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164.月がきれいだ再び※
競うみたいに脱がせ合う。
太い首に腕回して、コッチからキスして。
丹生田はいつも通り、遠慮なしに抱きしめてきて、息が詰まりそう。
お互いまっぱで直に触れる肌が熱くて、ドキバクして呼吸やばいし、なんで息できないのかな? 分かんね。
めっちゃ荒い鼻息が頬にかかる。逞しい腕が動いて、気づいたら少し持ち上げられてた。
そのまま運ばれて、膝裏あたりにベッドが触れたと思ったら、ゆっくり横たわらせようとしたから唇離れた、けど離れたくなくて太い首に、肩に、しがみつく。
背中支えてる反対の腕をベッドについてる丹生田の、肩から首、背中の筋肉が隆起してめっちゃ硬くなってて、その感触にドキバクする。
「……腕を、緩めろ」
ヌチャッと音がして、丹生田が準備しようとしてんの分かった。ジェルとかで後ろほぐすの、やんねえと怪我するとかって、いっつもシツコイくらいやんだよな。
でもその間、丹生田が遠くなるのヤなんだ。フェラしながらヤられっとヘンな声出まくるし、声にハッとして、妙に冷静になっていたたまれねー感じになったりするし。
だからしがみついたまま
「やだよ」
言ったけど、「これでは……」戸惑うみたいな低い声。はあはあ呼吸も荒いまま。
「イイよ、このまんまヤれよ」
つって丹生田の握ったら、ピクッと身体が動いた、つうかめっちゃギンギンなってんじゃん! こっちまでドキバクしまくってぱねえ!
とか思いながら丹生田のにぎにぎしてたら、指が入り込んできた。
「ぅあ」
ビクゥとして、腕に力がこもる。くそっ、何回やっても慣れねえなコレ、てかクチュッとか音してハズいっ! ギュッと目を閉じる。
「……藤枝」
ふいごみてーな息が肩に、髪にかかって、耳元で囁くみてーな低い声が聞こえる。
「んっ、……くっ」
奥を探る指にヘンな声が漏れて、歯を食いしばっちまう。
「力を抜け」
きしむような声がした。
「……藤枝」
「……ぅ、ん」
小さく頷いて息を吸って吐いた。けどその間も指が出たり入ったりして、クチュクチュ音がしてて、ヤバいのが来て「んっ、ぅあっ」声も出る。
くっそ、やっぱハズい。気持ちイイんだけど、やっぱちょいハズいっての。
「藤枝っ」
手がガシッと肩掴んで、グイッとカラダ離され、背中がバウンドする。
丹生田が身を起こしたんで、チカラ抜けかかってた腕が外れちまう。ギュッと閉じてた目を開くと、キツく眉を寄せた丹生田の顔があった。
「月が、キレイだっ」
指が、抜けた。
「えっ」
そこにぶっといモンが入ってくる。
メリメリ音がしそうな勢いでツッコんできたくせに、「いっ」思わず声が出たら、ぐぅぅ、とか喉の奥から音が漏れて、超ゆっくりになった。そんで、はぁぁ、と深く息を吐いて、首根に顔を埋めた。
「……すまん」
「……なにが……?」
こっちもハァハァしながら背中をポンと叩く。
「てか、……この状態で、ハァ……謝るって……どういう、プレイ、だよ」
丹生田もハァハァ息が荒い。そんで「藤枝が……」呻くように言ってまた黙る。てか半端に入ったモンがなにげに小刻みに動いてんだけど?
「んっ、……ぁ、にゅう……っ」
「月がきれい、藤枝、はぁ」
つうかなんなの? その月がなんとかって時々言うけど?
「くぁ」
丹生田が動く。ゴリッと中を抉られて、またヤバいの来る。
「……は、ぁ……ばっ、んぁ」
「……ふ、じえだ……藤枝、藤枝……藤枝……っ」
ガンガン動き始めた丹生田の肩に、二の腕にしがみつく。
「んっ、ふ、……く、ぁっ」
「藤枝……っ、ふじ、えだっ、ふじえだ……っ」
名前を連呼しながら、ふいごみてーに荒い息吐きながら、鼻の頭やデコに汗びっしりかきながら、丹生田の腕が抱きしめる。キスをする。
頬に髪に荒い息がかかり、ガンガン来られてコッチも理性なんて飛ぶ。
丹生田、丹生田、丹生田、……丹生田……!
「にゅう……っ、ぁっ、あぁぁっ」
もう、もうもうもう、なんでもいい────!
