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暗闇の記憶

夜中にふと目が覚めて横を見ると命が居なくなっていた。 俺は胸騒ぎがしてベットから抜け出すと寝室を後にする。 家の中はしんっと静まり返り、真っ暗な廊下には俺の歩く足音だけが木霊している。 「ぐすっ…ぐすっ」 トイレやバスルームなど水回りが集中しているエリアで鼻をすする様な水音が聞こえる。 「命どうした?」 「パパ…」 音の発信源に足を進めると案の定、命がへたりこんで泣いていた。 ぴちゃん 足に水の気配を感じて俺は足を止める。 「ぐすっ…パパ…ごめんなさい…ぼく…」 命の下には水溜まりができており、トイレに間に合わず途方に暮れてへたりこんでしまっていたのだろう。 「間に合わなかったのか…しょうがないよ。ほらバスルームに行こう?」 「ごめんなさい…」 俺はしょんぼりしている命の手を引いてバスルームに連れて行ってやる。 そのまま命をバスルームに置いて俺は廊下の後片付けをする。 命は足が悪い。 俺と引き離された後、逃走防止に靭帯を切断されたらしく、靭帯が繋がった今でも違和感があるらしい。 歩き始めはぎこちないし長時間は歩けない。 そんなこともあって、今回は頑張ってトイレに行こうとしたのだが間に合わなかったのだろう。 それは仕方がないので怒る気もないが、しょんぼりしている命を慰めてやらねば落ち込んでしまうだろう。 「命もういいか?」 「うん」 バスルームを覗くと新しい服を着て洗濯機にタオルを放り込んでいた。 俺も着ていたスウェットを脱いで洗濯機に放り込んでスイッチを押した。 「パパ…おもらししてごめんなさい」 命を抱き上げ寝室に戻る道すがら命が涙声で謝罪をしてくる。 俺は気にするなとでも言うように頭を撫でてやると命は安堵のため息をついた。 そう…この時は単純に命はトイレに間に合わなかったんだと思った。 + 組の仕事が急に入って、命の友達の玲ちゃんのうちに連れていく時間もなくて仕方なく命を置いて仕事に出掛けた。 帰りが深夜になってしまい玄関を開けると真っ暗な廊下に命がぷるぷると震えながら立っていた。 「命?」 「ひっ!あ…パパ…」 声をかけた瞬間に、命は面白いように肩が跳ねて震えが大きくなる。 しかし、次の瞬間震えがピタリと止んで命の足元に小さな水溜まりができた。 ぴちょん、ぴちょんと水分が滴り落ちる音がする。 廊下の電気をつけると、案の定命の下には水溜まりと涙目で立っている命が見えた。 俺は粗相をした命に対してではなく、命の過去に何かあったことを察して強い嫉妬心に火がついた。 「命…風呂に入ったらベットに来ること」 「あう…は…い」 俺はさっと廊下を拭いて後片付けをすると、着ていたスーツを脱いでベットに腰掛けて命が帰ってくるのを待った。 カチャッ しばらくして、命が扉を開けておずおずと部屋に入ってくる。 粗相をしたことを怒っていると思っているのか眉毛が絵で描いたようにハの字に下がってしまっている。 「パ…」 「命?俺が何を言いたいか分かる?」 命が口を開いた瞬間に、言葉にかぶせる様に命を見る。 命は恐怖なのか小さく震えてしまっている。 「はぁー」 命の様子に俺は大きく溜め息を吐くと、命の肩がびくっと跳ねる。 命には申し訳ないが俺の怒りの沸点は他の人間には分かりにくいらしい。 「ほらおいで」 俺が手を広げてやると、おずおずと近付いてくる。 そのまま腕を取って命を腕の中に閉じ込める。 「パパ…ごめんなさい…ごめんなさい」 命の声がどんどん震えだし、シャツの胸部分が冷たくなってくる。 背中をさすってやりながら泣き止むのを待った。 「はぁー。別に漏らしたことを怒ってるわけじゃないんだよ」 なかなか泣き止まない命に、俺は再び大きな溜め息をつく。 俺の言葉を聞いた命はきょとんとした顔をして顔を上げた。 まだ目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ち、目の端が紅く染まっていた。 「命は何かが原因でトイレに入れなかったんだろ?」 「あ…」 命は一瞬ギクリと身体を強張らせたのを俺は見逃さなかった。 俺はそのまま命の身体をベットに横たえ俺も横になった。 「聞いてやりたいけど、今日は無理だわ。兄さんにこき使われてヘトヘトだ」 次男に地上げの手伝いと称して駆り出されて精神的にも肉体的にもヘトヘトだった。 一応呼び出された後は酒やら何やらを押し付けられるのだが、疲れ過ぎていてシーマの中に置いてきてしまったほどだ。 目を擦り、あくびをして命の頭に顔を埋めるとシャンプーの華やかな香りがする。 命は安堵したのか身体の力を抜いて俺の胸に顔を埋めている。 「命の髪の毛はふわふわだな…」 俺が微睡みの中命の髪に指を通すが命からは返事ではなく、すぅと寝息が聞こえてきた。 聞きたいことは山ほどあるが俺は眠気には勝てず瞼を閉じ、夢の世界へと旅立った。 ++ ぼくは暗闇が怖い。 正確に言うと、暗闇のトイレが怖い。 