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第11話

俺や自分から出た分泌物でどろどろになった命を見て、流石にやり過ぎたかと反省する。 ガクガクと足を震わせながら気絶している命に俺はえも言われぬ満足感に額に張り付いた髪をどけてキスをしてやった。 枕元の時計を見るとすっかり夕飯の時間も過ぎ、深夜と呼ぶに等しい時間になっていた。 俺は流石に空腹を覚え食事を取ることにした。 その前に命にずっぷり刺さったままになっている玩具を引き抜いてやる。 後ろの玩具を抜いても孔の縁が小刻みに震えているし、前の玩具は抜いた瞬間透明な液体が飛び出してきた。 そのまま拘束を解いてやり濡れたタオルで命を清める。 命をリビングに一旦運んでベットのシーツを変えた。 命をキレイなベッドに戻して俺はキッチンへ向かう。 「命はスープかな」 冷蔵庫をのぞきながら俺は誰に話すわけでもないがボソッと呟く。 一応独り暮しをはじめてから少しは自炊をするようになった。 実家の手伝いで接待が多かった時期もあるが、基本は家での仕事が多くコンビニ弁当も早々に飽きてしまった。 自分は何を食べようかと冷蔵庫の中身で作れるものを考える。 手早く自分の分を調理しつつ隣のコンロでは命の分を同時進行で調理していく。 一口大に切ったジャガイモとニンジン、薄くスライスした玉ねぎを入れて旨味を出すためにベーコンを細かく切って入れた。 「命起きれるか?」 「むぅ?」 俺自身は適当に食事を済ますと鍋の火を止めて少し大きめのマグカップに注いでテーブルの上にセッティングしておく。 悪いと思いながら命を起こしに行くと、命はまだ寝惚けているのかぼんやりと目を開けて目を擦っている。 「帰ってきてからお菓子しか食べてないだろ。スープ位なら飲めるか?」 「んー?」 まだ覚醒しきっていないのか、枕に乗っている頭がかしげられる。 これでは埒があかないと命を抱き上げてリビングへ連れていく。 「ほら…」 スープをすくってやって、口許までスプーンを持っていってやる。 うっすら開いている口にスープを少し強引に流し込んでやると小さく喉が上下に動く。 それを確認してから少し崩れ気味の具材を口に入れるともぐもぐと微かに口が動いている。 「んー」 スープを半分ほど食べさせたところで命が首をイヤイヤと振るので腹がふくれたのかもしれない。 回りに子供が居ないこともあるし、一般的な事は分からないが随分と食べる量が少ない気がする。 疲れているのもあるのかもしれないので、容器をテーブルの上に置いて再びうとうとしだした命をベットに寝かせてやった。 「はぁ…仕事でもするか」 壁にかかっている時計を見ると日付はすっかり変わってしまっていた。 俺はこのままでは寝れないとふんで、仕事をしようとノートパソコンを引っ張り出しメールをチェックする。 RRRR~♪ 俺がノートパソコンを操作していると、深夜にも関わらずスマホの呼び出し音が鳴る。 「はい」 『よぉ。プレゼントは受け取ってくれたか?』 個人的な番号を知っているものは限られているので画面も見ずに電話を取った。 声の主は案の定クラブだった。 「あぁ。礼を言うのが遅れて悪かったな…」 『気にするな。お楽しみだったって事だろ』 電話の向こうからはクスクスと言う笑い声が聞こえる。 『こちらこそ悪かったな。俺が知ったのも最近だったんだ。知ってても、仕事柄話すこともできなかったんだ』 「仕方ないさ。お互いこんな仕事してるんだから…」 命を抱き潰し、少し落ち着いていた俺はクラブの言葉に怒りも沸かなかった。 「それよりどうした?こんな時間に…」 『あぁ…ダイヤさんにお前のところのお姫様の話を聞いてな』 「話ってどんな…」 『お前のお姫様が代わりに金を返済した人物だ』 クラブの話では、俺が巽のところで渡された封筒に入っていた契約書にあった“花吹玲”という人物は命が相当なついてたらしい。 