目の奥がスパークしたみたい、視界が真っ白になって、そんで丹生田の腕に痛いくらいに抱きしめられ─────
一瞬後にドサッと重みがかかる。視界が戻る頃には、力尽きたみたいに目を閉じてた。
「……はぁっ、はぁ、はぁ、はぁ、……ふじ、っえだ」
首に荒い呼吸がかかる。丹生田の心臓が、すっげえ早く打ってて、こっちも汗びっしょりになってて。
「んぅ……、ふ、……はぁ」
丹生田の重み。手を上げて触れたところを掴んだら、首根にあった顔が浮いて、離れた。
はぁはぁしてたら、髪を、額の汗を、拭われる。薄く目を開いたら、丹生田が必死な顔で見下ろしてた。
「ふじえだ……」
コッチも手を上げて、汗みずくの顔を上から下へ、手のひらでグイッと拭ってやる。したら眉とか目尻とか下がって一気に情けねえ顔になったんで、「ククッ」笑っちまった。
「……ふじえだ」
情けねえ顔のまんま必死の目で見下ろしてくるから(なにこれ超カワイイ)とか思いつつ、まだ汗が噴き出してる顔を、今度は両手でグイグイ拭う。片っぽはほっぺとか目とか持ち上がり、反対側の眉と目尻が下がって、くちもグニュッと歪んじまって、いつもキリッとな顔が変な風に歪んじまうのに、目だけは必死なまんまだから、超可愛くて超面白くて、クックックッとか笑いが漏れる。
「ふりえら」
歪んだくちのせいで、名前もちょい噛んでやがる。うあ~、超カワイイ。テンション上がって満面の笑みになってる自覚なんて無いまま、パシパシッとほっぺ叩いた。
「つかおまえ、がっつき過ぎだろ。いいけど」
言ってやると、丹生田はなぜだかホッとした顔して「……済まん」つって目を閉じて、やっぱ可愛くて、やっぱ笑っちまう。
「もういいから、……ふぅ、つか一回抜けって」
突っ込んだまんまでなにやってんだ、なんて思ってクスクス笑ったら、丹生田はハッとしたように目を見開いて「ああ」とか唸るみたいに言ってから歯を食いしばって腰引いた。ギッと眉寄せて、喉仏を上下させながらゴクッとつば飲み込んでたりして。
けどそんなん観察とかしてる場合じゃねえ。ズリッと抜ける感じに、ビクゥ、としちまって顎が上がった。
「ぅく」
ギュッと目閉じて歯を食いしばったけど、声が漏れちまった。なにげにどっと汗もかく。
う~、この気持ち良くない感じ。最初と終わってからのコレは、やっぱ慣れねえ。
「……大丈夫か」
いやいやいや、丹生田すぐ心配すっから平気な顔しねえと。すうぅ、はあぁ、すうぅ、とか深呼吸してたら、「藤枝」低い声がまた聞こえた。
「……ふぅ。……や、だいじょぶだよ」
「そうか。……藤枝」
「ん?」
「いや、ぁ……か、かぐ……」
はい? と思って目を開くと、目がきょろきょろあちこち向いて、また汗かいてるし、なぜかキョドってる。
「あかかぐ?」
しかも言ってることが意味不明なんだけど。
丹生田はまたどっと汗かいて、目を逸らしながら、ふうぅぅぅ、と深呼吸した。
「か、かぐ……」
はてな? の顔で見上げてたら、喉詰まらせたみてーに声止めて、ギュッと口閉じてからゴホンと空咳をして、ギッと睨むみたいに見下ろしてきた。
「か、家具屋っ」
「ん?」
なんでこの流れで家具屋?
「……また今度、一緒に行こう」
「うん? なんか話飛んだけど、うん。また行こうぜ」
ニカッと笑って言うと、あからさまにホッとした顔の丹生田は、また、はぁぁ、と深く息を吐いた。
「ああ。……だから……ひとりで……」
「ん? ひとり?」
マジで意味が分かんなくて聞いたら、丹生田はギュッと目を閉じた。
「……ひとりでは、行かないでくれ」
聞こえるか聞こえないか。そんな程度の超ちっさい声。
「ひとりでって、家具屋に?」
きょとん、としちまいながら聞くと、また丹生田はギュッと目を閉じた。
「……ああ」
唸るみたいな返事に、はてな? なまんまだったけど、拓海は「分かった」と声を返す。
「今度一緒に家具屋な? ソレまで一人では行かねーよ? それでいい?」
声を返すと、目を閉じたまま、丹生田は、はああぁぁぁぁ、とものすごく長く息を吐いて、身体の力を抜いた。ドサッと重みを感じ、思わず背に手を回し「おい、どしたよ」と声をかける。
「……いや。済まん」
「だから謝ンな? なんも悪いことしてねーだろーが」
「………………」
黙ったまま、顔の両側に手を突いて身を起こした。まっすぐ見下ろされて、その目にドキンとする。
ちょい細めた、すっげ優しい目だったから。
「な……ンだよ、おま……」
言いかけたら唇が降りてきてキスされて、目を閉じる。
めっちゃ優しい、労るようなキス。腕を首に回して、こっちからもキスを深くする。髪を撫でられる感触。優しいキスが終わり、目を開く前に「うえっ?」身体が浮いて焦った声出る。
「大丈夫だ」
抱き上げられてる。
そんで見下ろされてる。
めっちゃ優しい、笑顔で。
「シャワーを浴びよう」
あ~……
「ん」
やっぱ俺、丹生田のこと大好きだ。
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