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正月はお肉4

ジュゥー 部屋にはニンニクと肉の焼ける香ばしい匂いがしてくる。 「れいちゃんいいにおい~」 「もうちょっとよ」 踏み台の上に乗って、キッチンのカウンター越しに命と玲ちゃんがおしゃべりしているのが見える。 命の着物は今日はうぐいす色に鳥が飛んでいる図柄だ。 「可愛い給仕さんと料理人さんでお正月早々目の保養ですねー」 「ほら翔くんどう?」 「凄い呑みやすいですね!」 圭介は二人を見ながらチビチビと呑んでいる。 俺は翔にお酒を勧めてにっこり微笑む。 呑みやすい日本酒に翔も少し興奮気味だ。 「おにくやけたよ~」 命が盆に皿を乗せてやって来た。 香ばしい香りに食欲がそそられる。 「パパさんは食べすぎちゅういよ」 「はーい」 玲ちゃんが残りの皿を持ってやって来ると注意された。 太っていた頃を命に聞いたのだろう。 最近太らないように玲ちゃんが目を光らせているのか、注意されるようになった。 それを聞いていた周りからは笑いがおこる。 「え?それちょっとでかくないか?」 コトンと机の上に置いた皿を見て翔が驚いている。 それもそのはずだ。 玲ちゃんの目の前のステーキだけ他の誰より肉が大きかったのだから。 命の席であろう所に置かれた皿にはご丁寧にサイコロ状にされた肉が乗っていたが、それと比較するとさらに大きく見えた。 「ん?しょうちゃんも1ポンドがよかった?」 「いやそうじゃなくて、お前普段そんなに食べないのに…そんなに食べれるのかよ」 確かに命ほどの極端な少食ではないものの、玲ちゃんもなかなか少食なのだ。 そんな玲ちゃんが大きなステーキ肉を食べるのが信じられないのだろう。 「れいアメリカジンだからおにくはたくさんたべるよ!」 「え?いや…」 玲ちゃんが何でも無い事のように言うので、流石に翔も怯んで戸惑っている。 「玲の肉好きは昔からだよな」 「うん」 横に座った玲ちゃんの肩を抱く圭介は懐かしそうにステーキ肉を眺めた。 もう翔の顔は呆れに変わっている。 「じゃあ次は焼肉だね」 「やきにくもすき!」 圭介の言葉に俺が反応すると、玲ちゃんが嬉しそうに手をあげる。 俺は皆が席に着いて楽しげにしているのを見届けると封筒を取り出す。 「命には渡したけど、俺からのお年玉だよ」 「え?ありがとうございます」 「れいにも?パパさんありがとう♪」 横に居る翔に封筒を渡すとびっくりした顔をするし、向かいに座っている玲ちゃんにも渡すと嬉しそうにお礼を言ってくる。 反応はそれぞれ違うが面白い。 「若旦那ありがとうございます。これは少ないですけど、命ちゃんに…」 「ぼくにも?けいちゃんありがとう」 圭介も慌てて小さな袋を取り出すと命に渡している。 命は一瞬きょとんとしたが、それを受け取ってにっこり微笑んだ。 「気を使わなくていいのに…さぁ、玲ちゃんが作ってくれたご飯たべよう!」 「そうですね」 俺達は気を取り直して手を合わせた。 手をつけた料理は相変わらず美味しく、大人のステーキにはワサビや抹茶塩などの薬味の小皿がついていてさっぱりと食べられる工夫がしてあった。 しかも俺の皿は少し野菜が多目についていて細かな気遣いに舌を巻くほどだった。 命は玲ちゃんに分からない様に俺の皿に肉をちょこちょこ移していたので、俺はそれを返していくという単純作業をしつつ肉を食べていく。 「翔くん大丈夫?」 「はひ!だいじょうぶれす!」 「れいちゃんもだいじょうぶ?」 「うふふ。たのしいねぇみことちゃん!」 こんな細い玲ちゃんのどこに入っていったのかと不思議になるほどペロリとステーキをたいらげた玲ちゃんが間違えて隣の圭介の酒の入った湯飲みの中身を飲んでしまった。 そこから玲ちゃんは楽しそうにうふふと笑って命がのんびり食事をしているのを手伝ったり、口の端についたソースなどを舐め取ったりと激しいスキンシップがはじまった。 いつもならそんな二人を止める翔も思いの外酒がすすんだのか目がとろんとして頬も薄紅色になっている。 「玲~?命ちゃんばっかりじゃなくて、俺もかまってくれよ~」 いや…俺と命以外は皆酔ってしまったようだ。 圭介も甘えるように命の世話を焼いている玲ちゃんにすり寄っている。 一升瓶の中身を見ると、ほとんど空の状態になっていた。 「命?玲ちゃんを寝室に案内してあげて」 俺は少し体を屈めて命に耳打ちするとコクンと頷いて使っていたフォークを机の上に置いた。 「れいちゃんベット行こう?」 「んー?みことちゃんといっしょ?」 圭介の事は気がついているのか、命と顔を近づけたまま玲ちゃんは首をかしげている。 「俺も忘れちゃこまるな~?」 「きゃっ!」 そんな玲ちゃんを後ろから抱き締めて着物の上からお尻を触っている圭介。 玲ちゃんも満更ではないのか最初は驚いた様子だったが、にこにことしていた。 今日は元々泊まってもらうつもりだったので命は玲ちゃんの手を引いてゲストルームに消えていく。 振り袖の長い袖が二人が動く度にゆらゆら揺れていた。 「翔くんはもう少し待っててね」 「はひ~」 軽く羽織だけでも脱がせて肩を貸してソファーに座らせてやる。 羽織は和室に汗を飛ばす為に吊るしておいた。 「おーい。脱がせ方わかっ…」 しばらくしてからゲストルームを覗くと、圭介がオロオロとしていた。 ベットの上には襦袢姿の玲ちゃんと振り袖姿の命が座っていた。 玲ちゃんの身体はブルブルと震え、珍しく命が玲ちゃんを抱き締めていた。 「どうしたの?」 「ひっ!!」 俺が近付くと玲ちゃんが怯えたように身体を丸める。 困った俺は命の顔をじっと見た。 「れいちゃん?」 「えっ…みことちゃ…んっ…」 命は頷いたかと思うと玲ちゃんの顔を覗きこんで唇を寄せる。 玲ちゃんに舌を滑り込ませ、そのあとくちゅくちゅと水音がする。 「ふふふ。れいちゃんおにくの味だ」 「みことちゃんはにんじんのあじね」 ふふふと二人が笑いあったので、俺達はほっと息を吐く。 「れいちゃんだいじょうぶ。あの時と違って、おそで長いしけいちゃんがぬがせてくれるよ?」 「けいちゃん?」 命は玲ちゃんの長襦袢を持ち上げ袖を持上げひらひらさせると、圭介の方を指差した。 すると玲ちゃんはゆっくりと圭介を目で捕らえて、はっとした顔をする。 「ね?だからだいじょうぶだよ。ぼくもう行くね?おやすみ」 「うん…みことちゃんごめんね?」 震えが完全に止まった玲ちゃんから命が身体を離して圭介と身体を入れ換えた。 俺のもとに来た命は玲ちゃんに手を振って部屋を出ていってしまう。 「じゃあ…おやすみ」 「若旦那スミマセン」 俺も命に続いて部屋を出ると、扉を閉める瞬間に圭介の謝罪の声が聞こえた。 俺は気にするなと言う意味をこめて、俺も手を振ってやった。

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