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第19話
「そこの毛玉、どうしたんだ?」
ノアはカルマに擦り寄りながら言った。
「毛玉…?」
ノアが歩いてきた方に白い塊が落ちている。
「あっ…」
ココは立ち上がろうとする。
「待って、足を怪我してるから僕が…」
「いや、俺が取ろう」
ノアが前足を上げ、くいっくいっと動かすと毛玉が空中に浮いた。
フワフワと上下しながらココの膝の上に落ちる。
「これ、ココのパパがママのお薬のためにがんばってつくった毛なの」
ココは毛玉をもふもふと撫でた。
「お母さん、病気なの?」
「ママ、ずっとまえからげんきないの。お薬、森にしかないから、おかねがなくてかえないの…」
ココはポロポロと涙をこぼす。
「ママ…」
「ココ、それを俺にくれないか?」
「え…」
「ノア!?」
「その代わり、森の薬草を摘んで、魔物を何匹か街に持って行こう。魔物は高く売れるだろう?」
「うん…」
「摘んだ薬草で薬を作ってもらって、魔物を打った金で薬を買えばいい。どうだ?」
「…でも、いいの?」
「俺は今服が必要なんだ。ココは毛糸で服を作れるか?」
「ココ、へたくそ…。いっつもおこられる」
「それでも良いさ。俺の為に、作ってくれるか?」
「うん!」
ココはカルマに背を向けて膝の上に座ると、毛糸を撫で始めた。
「おおかみさんにあうような、かっこいいおようふく…」
ふわふわと暖かい風が流れる。
「…凄い」
カルマはココの手の中で徐々に形が変わる毛糸に目が奪われた。
「ん、んんんん、んんぅ…」
毛糸が二つに分かれ、服の形が出来上がっていく。
「ん〜!できたぁ!」
ぽんっと弾ける音がすると、白いセーターと下着、長いズボンが出来上がっていた。
「ココ凄い!」
カルマはぎゅーっとココを抱きしめた。
「ぼく、こんなにじょうずにできたのはじめて!うれしい!」
ココは嬉しそうににっこりと笑う。
2人が喜んで抱き合っているうちにノアはささっと服を着た。
ココの作った服は肌触りもよく、暖かく、着心地のいい服だった。
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