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第9話

何処からか泣いている声が聞こえる。 どうして、泣いているの? 『…ん、ぉ…さん、お母さん…!』 お母さんが、どうしたの? 『狂獣に、殺されたんだ!あいつが、あいつが僕のお母さんを取ったんだ!』 あぁ、この少年を知っている。 でも名前もなんで知っているのかも分からなくて、泣いて欲しくなくて頭を撫でた。 『許さない!あいつを殺してやる…!僕から、父さんから、母さんを奪ったあいつを…!』 少年は泣きながら復讐の言葉を口に出した。 辛いね、悲しいね、 今沢山泣いて、俺が話を聞いてあげる 泣き止むまで抱き締めてあげる だから殺すなんて、言わないで 『返して!返してよ…、お母さん、うっうぅ、』 ごめんね、 君も、君のお母さんも助けてあげられなくて 俺には、力が無いから何もしてあげられない 君の悲しいこと、辛いこと、苦しいこと、全部聞いてあげる だから、憎しみに囚われないで 自由に幸せになって 君のお母さんが望んだように 『おかぁ…さん……』 少年は涙を流しながら目を閉じた。 「お願いだから、殺さないで」 その狂獣(ひと)は、俺の大切なーーーー

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