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たまには

*****  毎日決まった時間に起きて、仕事に行って、帰って、飯食って風呂に入って、大体同じ時刻に就寝する。  そうして何度も繰り返していけば、俺はいつか血の通わないロボットにでもなってしまうんじゃないかと、ある日、ふと妙な焦燥感に襲われた。  ……そんなのは、嫌だ。  今後の自分を考えて、漠然と不安に思っていた時、残業終わりにちょうど同僚から飲みに誘われて、俺は嬉々として話に乗っかった。  久しぶりに、酒を飲みたくなったのだ。  人間らしいことをしたくなって、溜まった疲れを誤魔化したくなった。 ──しかし、それがいけなかったんだ。  アルコールを口にするのは久々で、思ったよりも多く飲んだらしい。  それはもう、勘定時に悲鳴をあげるくらいに。  ふらふらで酩酊している俺を、同僚は親切心で送ると言ってくれた。  だが、その有り難いお言葉は、酔っぱらい特有の変な自信とポジティブさが勝ったせいで、へらへらと笑いながら断わってしまった。  千鳥足とはまさにこのことだと言わんばかりの足取りで電車に乗り、ぼやけた思考回路のまま、帰巣本能でなんとか自宅へと向かう。  だけど自宅の最寄り駅をおりてから、俺はふと気が変わって。  いつもの通勤路ではなく、全く違う通りから遠回りして帰ってみようと思い立った。  なんだか今日は、いつもととことん違うことをしたい気分で。  雲の上を歩いているような、ふわふわした覚束ない足取りで、なるべく知らない道を自ら選び、通った。

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