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桜の時4

気持ちが悪い。 しかし、ぼくは無理矢理口を動かしてなんとか口の中の物を飲み込んでいく。 きっと美味しい料理のはずなのにぼくの舌は一切味を脳に伝えていない。 「若紫はちゃんと食べてるか~?」 「う…ん」 ニコニコと笑っている博英を見ると、食べるのをやめる訳にはいかなさそうだ。 博英は今度は別の組員に絡みはじめたので、ぼくは隙をついて急いで紙皿を下に置いて立ち上がる。 「ちょっとトイレに行ってくるね!」 ぼくはそう言うと、そこら辺に落ちているビニール袋と誰のか分からないサンダルを引っかけて走り出す。 気持ちが悪いのと、着なれない着物のせいで早く走れないが、口元に手を当てて込み上げてくる吐き気をなんとか抑える。 「んっ…」 少し走ると公衆トイレが見えてきた。 しかし、ぼくはそこに入ることはせずにその後ろの茂みに足を進める。 「ゲェ…お"え"え"」 ぼくはそこで我慢ができなくなって、誰も居ない事を確認すると拾ったビニール袋に胃の中の食べた物達を全部吐いてしまった。 「ふぅ…」 胃の中が空っぽになると少し楽になってきたので、公衆トイレの建物に手をついてズルズルとその場に座り込む。 頭の端では着物が汚れてしまうなとチラリと思ったが、建物に身体を預けると目を閉じた。 + 「餌だぞ」 目の前に立つ人物が犬の餌皿に乗った残飯みたいな物を差し出してくる。 パパの元から引き離され、巽の店に行くまでぼくはきちんとした“食事”というものをしたことがなかった。 ぼくに与えられるのは“食事”ではなく、死なない程度の“餌”だった。 「なんだ食わねぇのか?」 その餌皿をぼんやり見るが、この後に行われるであろうことが分かっているのでぼくはそこから視線を反らした。 「あぁ…トッピングをしないと食べないんだったな」 目の前の男はニヤニヤと笑いながらズボンを下ろし、下半身をぼくの目の前に晒す。 毎回同じ事を聞いてくる男にいい加減嫌気が差す。 ぼくが拒否したところで何も変わりはしないのに悪趣味以外の何でもない。 「ほら舐めろ!」 「んぐっ!!」 まだ反応していない男のモノを目の前に差し出され、ぼくが嫌々うっすら口を開いたところに強制的に喉の奥まで押し込まれる。 ぼくは男の足元で首輪をされ鎖で繋がれているので逃げることもできず、男のなすがままだった。 「んげっ、んごぉ」 「舌を絡めろっていつも言ってるだろ」 ぼくはどんどん反応してくる男のモノに喉奥を押され、苦しさで男のスラックスを握る。 スラックスを掴んでいる指先も震え、目の前も酸欠のせいでどんどん霞んでいくが男の腰の動きは止まらない。 「出すぞっ…くっ」 「んぐぐぐぐ」 胃に直接男の精液を流し込まれ、喉が自然と上下に動いてしまう。 「んっ…がはっ」 男のモノが口からズルリと引き抜かれる。 ぼくは気管に一気に空気が流れ込んできたせいで咳き込んでしまう。 「飲んだのか…なら自分の出してトッピングしような」 「いや!ごはん、いらないからっ!!」 腕を引き上げられ立たされる。 下半身を掴まれ刺激されてしまえば、快楽に弱く躾られているぼくの身体はその気持ちよさに抗う術はない。 ぐちゅぐちゅぐちゅと刺激され腰が自然と浮いて、自分から餌皿にむかって腰を突き出す様な格好になってしまった。 「いやっ!いやぁぁぁ!!」 そのまま気持ちよさが脳天まで達するぼくの出したものは男が持ち上げている餌皿の上の残飯に飛び散る。 「んぶぅ!?」 ぼくがハァハァと肩で息をしていることなどお構いなしに床に置いた餌皿に顔を押し付けられる。 「ほらテメェで出したもの処理しろよ」 「んぷっ!」 ぼくがゆっくり舌を伸ばして残飯を口に含んで飲み込む。 「ほら厭らしく音を立てて食べるんだよ」 男の指示通り、わざとぐちゃぐちゃと音を立てながら咀嚼して飲み込む。 それを繰り返しながら、なんとかこの地獄の時間を早く終わらせようと努力する。 「ちんたら食ってないで、さっさと相手しろよ」 「ん"ひぃぃ!ぐおっ」 ぼくがなかなか食べ終らない事に焦れた男の足が鳩尾に入る。 ぼくはその衝撃に先程まで食べていたものを餌皿に吐いてしった。 「ちっ…まぁいい。ケツ孔締めてろよ」 「ゲェェ」 ぼくのお尻を引き上げて男のいきり立ったモノがろくに慣らして居ない孔に購入され、男の無遠慮な律動で胃が押されまた胃の中の物が餌皿に落ちる。 そのまま何度も腰を動かされ、後ろに出されたものを餌皿に盛られ食べさせられたりもした。 その後色々あって流動食も長い間食べなければいけなかったので、益々ぼくは食に対して恐怖心が強くなった。 「この歯…邪魔だな?」 「えあ?」 巽の所で仕事をしている時に、本当に死ぬかと思う事があったのもその1つかもしれない。 とある会社の社長の家で、ぼくは相変わらず家畜同様の扱いを受けていた。 口を散々犯され、朦朧とする意識のなかその社長のぽつりと呟いた一言がぼくの背中を凍らせる。 「家畜には何してもいいよなぁ?」 