69 / 120
サプライズバースデー8
翔のぱっくりと開いた孔を見て、俺はふと我にかえった。
散々指で弄んだ翔の孔は縁が盛り上がり、パクパクと息をするように蠢いていた。
時折見える内臓の赤色が鮮やかで綺麗だ。
「ちょっとやりすぎたな」
「うぅ…パパァ」
「終わったよ。ははは…命、足がくがくだな」
命は生まれたての小鹿の様に足を震わているので、翔の腹の上から降ろしてやる。
翔のモノを引き抜くと、コンドームの先端にある液溜まりにはたっぷりと精液が放出されており命の中からズルリと排出されてくる。
命の孔もすっかり開いてしまって相変わらず厭らしいなぁと関心してしまう。
シーツの上に横たわらせてやると、小刻みに震えながら身体を小さく縮こまらせる。
「あ、そうだ!」
「パパなに…ふぁ~」
俺がスマホを取り出すと、命が不思議そうな顔をするが慣れない外出で疲れたのか話の途中に大きなあくびをした。
俺は翔に顔を寄せると、べろりと唇を舐めて口をこじ開ける。
舌が絡んでいるのがよく見えるようにしつつ、スマホの画面を確認しながらシャッターを押す。
自撮りなどしないので、連写モードを使う。
カシャッ、カシャッ
一応様々な角度から撮るために、カメラの位置をずらしつつ写真を撮っていく。
部屋には連写するシャッターの高速音がしている。
「おしゃしん?」
「狼さんに見せるためのね」
「ふーん」
命は翔の横に寝転んで、うとうとしはじめている。
瞼ももう少しで完全に閉じてしまいそうだし、指まで口元に来てしまっていた。
翔も完全に寝てしまったので、俺は足を持ち上げて下半身がよく見えるポーズをとらせる。
ペニスからコンドームを外して、翔の腹に中身をぶちまける。
ぱっくり開いてしまった孔も、未だ反応しているペニスも、紅潮した顔も全て命が映らない様に注意しつつフレームに納めていく。
自分の出した物で腹辺りが汚れている翔の写真は完全に“事後”そのものだった。
「こんなもんか…動画は定点カメラあるからよしとして…」
ひとしきり、翔を写真に納めた所でサイドボードから小さなリモコンを取り出す。
いつでも動画が取れるように設置している定点カメラの電源を切る。
ネタは何処に転がっているか分からないので、家の中でも備えあれば憂いなしだ。
命と翔の身体を綺麗にしてやり、洋服を着せてやったところで布団を二人にかけて俺は部屋を後にする。
今日も撮れ高は良かった事に俺の足取りはとても軽い。
~♪
寝室を出たところでメールの着信を知らせる音楽が鳴る。
「思いの外早かったな…」
スマホで宛名を見て、俺は口許をニヤリと歪めた。
+
「いつもスミマセン」
「気にしなくていいよ」
俺は居酒屋でのバイトだった翔をいつものロータリーで迎える。
「さぁ…“狼”さんのお出ましだ」
後方に置き去りにされた“狼”をまじまじと見て、営業スマイルを顔に乗せて声をかけた。
「こんばんわ。翔のお友だちですか?」
俺に話しかけられるとは思って居なかったのか、俺の声に一瞬訝しげな顔をしたが直ぐに笑顔になる。
「あ、先輩。こちら俺の新しいバイト先のオーナーで美世さん」
「どうも」
「美世さん。こちらが、俺のバイト先の先輩で学先輩です」
「ども…」
翔が空気を読まずに、律儀にお互いの紹介をしてくれる。
俺は営業スマイルを崩さぬまま手を差し出した。
それを相手は渋々といった様子で取る。
「翔とは家族ぐるみで仲良くしてて、彼の“ママ”からも君の話はよ~く聞いてるよ」
「はぁ?俺の事を何て聞いてるか知りませんけど、俺は翔ちゃんとただ仲良くしてるだけですよ?」
「パパさん…先輩…」
俺の嫌味に気付いたのか、相手が笑みの中に少しの苛立ちを滲ませたのを俺は見逃さなかった。
こちらのペースに乗せればもうこっちの物だ。
しかし、翔は相手の様子を珍しく敏感に感じ取った様でオロオロとしはじめたのでここで一旦引くことにした。
悪い第一印象を植え付けることで、向こうから動いてくるだろうから引き際も見極めなければならない。
「おっと…子供が待ってるんだ。ここで失礼するよ」
「あ、先輩…お疲れっした!」
俺がわざと相手を煽るように翔の腰に手を回しぐいっと引き寄せた。
