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ショッピングしよう!2

俺達はファッションビルへ来ていた。 土曜日と言うこともあって人が多く居るが、命は翔と手を繋いでご機嫌だ。 俺はお子様2人の後をゆっくり歩いていた。 「パパ~!!あったよぉ!!」 目的のショップに着くと、命が大きく手を振って俺を呼んでいる。 店員はそんな命を見てクスクスと笑っている。 「はいはい。今行くよ…」 俺達が来た店は眼鏡が置いてあるショップだった。 キャラクターのコラボフレームが出ると言う情報があったので、折角ならと見に来たのだった。 「いらっしゃいませ~」 店員がにっこりとカウンターから声をかけて来るが、俺達はコーナーが作られているところまで行ってフレームを手に取る。 天井からはキャラクター達が眼鏡をかけてポーズを取っているポップが釣り下がっていた。 「翔ちゃんはどのこがすき~?」 「そうだなぁ…」 お子様2人は本当の兄弟みたいにフレームを楽しそうにかけてみたりしている。 俺は事前に調べておいたフレームがあることを確認するとお子様2人に近付いた。 「いいのあった?」 「あ、パパさんは見なくていいんですか?」 「俺は事前にネットで予約もしたし、見てたからこれでPCメガネにするつもり…」 声をかけると、翔も嬉しそうに俺に問いかけて来るので俺は1つメタルフレームを取り上げてかけて見せる。 「パパかっこい~!!」 命は嬉しそうに俺の足に抱きついた。 遠くから見守っている店員同士が微笑ましげにこちらを見ているのを感じる。 「命も翔も決まった?折角だったら視力測ってもらおうか」 「え?命くんとパパさんの眼鏡を買いに来たんじゃないんですか??」 「ん?今日はデートって言っただろ?ついでに翔のも買えばいいよ」 翔が驚いた様にフリーズしたので俺は何でも無いように言ったが、そんなに不思議だろうか。 俺の眼鏡にはコラボ商品と言うだけあって、キャラクターのマークが印字されている。 「ぼくこれがいい!ユーミル」 命は子供用のセルフレームを取り上げてかけてみせる。 紫色のフレームで、耳かけ部分の後ろには金のレリーフが封入されている。 「目も最近見辛そうにしてるから測ってもらおうな」 自分の選んだフレームと命を店員に預け、俺は翔の横に並ぶ。 翔は悩んでいるのか色々なフレームをかけては鏡を覗いている。 「翔は黒渕が好き?」 「いえ…そんな事は」 「ならこれは?俺のと色違いだけどメタルだし印象変わるぞ?」 「あ、本当だ…」 俺が選んだメタルフレームをかけた翔は鏡を見て関心している。 「ならこれで決定だな。視力測ってもらおう」 「でも…」 「はいはい。大丈夫だから…」 俺は別の店員に翔を預けた所で会計をするためにレジに向かう。 レンズの種類やカラーを入れるかなどの質問に適当に答え会計を済ませた。 スマホをいじって居るうちにお子様2人は検査を終えてきた。 仕上がりまでは2時間ほどかかると言うので後程取りに来ると伝えて店を後にした。 「命の目は悪いのか?」 「少し近眼が入ってきてるらしいです」 「とおくが少しぼやぼやするの~」 そんな会話をしながら歩いていると、次の目的地に着いた。 その店はピンクの内装に、店員も少女趣味のふんわりと膨らんだスカートのワンピースを着ている。 「パパさん…ここって…」 「あぁ。玲ちゃんへお礼に洋服買おうかと思ってね」 「ここの服かわいいよぉ。縫製もしっかりしてるし~」 店の雰囲気にたじろぐ翔を無視して命はさっさと店に入っていってしまった。 店員は命に普通に接客しているのは何度か通った成果なんだろうなとテナントの外で楽しく店員と話している命を眺めて思う。 + 「はぁ…女の子って大変なんですね…」 ピンク色の空間を抜けて、近くのドーナツショップの店内で翔は項垂れる。 命は玲ちゃんの服を選んだ事でご満悦でフレッシュジュースを飲んでいた。 洋服を贈る相手は男の子なんだけどなと思いつつ、あえて苑子とは話さないことにする。 「お洒落は努力だって聞いたことあるよ」 「益々尊敬しますね…」 命が洋服を選んでいると、当然ながら一緒に居る俺達にも店員は声をかけてくる。 服に頓着しないと言っていた翔はそれが慣れないし、女の子の服を扱っている店にも入ることはないので精神的に疲れたみたいだった。 ドーナツショップも玲ちゃんへの貢ぎ物を買うために入ったのだが、命が買った物の入ったピンク色のショップ袋を見て翔はふぅと息をついた。 命はワンピースの他に自分用のハイソックスや小物類も購入していてその値段に翔は驚いた様だった。 「翔は好きな服とか、ブランドとかある?」 