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第11話
「ん、んん…」
温まった体に、いつのまにかぐっすりと眠っていた身体はフカフカとした柔らかいものに包まれていた。
ゆっくりとカルマが目を開けると真っ黒いフワフワの毛の壁があった。
「気持ちぃ…」
スリスリと頭を擦り付け、もう一眠りしようとした時に上から獣のグルグルとした音とともに声が聞こえた。
『人間、体調はどうだ』
「うわっ!!」
思わず叫び声をあげ顔を離した。
モフモフの壁は黒い大きな獣のお腹だったのだ。
後ろに倒れそうになるところをモフッと柔らかい尻尾が抱き止める。
「だ、大丈夫…。心配してくれてありがとう」
意外と優しい人かもしれない、そう思い力が抜け微笑みを浮かべた。
『人間、俺の声が分かるのか?』
大きな獣は驚いたように目を見開いた。
「うん、分かるよ。声が分かるから話しかけたんじゃないの?」
『いや、俺の声が聞こえた奴など居ない。人間、俺が怖くないのか?』
「怖くないって言ったら嘘になるかな。でも濡れてた俺の服を乾かしてくれて俺が起きるまで温めてくれた。体調も気遣ってくれたし悪い奴じゃないんじゃないかなって俺は思うよ」
『…そうか』
尻尾で背中を押され、体をモフモフの柔らかい毛で包まれる。
『もう少し休め。日が昇ったら外に出ればいい』
そっと体を丸め、黒い獣は目を閉じる。
柔らかい毛に包まれ、久し振りの他人の体温に心が震えた。
あぁ、あったかい…
カルマも獣に続くようにゆっくりと眠りについた。
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