、もっと強くしてください、」 「ふん、」  ご注文通り俺は、来栖のを強く握って強く擦る。するとぶるっと来栖が震えて『もうそろそろっ』といったと思ったら、突然がっと俺の両肩を掴んで寄り添っていた俺を下に押し付けて、屈辱的にもトイレの床に跪かせてきたではないか。『なっ』と驚いて来栖から手を放してしまうと、来栖は代わりとばかりに自分で自分の性器を固定して、それから俺の後ろ頭を思いっきり掴んでは、『なにをっ』と開いた俺の口内に、ぶっとく雄臭い来栖の性器をズボッ! と、突っ込んできた。 「ふぐっ!!?」 「はぁっ、出します課長!!」 「んんっっ!!」  やめろ! と、そう声に出したかったが生憎口内は奴のでかぶつで一杯で、雄臭い匂いに俺はゾクゾクっと身体を震わせるだけで頭を引っ掴まれたままで、喉の奥まで挿し込まれたそれに餌付きそうになっている所にさらに、どぴゅっv どくどくv と、口内射精をされて『ぐっ』と苦いくぐもりを上げた。しばらく俺の頭を固定して、良いように満足するまで俺の口内で射精をして、やっとのことでずぽっと性器を引き抜かれては、苦しくて苦しくて、俺はその場で『おえっ』と餌付いて(床を汚さないように)手の平に、精液を吐きだそうとした。が、しかし、 「おっと、ダメです」 「んぐっ!!?」  来栖の手に、口を塞がれたのだ。俺は眼鏡の奥の涙目でキッと来栖を見上げて、首を振ろうとしても来栖に固定されていて出来なくて、息を詰ってできなくて、苦しくて苦しくて、 「……そう、課長。そのまま飲み込んで?」 「んっ、」  ごくん、とそのねばねばの苦い精液を、喉に絡めながらも飲み込んでしまった。喉が、身体が熱い。ぽうっとして、来栖から手を離されてその場にへたり込む。へたり込むといつの間にか、自身の性器も勃起していることに気が付く。来栖もそれに気が付かないわけもなく、クスッと笑んでは『イイ子、』とまた俺を馬鹿にして、それから俺の腕を引っ張り上げて立たせては、俺をぎゅうっと抱きしめてきた。 「俺の精液ごっくんして、感じちゃいました?」 「んはっ……はー、はっ、んっv」  喉がいがいがして、それに眉をひそめては眼鏡の奥にハートマークを浮かべる。来栖が俺の股間を撫ぜだしたのだ。 「オナペットとはいえ、仕事に支障をきたすのは困りますからね……課長、俺も課長を抜いてあげ、」  と言ったところでトイレに誰か入ってきた。俺たちは瞬間的に息をひそめて、来栖もさすがに俺の股間を撫ぜる手を止める。 「来栖ー? いるんだろ、大きいほうかよ」 「ああ、なんだよ岩井か。今出るよ、」  来栖はそのムキムキでくるっと俺と場所を入れ替わって、下半身を手早くキレイに収めては俺を便器の上にへたり込ませて鍵を開けて、俺を一瞬振り返って『しー』と人差し指を立ててウインクまでして、何事もなかったように同僚の呼び声に出て行った。 「あれ、そういえばお前、課長知らねえ?」 「さあ、トイレには来てないとおもうけど」 「そっか、外でも出てるのか? それより明日の飲み会のことなんだけどよ、」  とかなんとか、雑談をしながら来栖はフェイクで手を洗って、それから岩井と一緒にトイレから出ていく。俺は、俺は一人取り残されて、性器は熱く、来栖の精液の熱さに喉を犯されたことを思ってぷるっとまた震えては、そっと個室の鍵を再び閉めて、恥ずかしいことに独り、会社のトイレで初めて自慰をせざるを得なかった。それくらい、来栖とのそういう行為は俺を、駆り立てるのにはもう充分すぎたのだ。  これでは本当に、俺は『鬼課長』なんかじゃなくて来栖の『オナペット』、奴に言われた通りの『雌課長』である。悔しくて、苦しくて、でも来栖の低い声を思い出しながら俺は興奮して、自身を擦り上げながらトイレで射精をして、会社でする行為への罪悪感にざわっと背筋を震わせる。  そして、来栖の同僚も言っていた。明日はそう、飲み会があるのである。普段はそういう会に出ることのない俺だけれど、酔った来栖がうっかり俺のことを喋ったりしないか、見張らないといけないな。ぼうっとそう考えては、俺は少しだけ涙を浮かべて顔を覆って、その場で項垂れては長い長い溜息を吐いた。

ともだちにシェアしよう!