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迷子です

 ───そして、今現在。  俺は、路地裏にて迷子中。  ……ここ、どこ。  日頃の仕事の疲れもあって、もはや体力は限界。  小ぢんまりとした居酒屋やスナックがある路地の端で、俺はとうとう地面に座り込んでしまった。  意識が、ぼんやり、朧気で。  車一台は通れそうな、薄暗い路地にある、居酒屋の赤い提灯が暗闇に浮かんで目立っていたから、無心でぼうっと眺める。  眠いなあ……、寝たいなあ。  いいかな……、ちょっとくらい。  そう、5分、5分だけなら……、ね。  強烈な眠気と、身体の倦怠感。  まぶたが重くて、意識して無理やり開けないと、勝手に閉じていく。  そうこうしている間にも、路地裏で胡座をかく俺の頭は、こくりこくりと揺れつつあって。  もうちょっとで、気持ちいい眠りにつける。そう、思っていた時だ。 「お兄さん、そんなとこで寝たら、風邪引くよ?」  俺よりも少し高い、テノール。 「……ふ、ぅん?」 「起こしてごめんね、あんまりタイプだったから、つい」 「……たい、ぷ、」  寝言のように、口からはごにょごにょと意味のない言葉が出るが、自分でももう、よく分からない。  とりあえず俺に話しかけているのだけは理解したから、声の方向に薄目を開けて、顔を上げる。  そこには、俺に向かって優しげな表情で屈みこむ、若い男がいた。  なんで今まで気付かなかったんだってくらい近くにいるそいつに、俺は首を傾げる。 「……どちらさま、れすか?」

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