「俺は特に気にしてないですねぇ。これも適当に買っただけですし…」 自分が着てる洋服を摘まんで見せる翔に、横にいた命はキラキラとした視線を翔に送っている。 「あ~。翔…」 「はい?」 「俺の横におしゃれモンスターが出たんだけど…」 翔は俺越しに命を見ると、命はテーブルにドリンクを置いて小さく両手を上げてガオーと言っている。 それを見た翔は自然と破顔したが、このあと命に連れ回される事になる。 「あの…スミマセン俺まで洋服買って頂いてしまって…」 「眼鏡も服もバイト代とは別だから気にしないでいいよ」 ほくほくしている命を抱いて翔は凄く申し訳なさそうにしている。 現在翔は命が選んだ服を着ていた。 元々着ていた服はショップの袋に入っていて、それを手に持っている。 「今日はそれを着て、バイト行ってくれたら嬉しいな」 「え!こんな高い服着ていけませんよ!!」 「このビルに入ってる服は比較的リーズナブルだと思うけど?」 そんな会話に翔は呆然として歩みが止まってしまった。 顔を見れば本当にショックだという表情だ。 「ん?どうした?」 「リーズナブル…」 「俺も命もセレクトショップで服は買うから、ここくらいのレベルのビルのショップは安いぞ??」 「はぁ…そうなんですか…」 何がショックだったのか翔は命をぎゅうっと抱き締めて大きなため息をついている。 そう言えば朝の卵も、しきりにこれでよかったんですかと確認してきた事を思い出す。 基本的に食の細い命には栄養価の高い物を食べさせないと、直ぐに体調を崩してしまうので少し割高でも良いものを食べさせているのだがそれが不思議なのだろうか。 「それに、その服で“狼”を牽制しておかなきゃな…」 「え?何か言いましたか??」 「いや。何でもない。バイトの用意は持ってきてるんだっけ??」 「いえ。家にあります」 「なら取りに行くついでに、俺達も顔を出すよ」 俺はボソリと呟いたがそれを誤魔化す様に話を反らした。 ショッピングを終えて、念のために玲ちゃんに今からお邪魔することを電話で連絡すると少し息が上がっていたので、もしかしたらお邪魔したのかもしれない。 しかし、翔は今日もうちに泊まるし許して欲しいと心の中で手を合わせた。 カチャン 翔は馴れた手つきでドアの鍵を開けると、さっさと中に入って行こうとするので少し引き留める為に翔の手を掴んだ。 翔は驚いた顔をしたが、ここで“親”の濡れ場は目撃したくないだろう。 「あれ~?こんにちは~!!れいちゃーん?」 「あ、こら命!」 翔に抱えられていた命は玲ちゃんが出てこない事を不審に思ったのか奥に向かって大きな声を出した。 俺は何となく事情を察していたので命の口を急いで塞いだのだが、シーンと静まり返った空気の後に奥からはガタガタと物音がしてその後パタパタという軽い足音がこちらに向かってくる。 「は、は~い。いらっしゃ~い」 「あ!れいちゃん」 急いで出てきた玲ちゃんは、いつもは金色の髪が綺麗にセットされているのに今はぐしゃぐしゃになっている。 お気に入りだと言っていた赤いハートの髪飾りも着けていない。 服もかなり着崩れた玲ちゃんが奥からエプロンの紐を肩に掛けつつやって来る。 「れいちゃんだ~!!」 「みことちゃんいらっしゃい!あ、翔ちゃんもおかえりなさい」 命に気が付いた玲ちゃんは手櫛で髪を整えつつふんわりと微笑んだ。 命は翔の肩越しに玲ちゃんに手を振っている。 「パパさんもお電話ありがとう!」 「こちらこそお邪魔したみたいでごめんね」 未だ玄関に居る俺達に気が付いた玲ちゃんはイタズラっぽくウィンクするので、俺はため息を堪えつつ何でもない事の様に答える。 やっとの事でリビングに向かうと圭介がソファーに不満げな顔をして座っていて、笑いが込み上げて来た。 しかし横を見ると翔がゴミでも見るような目で圭介を見ていたので益々笑いが込み上げて来るのを我慢するのに必死だった。 「玲ちゃんお弁当ありがとう。とっても美味しかった。これ良かったら圭介と食べて?」 「きゃー!!クリ○ピー・ク○ームのドーナツ!!」 俺はお弁当の入っていたトートバックを返しつつ先程買ったドーナツの箱を玲ちゃんに渡すと、玲ちゃんは跳び跳ねながらとびっきりの笑顔を見せてくれた。 俺はその箱を持ったままキッチンに消えていく玲ちゃんを見送る。 「けいちゃんどうしたの?」 「何でもないよ命ちゃん…」 翔は早々に自分の部屋へバイトに使う服を取りに行ってしまったので、取り残された命はソファーに居る圭介によじ登ってちゃっかり膝の上に座っている。

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