社長が見たこともない器具を持ってニタニタとした顔をして近づいてくる。 ぼくは恐怖で震えるが、器具が歯にかかる。 ゴキンッ 「あ"あ"あ"!!いたいっ!いたいぃぃ」 鈍い音を立てて堅いものが折れる音が頭蓋骨に響く。 麻酔などをしていないため、衝撃の後に激しい激痛が襲う。 ゴキンッ ぼくの叫びを心地良さそうに楽しんだ社長はとてもご機嫌だった。 次々に歯を器具で折られその激しい痛みと血の味でぼくは気を失った。 「おぐっ…んっ…んげぇ」 息苦しさで目を覚ますと、口の中には誰のものか分からないモノが押し込まれていた。 痛みで何度も気を失いながら再び口を玩具にされ、仕事が終わる頃にはぼくの心も体もいつも以上に疲弊してしまい普通の生活に戻るまで時間がかかった。 食事が恐怖でしかないので暫くは点滴で過ごしたが、永久歯が生えるまでは流動食を強制的に浅間に食べさせられていた。 流動食を食べさせられるのも怖くてしかたがないので、力の限り抵抗をするが押さえ付けられ無理矢理器具で胃に流し込まれてしまえばぼくは本当に家畜になった気分だった。 玲ちゃんが店に来た頃には永久歯が生えて来ていたので、勧められるまま食事をしてみたがすぐに身体にがたが来た。 玲ちゃんの努力のお陰で少しはまともな食事を食べられるようにはなったが、未だに無理矢理食事を勧められたり急かさせれるとあの頃を思い出して戻してしまうのだ。 「やなこと思い出しちゃったな…」 ゆっくり目を開けると、少し離れた外灯の灯りがぼんやりと見える。 ぼくは大きく溜め息をついて空を見上げた。 空にはうっすらと雲がかかっていて、そう言えばパパが明日は雨だと言っていた事を思い出す。 「そろそろ戻らないと…」 どれくら座り込んでいたのか分からないが、そろそろ戻らないと皆が心配してしまうと思ってぼくは壁伝いに立ち上がる。 まだ少し手が震え足元もおぼつかないが、ぼくは自分の吐瀉物の入ったビニール袋を持ってよろよろと歩き出した。 公衆トイレの横を通り抜けた時に、一瞬後ろを振り替えって公衆トイレの出入り口を一瞥したが直ぐに視線を戻してぼくは歩き出す。 「よし…と」 人通りの多いところにやって来ると屋台が出ていることもあって辺りは夜とも思えない位明るく、人も沢山居た。 近くにゴミ箱を見付けたので手に持っていた袋を他のゴミを捲って見えない様に捨てる。 ゴミを捨ててぼくはまたゆっくり歩き出す。 暗闇が怖いぼくでも昼と変わりなく行動が出来るのは有り難い。 「スミマセーン。写真撮ってもいいですかぁ?」 「え?」 後ろから間延びした様な声で声をかけられれ、ぼくがその声に振り返った。 そこには女性2人組がスマートフォンを持って立っていた。 「着物キレーイ!!しかもこの子すごい可愛いんですけどぉ!!」 「本当だぁ。目もパッチリしてるし、マツゲもなが~い!!」 ぼくは一瞬何を言われたのか分からなくてキョトンとしていると、ハイテンションな二人に押されぼくは二の句が継げない。 シャッターの連続音が聞こえているので、益々固まってしまう。 「写真は有料となりますので、ご遠慮いただきます」 「パパ!」 後ろから聞き覚えのある声にぼくはそちらに向かって手を伸ばした。 パパは、そんなぼくをすっと抱き上げて2人組を見下ろした。 パパは背が高いのでぼくも女の人の顔が良く見えたが、お友達の玲ちゃんの方が可愛いな…とぼんやりと思った。 「無断で画像をネット等に掲載した場合、法的処置に出ますのでお気をつけください。では…」 「えっ?ちょっと!」 パパは何でもないように女の人のスマートフォンの上に何か紙を置いたあと、踵を返してスタスタと歩き出す。 2人組は呆気にとられていて、我にかえった頃にはぼくたちから結構離れていて微かに声が聞こえてきたがパパは気にせず歩き続ける。 抱かれている腕がいつもより熱い。 「パパ酔ってる?」 「兄さんめ…自分はワクの癖に、少し酔ってからが長いんだよ…」 パパがまたしても珍しく忌々しげにぶつぶつと文句を言っている。 「パパお酒つよいもんね」 「兄さん達は化物だよ。命は大丈夫か?」 「う、うん…ちょっとお散歩してただけだよ…お着物少し汚れちゃったの…ごめんなさい」 「そんなのいいよ。命が居ないから慌てたよ…」 パパはぼくをぎゅと抱き締めてくれたが、ぼくはこっそり嘘をついた。 いつもならぼくの下手くそな嘘をパパは見抜いてしまうのに、今日は酔ってるからか着物を汚してしまった理由やぼくがお花見の会場から居なくなった理由などを追及されることは無かった。 ぼくはいつもより熱いパパの腕に抱かれつつほっと安堵のため息をついた。 「もう帰って良いって言われたから帰ろうか…あー気持ち悪い。流石にちゃんぽんはキツいな」 パパは頭を押さえつつ、フラフラと大通りへ足を進める。 ぼくが見ただけでも一升瓶とワインの瓶とビールの缶が散乱していたからそれだけ飲まされたのかもしれない。 ぼくは心配になってパパの頭に手を伸ばすとパパは珍しくにっこりと笑ってくれた。

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