パパから引き離された後、色々な趣味の人間の元に居たがこの恐怖もその時のものだ。 「ヒヒヒ。こんなに小さな子供は初めてだな…」 ぼくは全裸のままで口には口枷がされており腕も後ろ手で固定されてしまっている。 ふぅふぅと息をするだけでも身体の中を渦巻く熱で気が狂いそうだった。 「なんだ…お前も満更でもないのか」 「ふんぅぅぅ!!」 目の前の男に引き渡される前に、前の“飼い主”に敏感な部分に塗られた興奮剤入りのローションのせいで時間がたつにつれてぼくの意思とは関係なく息が上がる。 男はぼくの小さな性器が痛いくらいに反応しているのを言っているのだろう。 前の“飼い主”に散々弄ばれてからこの男の家に連れてこられローションは乾いてしまったが、効果は紛うことなくぼくの身体を蝕んでいた。 ぷちゅ、ぷちゅ、ぷちゅ 「んんんっ!!」 「ヒヒヒ。小さくても気持ち良いのか」 男が指を輪にしてぼくのモノを擦ると、その直接的な刺激に腰が浮いてしまう。 男の独特の引きつった笑い方が怖い。 「先っぽからどんどんあふれてきて、君はいやらしいね」 「んー!んー!」 ぼくは首を横に振って拒否の意思を示すが、男はやめてくれる気はまったくない。 先端からあふれてくる液体をくるくると先端にまぶすように広げて行き、人差し指と親指でくびれの部分や割れ目の部分をなぞっていく。 「あれ?お尻も開発済み?小さいのにおませさんなんだね」 「…っ!!!」 折りたたむ様に拘束されていた足を取られ、男の目の前に下半身をさらけ出すように膝に乗せられ身体を逆さにされる。 ぼくの下半身越しに男の血走った目が見えて、ぼくは恐怖で小さく暴れるががっちり腰を抱きかかえられてしまっているし、身体が反転させられているせいで満足に抵抗できていない。 ぬちゅ 男の筋張った指が侵入してきた事で一瞬息が止まる。 「あーあ。吸い付いてきてスケベなメス穴だね。ここ気持ちいいの?」 「んう!んん!んー」 無遠慮にお腹の中を探る指の動きに、快楽に弱く躾けられている身体はぼくの意思に反して男の指を懸命に絡め取り媚を売る。 一番気持ちのいい場所を早々に見つけられ、そこを重点的に攻め立てられる。 中がきゅうきゅうと男の指を締め付け、小刻みに痙攣しはじめる。 「ん!ん!んむー」 「何?逝っちゃうの?中ビクビクしてるよ?でも、だめー」 「んっ、んっ」 ちゅぽんと間抜けな音をたてて指が引き抜かれる。 目の前のぼくのモノはパンパンに腫れて、先端の鈴口はぱくぱくとしているのにあと少しのところでその刺激はぴたりと止んでしまったことにぼくからは不満げな声が出てしまった。 「ヒヒヒ。小さな玉もヒクヒクさせて期待した?」 「んー」 玉を潰されるかと思うほど強い力でぎゅっと握られ、痛みで身体が強張る。 「はい。これを飲もうね」 再び身体が反転させられ、男が取り出したのは針のない細身の注射器だった。 透明な液体が入ったそれを口枷の隙間から口の中に押し込まれ、液体を飲まさせられた。 「大丈夫…毒じゃないから」 男の笑った顔が怖くてぼくはただ震えていることしかできない。 「んっ、んんっ」 「ほら休んじゃ駄目だよ」 どれくらい時間がたっただろうか。 男に高められては止められ、刺激が止んだかと思うと再び追い立てられる。 ブルッ 背中と下半身にぞわっとした悪寒を感じた。 「そろそろかな?ヒヒヒヒ」 男の薄気味悪い笑い声が木霊している。 人形の様に抱き上げられシートの上に運ばれた。 「飲ませたのは利尿剤だ。でも、漏らしたらお仕置きだからね?」 「…???」 ぼくは男の言っている意味が分からなくて、もじもじと膝を擦り合わせる。 男の言葉で分かったのは“漏らしたらお仕置き”の言葉だった。 つまり、ぼくの感じている人間としての生理現象は男の許可を得ない限り果たせないことを意味する。 「頑張るねぇ?喉が乾いただろう?」 「んー。んー!!」 ぼくは縛られている腕を強く握ったり、自分の腕に爪を立てたり、膝を強く閉じたりして何とか気を反らそうとする。 しかし、男はそれを楽しんでいるのかぼくの目の前にペットボトルに入った飲み物をかざす。 ぼくは首を横に振って拒否の意を示すが、男は全く意に介さない。 ペットボトルを傾けられ、胸に水が伝う。 「っ!!!」 ぞわぞわとした悪寒が背中を駆け抜け、堰を切ったように足元に冷たいものが広がった。 「思いの外我慢したね。ペットシーツの上で我慢してるのも良かったよ。でも、言い付けを守らなかったペットにはお仕置きだよね…ヒヒッ」 拘束はそのままで、小脇に抱えられたぼくは薄暗い部屋に連れてこられた。 部屋の床はタイル張りで、蛍光灯がぼんやりと照らしているのは洋式の便座だった。 「我慢のできないペットには、トイレトレーニングからだよね。ヒヒヒヒヒヒッ」 ぼくはその便座に上手く動かない身体を預けるように座らさせられ男の不気味な笑い声に涙を浮かべて震えていることしかできなかった。

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