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第13話

一つの名前がすとんっ、と頭に落ちた。 「ノア」 獣の耳がぴく、と反応した。 「慰め。正しいヒトとして、人を導き、生命を救う者」 ふわり、とカルマと獣を温かい風が包んだ。 はっ、と意識が戻る。 一緒に考えようと言ったくせに、一人で突っ走ってしまった。 慌ててカルマは言い募る。 「あ、あのね、こんな意味があるらしくて、これは一つの例として…」 『ノア』 獣ーノアは、真っ直ぐにカルマを見て言った。 『俺はノア。狂獣のノア」 風が舞い上がり、枯れ葉がカルマとノアを包む。 「わっ」 カルマはぎゅっと目を瞑った。 「一人の人間に惚れてしまった馬鹿な獣だ」 “聲”が聞こえた。 動物のように頭に聞こえる“声”ではなくて、普通に、人の様に、耳から聞こえる“聲”が… カルマが目を開けると森の優しさと焔の温かさを纏った白髪の美しい男性がいた。 「…ノア?」 男性はフワリと微笑むとゆっくりと顔を近づけ、 カルマの唇に己のそれを重ねた。 ちゅ、と可愛らしい音を立て顔を少し離し視線を絡めた。 「俺はノア。お前の狂獣だ」

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