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第18話

すんすん、と鼻をすする音がする。 一通り泣き、子供も少し落ち着いたみたいだ。 「僕はカルマ。君のお名前を教えてくれるかな?」 「ぼく、ココ」 「そっか、初めましてココ。お名前を教えてくれてありがとう。さっき転んだ時に、どこか痛いところ無いかな?」 ココはモジモジとすると、右の膝頭を見せた。 「あらら、擦りむいちゃってるね。痛くない?」 ふるふると首を振られる。 でもさっき泣き止んだばかりの瞳はウルウルとしていた。 「そっか、痛いの我慢できて偉いね。手当したいけど…。山にある、薬草とかって知ってるかな?」 洞窟を出たら山がある。 山があるなら薬草もあるだろう、そんな考えだった。 「うん!あるの!でも、やまにはきょうじゅうがあるからでたらいけませんって、いわれてるの…。ここは、かべのなか?」 「壁…?」 ぱっとノアを見ると静かに首を振った。 「んー、壁の中じゃ無いかな。ここは森の中にある洞窟だよ」 「え…ど、どうしよう!!おねーちゃんも、たべられちゃうよ!」 んん、おにーさんなんだけどなと思いつつ穏やかに話しかける。 「それは、狂獣にかな?」 「う、うん…」 「ココは、見たことある?」 「ないよ…?」 「そっか。僕ね狂獣とお友達だけど、食べられたことないよ。彼は凄く優しい人だから、昔は食べたかも知れないけど、今は食べないんだ。」 「う、うそ!!」 「本当だよ。一晩一緒に寝た事もある」 「そ、そうなの…?」 「うん、そうだよ。僕の元気がなかった時も、森の果物をたっくさん採って来てくれて、フワッフワの毛皮で暖めてくれたんだよ」 「…でも、おねーちゃんは食べなくても、ぼくはたべるかもしれないよ?」 「食べないよ。ね、ノア?」 「ああ。俺は獣人は喰わん」 「ひっ!?」 びくっと震えると、ココはカルマにぎゅっと抱き着いた。 「うそ、うそ、いるの??」 「うん、居るよ。ノア、出て来てくれる?」 暗闇から、一匹の狼が現れた。 人型では無いし、最初みたいに大きくも無い。 「ノア、小さくなれたの?」 「いや、俺も今さっき知った」 ノアはカルマに近寄ると、頭をスリスリとカルマに擦り付けた。 人型の裸体で出てこなくて良かった。 カルマは心の底からそう思った。

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