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ぐるぐる迷う

「……」 「迷ってますか?」 「……ちょっと、だけ」 「あなたが本気で嫌だと思うなら、無理強いはしませんよ」  そう言って、頬にあった彼の手が、すっと離れていく。  ……勿体ない、と思った。  ここで彼を拒絶したら、もう二度と会えないかも知れない。  心のなかではいつも非日常を望んでいた俺には、彼の存在は稀少であり、捨てがたいと思った。 「や、だぁ、サクくん……っ」  だが、そっちの道に走るのは、やはり抵抗がある。  別に彼に相手をしてもらわなくても、自分で趣味を見つけたり、もっと他に方法があるんじゃないか、とか。  そうは思ったが、そのときの俺は何故か、この生き地獄みたいな生活から救いだしてくれるのは彼しかいないと、思いこんで。  自分でももう、どうしていいか分からず、離れた彼の腕を掴み、うつ向く。 「金太郎さん?」 「いつもと違うこと、したい……、で、も……っ」  同じことをただ無機質に繰り返すだけの、この冷然とした抑揚のない毎日から、抜け出したい。  スリリングなことを、してみたい。  ……だけど、怖い。  いいのだろうか。  俺は、こんな怪しすぎるやつの誘いに乗っても。

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