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第17話
「大丈夫!?」
カルマ急いで転んでしまった羊の子を抱き上げ、声を掛けた。
「う…?」
羊の子はゆっくりと目を開け3度ほど瞬きすると、カルマを怯えた表情で見た。
「だれ…?ここ、どこ?ぼく、ぼく…」
羊の子は大きな瞳にうるうると涙を溜めた。
「おねーさんが、きょうじゅうなの??ぼく、たべるの??やだ、はなして!やだ、やだやだ、怖いよぉ…」
とうとう泣き出してしまった子供はイヤイヤと首を振りながら必死にカルマを押し、少しでも離れようとする。
「大丈夫、ここに君を食べようとする人なんて居ないよ。大丈夫。僕の目を見て?」
膝の上から子供を落とさないようにしながらそっと声をかける。
恐る恐る、子供はカルマを見た。
「ほんと…?」
「本当」
「ぼく、たべない…?」
「こんなに可愛い子を、食べたりなんかしないよ」
「うっ、うぅ…うえぇぇえええん」
ようやく恐怖心が無くなったのか、大声を上げ泣き出した。
「怖かったね、頑張ったね。もう大丈夫だからね」
えぐえぐ、と泣き続ける子どもの背中をぽんぽんと優しく叩きながらカルマはそっと抱きしめた。
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