18 / 22
第18話
すんすん、と鼻をすする音がする。
一通り泣き、子供も少し落ち着いたみたいだ。
「僕はカルマ。君のお名前を教えてくれるかな?」
「ぼく、ココ」
「そっか、初めましてココ。お名前を教えてくれてありがとう。さっき転んだ時に、どこか痛いところ無いかな?」
ココはモジモジとすると、右の膝頭を見せた。
「あらら、擦りむいちゃってるね。痛くない?」
ふるふると首を振られる。
でもさっき泣き止んだばかりの瞳はウルウルとしていた。
「そっか、痛いの我慢できて偉いね。手当したいけど…。山にある、薬草とかって知ってるかな?」
洞窟を出たら山がある。
山があるなら薬草もあるだろう、そんな考えだった。
「うん!あるの!でも、やまにはきょうじゅうがあるからでたらいけませんって、いわれてるの…。ここは、かべのなか?」
「壁…?」
ぱっとノアを見ると静かに首を振った。
「んー、壁の中じゃ無いかな。ここは森の中にある洞窟だよ」
「え…ど、どうしよう!!おねーちゃんも、たべられちゃうよ!」
んん、おにーさんなんだけどなと思いつつ穏やかに話しかける。
「それは、狂獣にかな?」
「う、うん…」
「ココは、見たことある?」
「ないよ…?」
「そっか。僕ね狂獣とお友達だけど、食べられたことないよ。彼は凄く優しい人だから、昔は食べたかも知れないけど、今は食べないんだ。」
「う、うそ!!」
「本当だよ。一晩一緒に寝た事もある」
「そ、そうなの…?」
「うん、そうだよ。僕の元気がなかった時も、森の果物をたっくさん採って来てくれて、フワッフワの毛皮で暖めてくれたんだよ」
「…でも、おねーちゃんは食べなくても、ぼくはたべるかもしれないよ?」
「食べないよ。ね、ノア?」
「ああ。俺は獣人は喰わん」
「ひっ!?」
びくっと震えると、ココはカルマにぎゅっと抱き着いた。
「うそ、うそ、いるの??」
「うん、居るよ。ノア、出て来てくれる?」
暗闇から、一匹の狼が現れた。
人型では無いし、最初みたいに大きくも無い。
「ノア、小さくなれたの?」
「いや、俺も今さっき知った」
ノアはカルマに近寄ると、頭をスリスリとカルマに擦り付けた。
人型の裸体で出てこなくて良かった。
カルマは心の底からそう思った。
ともだちにシェアしよう!