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第16話

ちゅ、ちゅ… ノアはカルマを腕の中に閉じ込め、唇の雨を降らせた。 布を纏わぬ引き締まった美しい身体を惜しげも無く晒しカルマに擦り寄るが、他人と裸の付き合いなどした事がないカルマからしたらとんでもない状況だった。 どど、どうしよう!? ノア、は、はだ、裸だ! 下なんて見れないし、ど、どうしよう!? 心臓が、こ、壊れそう…! これが世に言う不整脈!? ガチガチに固まった身体をぷるぷると震わせるカルマを見て、何故震えているのか分からなかったが嫌がられているわけでは無いし、顔を真っ赤にしたカルマが可愛いからとノアは気にせずぺったりと身体をくっつけた。 恥ずかしさに耐えきれず、ノアの厚い胸板を震える手で精一杯押した。 「ノ、ノア…、少し離れ…んっ!」 「静かに。何か来た」 離れようとした身体は更にぎゅっと胸に押し付けられてしまう。 ペタ、 ペタ、ペタ、、 カルマの背後から近づいて来る足音。 ノアはカルマを守らんと威嚇をするように牙を剥き、低い唸り声をあげた。 ペタ、 薄っすらと影が見えた。 「グルルルルルル…」 ペタ、、ぺタ、、、 カルマは目を凝らした。 あれは…子供? 「ガルルルルルルッ!」 ノアはカルマを素早く離し、小さな影に飛びかかった。 「ノア!襲ったらダメだ!」 カルマが止めようとするも、ノアは影の近くに降り立ち大きく腕を振り上げた。 ノアの腕は、真っ黒な獣の腕の様に大きくなり鋭い爪が並んでいた。 子供のような小さな影は避ける様子はなく、カルマに向かって歩いている。 その小さき影は、両手一杯に白い毛玉を持ち、側頭部にくるんと巻いた角のある羊獣人の子供だった。 このままじゃ、あの子が死んでしまうー カルマの身体を、言い知れぬ力が巡り毛が逆立った。 『止まれ!!』 カルマの瞳が金色に輝く。 唇から発した言の葉は洞窟で反響し、森の中を駆け抜け、森全体の動きが止まった。 それは、一瞬の出来事だった。 だが、カルマの持つ力に全ての動物が支配され動きが一瞬、止まったのだ。 ノアの動きが止まったことに安堵し、強張った体からすっと力が抜ける。 羊の子供はぺしゃっと転んでしまった。 「大丈夫!?」 カルマは慌てて子供に近寄った。 「今の…」 ずるずると壁を伝い地面に座り込み、ノアは髪をくしゃりと混ぜた。 さっきのあれは、一体…… カルマの瞳は、漆黒に戻っていた。

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