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こわいの

「やっ、やぁだあ……っ! おれ、きみとえっちしたくないっ、おれ、ほもじゃないもん……!」 「えっ、ほんとに初物だったんですか? それは楽しみだなあ」  にこにこと浮かぶ笑みは変わらず、彼は俺をどこかに連れて行こうと歩き出す。  さすがに怖くなって、絡んだ腕を取り払い、距離をとろうと男の肩を押した。  けど、未だ泥酔状態から抜け出せていないからか、押した力に、自分が耐えきれなくて。 「う、わぁ……っ?!」  どしゃ、と自らが尻餅をつく。  もう……、情けない。  尻が痛くて、男が怖くて、涙腺がゆるむ。 「大丈夫ですか?」  俺がずっこけたことに驚いた顔をした彼は、半ば呆れた表情でもう一度屈む。  そうして差し出された手を無視し、俺は涙のたまった目を瞑り、拒絶するように首をふるふると左右に振った。  小石が食い込んだ手のひらを、ぎゅうっと握る。 「や……、やだぁ……っ、いきたくない、サクくんっ、こわいからぁ、おれ、お家に、かえりたいお……っ」 「手、怪我したんですか?」  ぎゅっと握って拳にしていた手に気付かれ、あたたかくてさらさらした彼の手に、そっと掴まれる。  隙間から指を差し入れて、蕾みたいにゆっくりと開かれる。    彼が砂利を払い落とすと、小石のせいででこぼこになった手のひらには、ほんの少しだけ血が滲んでいた。 「だいじょ、ぶ……、別に、いたくないから」 「でも、一応洗ったほうが良さそうですね」 「や、ゃ……いや……、いやだお、もうかえりたいの、ごめんなさい……っ」  頭の片隅で警鐘が鳴るが、俺はもう自分では立てないし、足許が覚束なくて、動けない。

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