すると“狼”の目には怒りの炎が燃え上がる。
俺はそれをあえて無視して車の方へ歩き出す。
「翔…少し待っててもらっていい?」
「はぁ…あ、はい?」
先程の様子に俺がそんなことを言い出すとは思って居なかったのか、ポカンとした顔になる。
俺はそんな翔の頭を軽く叩いて、翔が車に乗り込んだのを見届けると踵を返した。
「なんスカ?」
俺が戻っていくと、横に翔が居ないからなのか不機嫌な態度丸出しで腕を組んでいる。
「いや…君にはお礼をしようと思って」
「お礼?」
俺の言葉に訝しげに俺の顔を見る。
一歩踏み込んで身体を屈め、相手の耳元に顔を寄せた。
「翔の身体をあそこまで敏感に育ててくれてありがとう」
「は!?」
「しばらく翔には関わらないでくれない?翔、今俺にメロメロなんだ」
「そんなでたらめ信じるかよ!翔はそんな事何も…」
俺の言葉に相手が激しく動揺しているのにおれは思わず、クスクスと声を出して笑う。
昨日、幹部に頼んでいた資料が早速上がってきたのだ。
現在目の前に居る男は、端麗な容姿と金を使って色々と悪さをしているらしい。
裕福な家庭の出身らしく金には別に困って居ないのに、バイトを転々としてターゲットを探していると資料にはあった。
翔の様なノンケの弱味や弱点などを上手く握り、じわじわと自分好みにしてターゲットが心も身体も陥落して自分に夢中になったところで捨てる。
それから何事も無かった様に新しい獲物を探すというクズだ。
「これが証拠だよ」
「はっ!?」
俺はポケットからスマホを取り出して画像を表示させる。
そこには俺と翔がディープキスをしている画像が写し出されていた。
直ぐに画面を切り替えて事後に見える写真も見せてやる。
「嘘だ!」
「おっと…」
俺からスマホを取り上げようと飛びかかってくるが、俺の方が背が高いしリーチも長いのですぐに後ろに下がってそれを避ける。
「まぁ信じなくてもいいさ。ただ、忠告だけしておくよ?これ以上翔に近付いて悪さをするようなら、俺もそれなりの対応をするからね?」
「そんな事俺が聞くと思ってるの?」
「別に聞くとは思ってないけど、さっきも言った通り翔は俺にメロメロだから俺の言うことなら何でも聞くよ?」
俺は相手にそう吐き捨てると自分の名刺を押し付け、車に戻っていく。
学先輩とやらは垂れ気味の目尻をぎゅっと吊り上げ明らかに初対面のはずの俺に対して激しい怒りを覚えている様だ。
俺はこいつがどんな事を仕掛けてくるのか楽しみで、ついついニヤニヤと笑ってしまう。
それが益々勘に障ったようで、今にも殴りかかってきそうな勢いだ。
「あ、嫌がらせしてくるんなら刺激的なのにしてね?ちょっとやそっとじゃ驚かないよ?」
「なっ!!」
俺が思い出したように振り返ると、その言葉にぶるぶると拳を震わせている。
俺はわざと笑顔でてを降ってやってから車に戻った。
「ごめん遅くなって…」
「いえ!それより、このPV何ですか!手書きのMADですか??」
俺が車に戻るとカーステレオからはアニメソングが大音量で流れていて、ナビのモニターにはキャラクター達が動いている。
音楽と映像のお陰で外での俺達のやり取りも聞こえていなかった様だ。
早速“狼”の事など忘れて、未だに流れているアニメに興味津々な翔は外でイライラこちらを睨んでいる存在に気が付いても居ない。
「先輩いい人そうだね」
「いつも飲みに連れていってくれたりして、スゲーお世話になってるんですよ!」
音楽のボリュームを少し落として俺は車のエンジンを起動させる。
そして心にも無いことを言ってみると、無邪気に返して来るものだから質が悪い。
自分が狙われているとは露とも思っていないのだろう。
「そっか…先輩と飲むときは俺にも教えて欲しいな。うちに飲みきれないのが沢山あるから差し入れするよ?」
「ほんとですか!」
俺の家の中に転がっている博英兄さんに餞別として押し付けられる酒を見ている翔は何の疑問もなく俺の申し入れを受け入れた。
さぁ、これから“狼”は俺にどんな嫌がらせをして俺の事を楽しませてくれるのだろう。
腸が煮え繰り返るほどの挑発してやったのだから、少しは刺激のあるものを期待したいものだ。
ともだちにシェアしよう!