店を出たら俺と“花吹玲”に真っ先に会いに行くと言っていたらしい。 『お前のお姫様も帰ってきたなら、また売上げあがるよな?楽しみにしてるからな』 「お前もしっかりしてんな…」 『前に言ってた、お前のショップオリジナルのレーベルの話考えておけよ』 「あぁ…落ち着いたら連絡するわ。わざわざ悪かったな」 電話を切ると大きな溜め息が出た。 確かに先程は嫉妬のせいで命を抱き潰してしまったが罪悪感が沸かないわけではなかった。 じっくり見たわけではないが、クラブが持ってきたと言うキャリーバックにはなかなかの物が入っていた。 入っていたバックから考えると、俺にと言うよりは命へのプレゼントなのかと思ってしまう。 「はぁ。寝るか…」 クラブとの電話のせいでどっと疲れが噴出する。 注文のメールも沢山来ていないので明日にしてしまおうとノートパソコンの電源を切った。 「うにゅ…」 ベットでヨダレを垂らして安心しきった顔で眠る命を見て、胸がほわっと温かくなる。 ヨダレを拭ってやると、幸せな夢でも見ているのか笑顔で寝ている。 俺はそれに安心して命を抱いて眠りに着いた。 ピンポーン♪ 「パパ…パパ!?」 「んー?」 「パパ!何かなってるよ!」 「はっ!?」 命に揺り起こされ、俺は慌てて玄関に向かった。 スウエット姿で玄関を開けるといつもの宅配業者のおじさんがにっこりとした顔で待っていた。 「美世さんおはようございます!」 「はぁ…おはようございます」 仕事柄宅配業者の配達員とは顔見知りになる。 今日も朝から爽やかな笑顔で配達伝票を差し出してくる。 それに判子を押すと、大きな声でありがとうございましたーと行って帰っていく。 俺はそれをまだ半分寝ている頭で見送る。 「パパどうしたの?」 命が俺を追って玄関までやってくる。 この家には子供用の服など無いので昨日のあられもない姿のままだ。 身体中に色濃い情事の痕と、気だるそうな雰囲気にごくんと喉がなってしまう。 「荷物?今日は入荷日じゃないはずだが…」 俺は荷物を見て、気を反らす。 今日は商品の入荷日ではないはずなのに何処からの荷物だろうか。 送り先は同上となっており少し怪しい。 しかし、組には今のところ抗争などはないので危険物ではないはずだ。 俺はリビングへ向かって箱を開ける。 命は服を着ていないのも気にならないのか俺の膝の上に座っている。 「あっ!ワンチャン」 箱の中身は洋服と犬のぬいぐるみがひとつ入っていた。 命はそのぬいぐるみを見た瞬間、抱き上げてぎゅと抱き締める。 「これお店でぼくと一緒にいてくれたお友だちなの」 「そうか…良かったな」 その言葉で送り主が、巽の店だと言うことが分かった。 とりあえず命をこのままにしておくわけにはいかないので、箱に入っていた服を着せた。 「れいちゃんのおうちにはいつ行けるの?」 「れいちゃん?」 俺は昨日の夜にかかってきた電話である程度の事情は聞いていたが、詳しいことが分からないので命に問いかける。 「れいちゃんはママなの!ミコミコのママみたいにお料理が上手で、やさしくて、あったかくて、お花みたいな匂いがするの!」 「そうか…」 「お仕事が終わると、パパみたいにぎゅってしてくれるの…こわいれいちゃんはにがてだけど、れいちゃん大好き!」 子供特有の要領を得ない話に、これはゆっくりきいてやる必要がありそうだと思った。 膝に座っている命と向い合わせで座ってゆっくりと質問をしていくことにした。 知らない命を知ることは怖くもあり、俺には今一番大切なことだった。

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